第三十五話 間に合いますか?
「私も、ろりいたを着てもいいかしら?」
それは予想外の、いや、ちょっとは想定してたけど、このタイミングで言われることになるのは
思ってもみなかったので私達はおもわず。
「えーーーーーーーーー!!!」
叫んだ。そりゃあもうびっくりして。
「どどどど、どういう心変わりでそうなったんでの!?」
「そうです。だってこの布が大切と聞いていたので。」
ダイヤ様はあまりの私達の慌てぶりに少しクスクス笑っている。
カガミさんが「こら。」と少し諌めた。
「ごめんなさい。あのね、あの後実は思い返していたの。
あなた達のろりいたを。最初はあんなにおかしなものと思っていたのに、
ダンスルームで沢山の方がろりいたを着て、楽しそうに話して、
くるりと回って。その瞬間の布のひらりとなった事。
装飾が気に入ったからお願いしたのはそうなんだけど、思い返せば思い返すほど
私、ろりいたをオーダーしなくてよかったのかしらって思えてきて。
恥ずかしい話、私ずっとお城にいて外交はあったけど関わる方が限られていて。
ずっと寂しかった。ああ、カガミはずっといてくれたけどね!感謝してる。
でも何も変わらないの、私はずっと花だけのために生きてきた。」
話を聞きながら私は、初めてロリータを見た日を思い出していた。
私は昔から人と関わることが好きだった。
だから友だちも沢山いたし、学校でも楽しく過ごせていた。
でも、いつも、心の底から好きなものがみつからなかった。
友だちはアイドルやアニメ、スポーツに芸術。様々な好きをたしかに持っていて、私だけが空っぽ。
好きに夢中で話している人をみると羨ましく感じていた。
私にも出会えるだろうか、こんなに好きになるものが。そう思っていた。
18歳の夏の事だった。
高校生最後の夏休み。私と友だちで原宿へ遊びに行っていたときだった。
そう、出会ったんだ。
ショーウィンドウにあった、ピンクの姫袖ブラウスにとんでもない量のフリルのスカート。
ピンクのレースがあしらわれたパンプスに、白のハートの形のバック。
ヘッドドレスに桜がついていて、私は「あ」と声を漏らした。
圧倒的に可愛い。
その言葉がまさに相応しい。とんでもなく心を奪われた。
漫画だったら多分目にハートが出てるだろう。
私は気づけばショーウィンドウの目の前に立っていた。
「七海?どうしたの?あ、ロリータさんじゃん。」
「ろりいた?」
「知らない?最近流行ってるよねー。まあこんなフリフリ恥ずかしくて着れないけど。」
「そう、かなあ。」
「え?七海、着たの?」
「え、あー……。」
私は躊躇した。こんな事言って良いの?
でも、私は、この服が凄く気になっている。
本当の事を伝えるのは大丈夫なのかな?嫌がられたり、嫌われないかな。
一瞬で頭がぐるぐるする。
すると友だちはにっこり笑った。
「あ、桜じゃん。七海好きだよね。着てみたら良いじゃん!」
素直な友だちの言葉に私は心動かされた。
着てみたら良いんだ。私。これを。
そうか、簡単なことだったんだ。でも誰かに、肯定してほしかった。
私は、その日、受注だったロリータをその場で注文しバイトを始め、そしてそのロリータを手に入れたのだ。
「ねえ、ナナミ。」
ふと気づけば不安そうなダイヤ様がこちらを見ていた。
そう、あの日の私のように。
「私、ろりいたを着てもいいのかしら?」
私は言うことが決まっていた。ゆっくりダイヤ様の手をとり、目を見て伝えたい。
「はい。好きなものを好きにしていただく事は素敵なことだと思います。
着てください、貴方だけのロリータを。」
「ナナミ…… みなさん。あんな酷いことを言ったのに。ごめんなさい。」
「もう、それは大丈夫ですわ。」
「はい、ですから、オーダーを改めて聞かせてください。最高の一枚をお作りします。」
「カガミさん、例の布はご用意出来そうですか?」
「はい、本日持参しています。」
「え?」
カガミさんはドサッと持ってきた袋を出す。
そこにはダイヤ様の大好きな花柄の布が大量に入っていた。
「カガミ!これって。」
「スティーブンさんに頼まれておりまして。ね?」
「はい、いつかこう言われても良いように、ご用意をお願いしました。ありがとうございます。」
「カガミ!!」
ダイヤ様はカガミさんに勢い良く抱きついた。
あまりの衝撃にカガミさんは赤面し、慌てている。
「ダダダ、ダイヤ様!私は騎士です!そんな…… 昔みたいな事を!」
「ありがとう。カガミ!大好き!」
……もしかして今私達って凄いものを見ている?
国の姫が騎士に抱きつき、大好きと言った現場にいるんだから。
「僕が、お願いしたんだけどなぁ。あはは。」
「なんだかお似合いですね、あのお二人。」
「そうですね。あははは。」
「もう、オーダーの話は少し先になりそうですわ。」
この空間は今、とても幸せでみんながみんな笑っていた。
そう、これはいわゆるハッピーエンドなんだ。
そう、なんですが。ダイヤ様。
納品まで後七日なのです。
国のトップにお渡しする一大ロリータの締切が七日後なのです。
オーダー次第では、私達は地獄をみる事になりそうです。
私は心の中で少し焦りながら、でも、この時間を楽しむことを決めた。
だって、昔の私みたいに、
ロリータを肯定されて嬉しくなって運命さえ変えてしまう選択が出来た方がここにいるんだから。
次回予告!
ついにダイヤ様のロリータに着手した私達。出されたオーダーはなんと……!
後七日、なんとかなるの?
第三十六話 豪華なロリータになりましたか?
お楽しみに!




