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第八話 男性もロリータを着れますね?

期待が詰まったデザイン画。

素直に喜んでくれたスティーブンさん。

ロリータ作りにより一層緊張感をもたせる。



「男性用のロリータを作るので、控えめなフリルがほしいんです。」



そう、村人たちに伝えると。おお!!と声が上がった。

「やっと作られるんですね!」

「期待が高まりますね!」

「俺達も楽しみだなぁ!」



ワイワイと喜ぶ姿をみて、しっかり、向き合わなければと気を引き締める。

この期待には、答えたい。



それからは毎日が試行錯誤だった。

初めて作るものだから、何度も失敗を繰り返した。

上手くズボンの形にならない……。

嗚呼、勉強しておくんだった!

でもここでは私が頑張らなければならない。

負けない!!!



そうやって何度も何度も挑戦していった。

リーリはそれを手伝ったり、身の回りのことまでしてくれた。

気づいたら新しい紅茶が入っていた。

ふと顔をあげると、優しい笑顔のリーリがいて



「仕上がっていくのが嬉しんです。お手伝い、させてください。」



と、言ってくれた。

今は、この優しさに少し甘えさせてもらおう。



「ありがとう!結果で必ずかえすよ。」

「うふふ、期待してます。」



どんどんと制作は続いていき、形になっていく。

こだわりぬいたデザイン。必ずいいものにしたくて時間をかけた。

その後も相変わらず村人やリーリの手助けもあり、私はついにその日を迎える事が出来た。



「でき……た!」

「ナナミさん!やりましたね!」



出来た服は渾身の出来だ。

初めて作った、男性向けロリータ。

太陽の光も入って、キラキラ輝いている。



唯一無二の向日葵の男性ロリータ。

スティーブンさんに早速伝えてもらい、ロリータを渡す手配をした。

これだけ時間がかかったのは申し訳なかったが、自信があった。



……でも、久しぶりに緊張してる。初めての男性に渡すロリータ。

どんな風に感じてくれるかな?

またあの笑顔がみれるだろうか?

そんな事を想像してはみたが、どうなるかな?

私とリーリは自室のアトリエで待っていた。



「うわああああああ」

「え!?」



スティーブンさんは服を見た瞬間叫んだので驚いてしまった。

なんだ!?私何かミスをしているか???



「ほんとに絵が…… 飛び出してきたみたいだ!」



え?

これは…… 喜んでくれてるのか?

スティーブンさんはまじまじとロリータを見ている。



「やはりナナミさんは凄いですね!天才だ!」

「あ、ありがとうね。」

「これは凄い事ですよ!!だって、みてください!

このフリルなんか美しいです!これはどうなってるんだ!?綺麗だ。

この下はどうなってるんだ!?すごい!布が二枚に分けられている!」



興奮しながらロリータを見て話す姿は、

初めておもちゃを貰った赤子のような新鮮さだった。

とても喜んでくれてるとわかる。それが嬉しい。

頑張って良かった、期待を裏切らなくて良かった。



「ナナミさん。着てみていいですか?」

「もちろんです!」

「あの…… これどうやって着るんですか?」



……は!

この世界にはズボンがないのか!?だから履き方がわからないんだ。



「これは、足を一本ずつこの……筒みたいなのに入れて……。

で、このゴムの部分を腰まであげるんです。シュッと。……はい。」

「なるほど?」

「……いけますか?」

「がん、ばります!」



男の人の着替えを手伝うのは、相手にも辱めが!!

なんとか今の説明で頑張ってくれないかな。……不安だ。

とか思ってたのに、スティーブンさんは徐ろに今着ている布を脱ぎだした。



「わーーーーーーーーーーー!!!!」

「はい!ナナミさん!」

「スティーブンさん!あっちで、着替えてもらっても?いいですか?」

「え」

「え」

「あ、はい。」



不思議そうにスティーブンさんは別室に行ってくれた。

おいおいおい、恥ずかしくないのか!!!!!ちょっと!!!

心臓バクバクしたなと思いつつ、自分を落ち着かせる。



「ナナミさん、どうしたんですか?」

「だ、大丈夫。」



あ、そうなんだ。

……この世界は、男女関係なく着替えたりするらしい。

この世界のことをまた新たに知った。



着替えてきたスティーブンさんは満面の笑顔だった。

思い描いた通りのひまわりみたいなやさしさ。

モノクロのデザインではあるが、

ひまわりをあしらったエシャルプがいい差し色になっている。

燕尾のついたベストがスラッとした身体によく似合う。

これが私の最初の男性ロリータなんだ。



「夢みたいだ!こんな素敵な布、着れるだなんて!」

「スティーブンさん、とても似合ってます!」



リーリも大興奮の様子。二人は服について話し始めた。

ここのフリルが素敵だ、とか、いい色だとか。



幸せな空間。



その姿を見て私はふと、ロリータ服の店を思い出していた。

お客様が素敵な服に目を輝かせて、ここがいいな、この色が素敵だなとか言いながら

何を自分に身につけようかと悩む姿と重なったからだ。



そうか、ブランドを作るってこういう人がロリータで素敵な姿になるのを

共有出来る瞬間も見れることなんだ。

そんな事を感じていた。



「ありがとう、ナナミさん。」

「いえ、遅くなってしまってごめんなさい。」

「実は、この服に合う靴を作ってきてて……見てもらえますか?」

「はい、是非!」



スティーブンさんは恥ずかしそうに、でも自信満々に靴を出してきた。



「わあ!」



黒のショートブーツにひまわりの刺繍がついたデザインのものだ。

この服にぴったりなデザインだ!



「デザイン画をみて、居ても立ってもいられなくって、作っちゃいました。

どう、でしょうか?」

「とても素敵です!考えてくださってたんですね!嬉しいです。」



スティーブンさんは自分の靴をはいて見せてくれた。とっても似合っている。

私の一着がこの靴を作ったんだと思うと、たまらなく嬉しくなる。

その姿はとても美しかった。



その後、私達は自然とこれからどんな服を、靴を作っていこうかとたくさん話した。

別にどちらからともなく、アイディアが溢れ出していく。

お互いにこれまでの好きだったデザインの箇所や、こんなのもみたい、作りたいと語り明かした。

スティーブンさんとは、靴を作ってくれる協力者くらいの関係だったが、

今回のことで仲間になったんだと私は心強く思っていた。



「ナナミさん、男性もロリータを着れますね!」



私は、自信をもって大きく頷いた。

次回予告!

どんどんロリータを作っていく七海。

しかし、今のままで本当にいいのか……。

夢を現実にするため、ある行動に出る。



第九話 決意は出来ましたか?

お楽しみに!

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