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Chapter19. Tower of BABEL

タイトル【バベルの塔】


——イスラエル

某所



ハイゼンベルグを追う者はもう一つある、それはイスラエルの諜報機関 モサドだ。

Soyuzを介さず直接異世界へとアクセスする野望を胸に、世界中に探りを入れていた。



重大な役割を担うのはあのカートマン。



天才を探す担当者というのは表の姿であり、真の姿はというと異世界利権について嗅ぎまわるというもの。


一応、中国共産党のエージェントから横浜にあるSoyuz本部拠点が怪しいという情報を仕入れていたが、もう少し入念な調査が必要だ。


そう思ったカートマンはモサドのデータベースから今一度、Soyuzとは一体なんなのかを精査し始めることに。



彼は秘匿パソコンを開き、資料を読み込んでいく。


東京虎ノ門にビルを構え、本部は横浜かどうか怪しい住宅地にある。


軍事はもちろんのこと、土木産業や製造業にサービス業までありとあらゆる業種を行う世界規模の独立軍事組織。



そんなパンフレットにでも載って居そうな御託はいいとして、歴史に踏み込んだ。



何故ここまで強大な力を持っているのか。



「……活動は1990年代に活性化……?」



90年代となるとソ連が崩壊し、激動の時代へと転がり落ちようとしていた時期。

人材リソース・武器リソースが大量に流入してきた。



奴らが持つ核兵器も例外ではない。



非正規組織への核流出が起きてしまい、それがSoyuzという大樹へと育て上げた。



それにロシア兵器の製造ラインの一部保有することによって、膨大な戦力を手に入れたのか。



冷戦が終わってもなお、自立するために核兵器を持つということは非常に大切である。

例として見れば北朝鮮が非常にわかりやすいだろう。



だが過ぎた力を持てば出る杭として、この当時世界の警察を名乗っていたアメリカから名指しで批判される傾向があった。


イラクが悪の枢軸などと強く罵倒されたものである。



カートマンはそれが気になっていた。



好き放題暴れるハマスや、アラブのならず者を爆撃したらイスラエルは国際的に非難されるのに、世界は地球を牛耳るSoyuzのことを叩かない。



この違いは何なのか。



別項目に移ると、残酷すぎる答えがあった。



「全世界にSoyuz World Wide名義で工場を建設———アメリカで見たことがあるぞ。

それにリビア情報機関からCIA、FSB……一体どれだけの仕事を受けてるんだ…!」



世界の敵にならない方法はもう一つある。

利潤を生みだす存在へとシフトすることだ。



90年代後半から2000年代初頭には日本のバブル崩壊、アメリカのリーマンショック。

このような様々な不況が起きており、Soyuzはそこに付け込んだ。



たたき売りされていたリソースを買い取り、組織は肥大化していく。

今では組織の工場がなくては経済が回らない、そんな状況になっている所も珍しくない。



世界は利潤が失われるのを嫌う。



だから下手に手出しできないのか。

さらに1960から70年代のスパイ全盛期と比べて、力が無くなった諜報機関が彼らに依頼するようになったのも大きい。



彼は此処でモサドの文字が見えないことに言い知れない恐怖を抱いた。


追う立場なのにも関わらず、既に組織に浸食されているかもしれない。



疑心暗鬼に陥るにはあまりにも十分。



仕事で知りえた衝撃的な真実を暴露したらどうなるか。

世界中からSoyuzという存在を引いたらどうなるのだろうか。



間違いなく大恐慌が起きる。



その余波は地球を覆い、何が起きるか全く予測が出来ない。


奴らは「それを()()()()()()引き起こせる」のだ。






——————————







これらの大混乱を起こさないためには秘密主義になってもおかしくはない。

偉大さもしみじみ分かった所で、カートマンは次に進むことに。



鉄のカーテンが下ろされたSoyuzの中心部を垣間見る段階。

正規な手段では決してない、ハッキングだ。


こんな世界征服を成し遂げたに等しい組織の核に突き進まなければ、先が見えない。

データ化が最も進んでいる集団の弱点とはデジタルそのものにある。



ペンタゴンやホワイトハウスに生身、つまりアナログで侵入するのは厳しい厳戒態勢では不可能。

だがデジタルならばどうだろうか。



毎日どこかの大企業なり国が機密情報を漏洩している。

新技術と全く持って違う概念の登場に、トップはついて行けないのだ。



