第四十一話 計画を立てますか?
「私、柄を使った布に挑戦してみたいです!」
「装飾のパーツの種類を増やしていきたいですね。やはり、選ぶものが多いほうがいいと思うので。華やかにもなりますし。」
「ビーズの刺繍というものがあるようですわ!光が反射したらきっと素晴らしいですわー!」
「みんな凄く意欲的で嬉しいよ!」
「あの…… ナナミさんは何をしようって思っているんですか?」
昼下がりのマロン村。
すっかり私達の意見交換場になった私の自室に集まっていた。
キラキラ輝いている三人はかれこれ1時間やりたいことや、クラブ様から聞いたことを共有してくれた。
ずっと聞いていた私を不審に思ったんだろう。
リーリが顔色を少しだけ伺って聞いてきた。
私は少し戸惑っていた。
本当にこのチームは凄い。吸収が早いし、意欲がある。
追求心があり、どんなことにも挑戦していける。
どんどん、新たな可能性が出てきて、素敵なロリータが出来上がる。
私は、何をすべきなのだろう。
「あの、考え中なんです。今はみんなの方が凄いというか。考えが沢山あって。
私はえっと……」
「あら、ナナミ。何か悩みでも?」
「そうなんですか?僕達に話してくださいよ。」
「あはは、あの……」
「まあ、紅茶でも飲みながら、ゆっくりと。」
いつものリーリの紅茶。とっても落ち着く。香りから味から。全てが私をホッとさせる材料になる。
ここに来てからずっとずっとこの紅茶に助けられてきたんだ。
ゆっくりと味わいながら。私は少し、話してみようと思った。
ここに来て実は話してなかったこと。
そう、自分自身のことだ。
【私がいつ居なくなっても、ロリータはしっかり文化になっていける】
そう思ってから、何かここに残さなければならないと強く思うようになった。
私が、ここにいる証。
この三人には、伝えないといけない。
なんとなくだが強い意志で私は話始める。
「みんなには詳しく話してなかったんだけど。私は、この国じゃない場所からきたの。」
「それは、村長から聞きました。どこの国かは知らなかったですけど。」
「たぶんね、この世界じゃないところなの。星も違うかもしれない。」
「え……」
皆が一斉に黙った。
「日本。そういう名前のところから来たの。そこは人もいっぱいいて、騒がしくて。
ここにない文明も沢山あって便利だけど、とても窮屈で。毎日忙しない国。
ロリータは日本の文化として誕生したのだけど、まだまだ偏見がある文化だった。
私は地球っていうところから来たの。」
「地球……」
ああ、やっぱり。
皆しらないというリアクションだ。
「石田七海。それが私の本当の名前。
ロリータのお洋服を売るお店でずっと働いていたけど、
歳をとったという理由で辞めざるを得なかった。」
「どうして歳が関係するのですか?」
「日本ではね、ロリータとかそういう服は若い人が着るものってイメージがまだまだあって。
上司にもはっきりそう言われたの。それに恋人にも辞めろって……」
「そんな!ナナミさんのロリータはとても魅力的なのに!どうして!?」
「ね?そうだね…… 私もそう思う。でも、恋人にとってロリータを着ている私は
一緒に居て恥ずかしい存在だったの。
現に街でも私は異質な存在扱いされていたし、
両親にも認めてもらえなくて。いつも一人だったんです。」
「そんなの変ですわ!その日本という国はおかしいですわ!!!!」
フィーが立ち上がって叫んだ。
目には大粒の涙が見え、体は怒りで震えている。
「落ち着いてくださいフィー。昔の話ですから。」
「友の大切なものを否定されたと聞いて怒らない人がいますか!」
周りを見渡すと、皆すごく悔しそうな顔をしていることに気がついた。
私の為に怒ったりしてくれていることが伝わってきて慌ててしまう。
「本当に今は気にしてませんから!みんなそんな顔しないで!
私は平気です、今はとてものびのびしていますし、それに、」
すっとやってきたリーリが私を抱きしめた。甘い花の優しい香りがする。
あまりのことに驚いた私は言葉を失った。
彼女のすすり泣きが間近で聞こえる。
「……本当に。大丈夫ですよ。」
「違います。」
「え?」
「その時の、辛かったナナミさんを抱きしめてあげたかった。」
私はその瞬間、小さな子どもみたいに泣いてしまった。
大声をあげ、だらしなく涙を流して、年甲斐もなく言葉を失ってただ叫んで。
自然と三人が私を抱きしめて一緒に泣いてくれている。
これが仲間だ、友なんだ。
ずっとずっと欲しかった。
孤独ではない居場所。
なんとなく感じているサヨナラを、
今はしまい込んで。一緒に泣いていたい。
時間が経って落ち着いたころ、スティーブンさんが真剣な顔をして言った。
「この話をしたということには何か、あるんですね。」
全て見透かされた目だ。
「きっと、私はいつかここから日本に帰ってしまう。」
「そんな!嫌です!そんな場所に帰って欲しくないです!!」
「そうですわ!ここに居てくださいまし!」
「ふたりとも、それはナナミさんが決めることだ。
もしかしたら決められないことなのかもしれないけど。
でも、ナナミさんだって何も意味もなく言ってるんじゃないんだと思う。」
「……はい。」
「スティーブンさんありがとうございます。
だから、今から絶対後悔したくないので、立てさせてください。
私が居なくなっても大丈夫な計画を。」
あまりにも天気がいい昼下がり。
私はみんなにサヨナラの準備を宣言した。
次回予告!
ついに七海はこの世界に何が残されるのかを考える。
そして収穫祭のファッションショーも考え始めなければならない。
3人は何を思う?
第四十二話 何を残しますか?
お楽しみに!




