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Chapter12. Intrigue

タイトル【陰謀】


一方、SOYUZ本部がある横浜では。


——横浜本部拠点



不時着から数日が経過してからやっと中国国際航空の担当者がやって来た。

ここで問われるのは、整備済みの機体に再び緊急メンテナンスをするよう指示を出したのか。



「おかけください」



「どうも」



Soyuzスタッフがぐるりと囲む中、日本側の尋問が始まった。

日本の調査官が迫る。



「オーバーホールを出してからたった120回でメンテナンスを出されたそうですね。その理由をお聞かせ願いたい」



「……え?」



帰って来たのは担当者の素っ頓狂な声だけ。

あの機長や副機長同様、そんなものがあったのかとでも言いたげだ。



念には念を。

調査官は大前提となる機体が緊急着陸した事を知っているかを聞く。



「……失礼。456便がここSoyuz本部拠点にエンジン故障によって着陸したことはご存じですよね」



「ええ、それは知っていますが」



どうやらエンジンが使い物にならなくなって着陸した、ということは流石に知っているらしい。

だが不可解なことがある。


機長は『()()()()()()()()()()()()()()()メンテナンスが実施された』と言っていた。



それにもかかわらず、命じた側は何も知らないというのは矛盾する。

訝しむ顔を浮かべる調査官に対し、エアチャイナの担当者は落ち着きを取り戻して真実を話し始めた。



「当日の456便に使用されていた777-300ERに関しては離着陸回数がまだ120回ですので、オーバーホールしたばかりと言えばそうなりますが」



「いくら心配性でも、何の異常や勧告もない状況で緊急メンテナンスなんて行いませんよ。

そのメンテナンスに関しては存じ上げていません」



もっともらしい答えである。

洗濯ものをまた洗うのは手間であり、それは会社とて同じこと。



逆に言えば、担当者は羽田空港で行われたというメンテナンスのことを知らない事が裏付けられてしまった。



「我々としては事故の原因が羽田で着けられたタービンブレードだと睨んでいまして、何か知っていればよかったのですが」



「そんな馬鹿な」



航空機事故を起こすと会社の評判が一気に傾く。

そんなこともあり、わざわざ事故要員となるようなものをするはずがない。



機長共々、向こう側の人間は何も知らず収穫は得られないように思えたのだが……






———————————




——尋問室



機内にサブマシンガンやらを持ち込ませた疑惑の人物である係員 山岡と山本を尋問することになったが、やはりと言うべきか簡単に口を割らなかった。



警察のように丁寧に聴取をしたが、知らぬ存ぜぬで通される。



「……やり方を変えてみよう」



中佐の眼差しが一変した。



Soyuzは神奈川県警のように司法裁判に必要な証拠が欲しいわけではない。

欲しいのは「()()()()()()()()()()」ということ。



遊びはここまで。



唐津が容疑者の側に武装したスタッフを立たせると、自らは部屋の端に向かう。

何をするつもりなのか全く分からず狼狽える二人の容疑者を尻目に、命令を下した。



「撃て」



BLATATATATA!!!!



スタッフの持つM4が一斉に火を噴く。

無数の薬莢が地面に転がり、辺り一面は硝煙の真っ白い煙幕に覆われる。



すると誰か既に殺めたような眼差しを向け、中佐が容疑者の下へとやって来た。



「これがお前たちの持ち込ませた武器の性能だ。

お前たちは空港職員でありながら、多くの人間を血祭りにあげる武器を持ち込ませたに飽き足らず

Soyuz職員の命を危うくさせた……」



すかさず次のマガジンを装填する兵士を待ってから、一気に声を上げる。



「———誰にそそのかされた!答えろ!」



冴島大佐と同等の怒号が響き渡った。

すかさずスタッフは容疑者たちに濛々と煙を上げるライフルを突きつける。



ここに居る全ての人間は誰も何も言わない。

しかし次はお前たちがこの武器の餌食になる、そんな圧力が追い詰めるのだ。



警察の事情聴取とは比べモノにならない尋問。



ゆっくりと唐津は手を上げ、無慈悲に告げる。



「撃て」






———————————









威圧的尋問によって、ついに容疑者が自白した。


ある男に賄賂を受け取った、と。


これにより王や李をはじめとする旅客機クルー、それに何も知らない中国国際航空の担当者の無実が証明されたことになる。



彼らと入れ替わる形で、二人の容疑者は警察に引き渡されることが決定した。

既に絞れるだけ絞った出し殻だ、あとは司法が判決を下してくれるだろう。



そんな感傷に浸っている合間もなく、唐津は情報総局という立場を使ってあることについて調べようとしていた。



山本と山岡が口にした「リチャード・ウォン」という名前。



「……リチャード・ウォンか。コイツの名前には聞き覚えがある」



中佐の脳内にあるデータベースが該当結果ありとはじき出した。

きっと何かSoyuz絡みで何かある、長年総局にいた経験がそう言っている。



——情報総局



幸いにも横浜本部基地はSoyuzの中核であり、情報には困らない。

他部門に怪しい男の名前で検索するよう指示を下すと、真っ先に返答が返って来た。



「お待たせしました、唐津中佐。例のリチャード・ウォンという男ですが、要注意人物データベースにヒットしました」



「やはり。……続けてくれ」



疑念は確信へと変わった。

この事故に見せかけた航空テロ、それらを手引きするのは中国共産党だと。



「リチャード・ウォン。カテゴリ―は【情報探査(シーカー)】【買収(アクイジション)】【組織転覆】

香港在住の実業家となっていますが、ここ最近日本へ渡航しているようです。時期的に……異世界の公開直後と重なります」




外からはまるで見えない組織の内情を探っていた容疑、さらにスタッフを買収しようとした容疑にSoyuzそのものを潰そうと企む手先であることから既にマークされていた。



如何せん世界に根を張る集団ということもあって、このような敵も多い。



つい最近買収されかけたという事案を捜査したこともあり、そこでもヤツの名前が挙がっていた。



中国系イギリス人の名前を騙り、共産党の意のままに動く人形。

それがリチャード・ウォンという男の正体である。



点と線がすべてつながった。



緊急メンテナンスという文言で、偽のメンテナンスを実行し事故要員になるファンブレードを取り付けさせる。



リチャード・ウォンがあらかじめ空港職員を買収。



工作員30人の検査をパス、または偽造して羽田発北京行き456便に搭乗させた。

高度上昇中に羽が折れて2基のエンジンが爆発炎上。



そこでSoyuz本部拠点にしか着陸できないように仕向ける。



火災ということで機体各方面から脱出させ、一時的に失踪させて異世界ポータルのある大型格納庫へ突入するために戦闘が勃発するに至った。



旅客機の緊急着陸で混乱することを狙っていたが、奴らは見誤っていたのだろう。

それ故に作戦は失敗、逆に尻尾を掴まれかけている。



今後メディアには緊急着陸と戦闘は全く関連がなく、偶然演習を行っていただけとカバーストリーが渡ることだろう。



事故調査委員会もこれらドンパチは興味を持たない。




Soyuzの取る対策としては、外から来た航空機は所属を問わず乗務員や客を目の行き届くところに拘留するのが望ましいか。



それと大事なものを忘れてはならない。



このような事態を引き起こした中国にはいずれ相応の報いを受けるということを。


Soyuzは動き始めていた……

次回Chapter13は8月21日10時からの公開となります


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