それに対策をしようとしても面白半分で侵入したりするクラッカーや、諜報機関は掻い潜るサーキットを見出してくる。



だがモサドは少し捻った「()()()()()」を使っている。



諜報機関らしい人間を使ったアナログな仕込みと、そこを機転にする不正侵入方法をとることで鉄のカーテンに守られたSoyuzの中枢に入る事が出来るのだ。



全ては秘匿され、いつ・どこで・誰がアクセスしたか分からないのは当たり前。

調べれば、しかる場所にたどり着ければ情報は見放題だ。


インターネットとデジタルが満ちたからこそ、旧来の時代は終わりを迎え21世紀が始まったと言える。


現実世界の持つ「魔法」だ。




—————————





しかるべき場所。

普通の権限では決して閲覧することできないSoyuzの管理ページにたどり着いたカートマン。



普通管理ページというと、少し散らかったような印象を抱くがSoyuzのページは誰にでも分かりやすく記載されている。



きちんとデザインされているのだ。

無駄にカネがかかっていることだけは明白だろう。



「……妙に探しやすいな……」



言い知れない違和感を抱くが、こちらとて秘匿されている以上アシはつかない。

ここで目的を思い出そう。



異世界への入り口。

共産党は格納庫あたりが怪しいと目をつけていた。情報元は言えないが、確実なのだという。



運よく、格納庫の管理データにアクセスできる。



突如真っ暗になり、きらびやかな公式ページから一気に無機質なコマンド画面が表示された。



よく見ると、どこかのファイルに接続するようであり肯定する意味のenterをタイプする。

オンライン上に保管されているらしく、読み込むために時間がかかるらしい。



するとあるメッセージが帰って来た。




【access denied▽】

「アクセスが拒否されました」



「アクセス拒否?パスワードも何もないのに?場所が間違って———」



次の瞬間、別の文字が表示される。



【You are connecting from Israel ▽】

「あなたはイスラエルからアクセスしている」



【SOYUZ IS WATCHING YOU▽】

「組織はお前を見ている」



【You can't cheat us▽】

「お前は我々を欺くことはできない」



奴らはいつでも見ているぞ、お前は我々を出し抜くことは出来ない、と記されている。

しかも秘匿したハズ国籍も筒抜け状態という有様。


世界を牛耳る組織が本気でこんな緩いセキュリティにしているとでも思ったのか。



節穴のようなセキュリティではなく、むしろ()()()()()()()()()()のだと。



法人向けページならぬ諜報機関向けページに過ぎないのだ。


あえてコマンドを入力させる仕様にしたのはおごり高ぶったハッカーへの天罰。



カートマンは罠に見事嵌った。

イスラエルから接続されているということもあって、次のようなメッセージが表示されていく。



【God said to Noah▽】

神はノアに言われた


【"The end of all flesh has come before me, for the earth is filled with violence through them. Behold▽】

「わたしは、すべての人を絶やそうと決心した。彼らは地を暴虐で満たしたのだから」



【I will destroy them with the earth......▽】

「わたしは彼らを地とともに滅ぼそう」



旧約聖書にある創世記6章からの引用である。

ノアの箱舟を造り、洗い流そうとした決意。




後のキリスト教。

そしてエルサレムに首都を据えるイスラエルにとって、これほどまでの嫌味はないだろう。




【Located. ———Mobile Task Force will be sent in 5 minutes ▽】


「位置を特定しました。———5分以内に機動部隊が送り込まれます」



不穏なメッセージが一瞬だけ表示された直後。

操作していないにも関わらずページが閉じ、大音量で安っぽい音楽が流れ始めた。



【死を!】



【イスラエルに死を!】



これがSoyuz。

地球の表裏あらゆる場所に根を張り、そして影から支配する者。



そして、異世界を守る者。

次回Chapter20は9月28日10時からの公開となります。


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