第三十七話 ロリータを着てもいいですか?
王都アニス。王の御前。
私達は改めてこの場に来ていた。
今日は私、リーリ、スティーブンさん、フィーが来ていた。
グリスさんは
「この場は、もうお嬢様お一人で頑張っていただくべきかと。」と城の前で待機する形になった。
クラブ様、ハート様、ダイヤ様の前にいるとシャンと背筋が伸びる。
でも護衛の方の中にカガミさんがいてなんとなく安心している自分も居る。
「この度は本当にありがとう。皆の努力と素晴らしいろりいたに感謝する。」
「ありがとうございます。早速ロリータを着てみられますか?」
「もちろんです。私達もこの日を楽しみにしてましたわ。ねえダイヤ。」
ダイヤ様は、少しもじもじしておられた。
「あの、ナナミ。ひとつ、聞いていいかしら?」
「ダイヤ様、なんなりと。」
「そ…… その……」
ダイヤ様がこれから言いたいことがなんとなくわかった。
その姿は、私が初めて注文したロリータを取りに行った時の気持ちに似ている気がしたんだ。
初めてのロリータ、憧れのロリータ、夢にまで見たものを目の前にした時。
自分に果たして見合うのか?そう思ってしまった気持ち。
「私、ロリータを着てもいいですか?」
痛いほどわかってしまう。
しかし、今の私はその気持ちの理解者で。きっと彼女に一歩踏み出してもらえる。
そんな人間でありたい。
「はい。貴方のために仕立てました。きっと気に入っていただける一枚にしております。
絶対にお似合いになると確信しています。」
ダイヤ様は泣きそうになっていたが、すぐハート様が肩を抱いた。
「ダイヤ、大丈夫。あんなに素敵なろりいたを作った方々だもの。
何も心配無いわ。それに私はナナミさん達を信じています。一緒に着てみましょう。」
「お母様……」
「そうだ、ダイヤ、父さんと楽しみなんだ。今からどんな自分になれるのか。
楽しもうじゃないか。新しい姿を。」
「お父様…… はい。」
「では、皆さん、ろりいたを着させていただけるかしら?
どう着てみたら良いかわからないものですから。」
「はい!」
とうとう、王様達にロリータを着せる時がきた。
クラブ様にはスティーブンさんと制作者のフィーが、
ハート様、ダイヤ様には私、リーリが補助に入ることになった。
「まずは、こちらがご用意したロリータです。」
私達は二人のロリータをお見せする。
ハート様はロリータのフリルの段をケーキと表現されていた事から、
イチゴのショートケーキをイメージした白と赤をメインにした甘ロリに仕上げた。
どれだけ重くなっても着てみたいと仰ったので、フリルは存分に贅沢に重ねた。
白のベースの姫袖ワンピースに、イチゴのように赤いリボンを沢山散りばめている。
靴下、靴も同様のイメージで統一感を出してみた。
頭飾りは思い切って沢山の生地でケーキを作り、ヘッドドレスにつけた。
斜めに置くタイプで、ハート様のブロンドヘアにも合うようにしている。
ダイヤ様は先日いただいたオーダーで更にパワーアップした自信作だ。
元々作成していた
スティーブンさんの青色の美しい花の飾られた靴、
フィーの白のパールの花細工の入ったベルト、
リーリの青のフリルとリボンのヘッドドレス、
私のシンプルなレースのお袖留め。
それに加えて、あの青い花柄の布で作ったクラシカルなロリータジャンバースカートにしてみた。
ダイヤ様が気に入っておられたボリュームのあるスカートは外せなかったので、
パニエを新たに作成。そこには青のレースが見えるようになっていてスカートからちらりと顔を見せるデザインにしている。
クラシカルなデザインに合うようにケープをつけていて、
花柄と同じ青色をアクセントになるように演出。
少女が着るに相応しいデザインになった。
「ナナミ…… とても凄いわ。この布がこんな素敵に。」
「ダイヤ様、こちらも。」
そう言って私はいただいていた布をお渡しする。
「このロリータにも、こちらにも合わせやすい小物を制作しております。
気分によってどちらもお楽しみいただけたらと思います。」
「いいのかしら……」
「はい、着たいものを好きに着ていただくのが一番ですから。」
「ナナミ、娘の心に寄り添ってもらい感謝します。」
「いえ、これは私達の想いなので。さあ着替えましょう。
初めてロリータを着る人に着せることはこの世界にやってきて何度も経験がある。
毎回、どんな表情をするんだろう。大丈夫だろうか、いや大丈夫と少し不安になってしまう。
でも、どんな時も自分のロリータを信じてやってきた。
この短い間で私は全く無かった自信を取り戻せたんだ。
だから、いつだって笑顔で丁寧に着せていくんだ。
着替えた二人は、やっぱり目がキラキラ輝いていた。
初めて着るロリータに戸惑いと、驚きと、嬉しさと。色んな感情が一杯になっていた。
「ナナミ…… これは。」
「素敵です。」
「はい、とても美しいです!お二人とも。」
ダイヤ様が鏡を見てくるりと回る。
重量感のあるスカートなので、布がひらりとするわけではない。
ただ、レースがかすかに揺れる。そんな小さなことだ。でも大事な事だった。
「私は、夢でもみているの?こんな素敵な事が。」
「ダイヤ様、これからは自由に楽しんでいただけます。」
「自由?」
リーリが少し微笑む。
「私も、ロリータを着て。今まで無かった布の自由を楽しむ機会が増えました。
頭につけていただいているヘッドドレス、手についているお袖留め。
一つ一つ、初めて使い方をみるものでした。
これからは私達もお手伝いします。沢山、布の自由を楽しんでくださいね。」
リーリの言葉は私にも響いた。
この世界は布を羽織ることで生活していた世界。
そこにロリータという布の自由が与えられたと表現してくれたのだ。
こんな嬉しいことはない。
「ありがとう、ナナミ、リーリ。」
「えへへ、私も嬉しいです。」
「お母様、この方々にお礼がしたいわ!」
「ふふふ、ダイヤ、もう用意しているの。」
「え?」
「ナナミ、皆さんのところへ行きましょう。」
次回予告!
王にもロリータが気に入っていただけ、大成功を収めた七海達。
そこには褒美があって……
第三十八話 豪華絢爛じゃないですか?
お楽しみに!




