第三十四話 お願いはなんですか?
それはある夜のことだった。
王都アニスの王様、女王様、姫様へのロリータの納品日が1週間きったまさにここは修羅場だった。
どのロリータだって最新の注意をはらって作成しているが、国のトップに献上するものだ。
失敗は許されない。
しかも、女王の言葉を聞いた人々がマロン村に殺到!ロリータの受注が止まらない!
なんとも嬉しい悲鳴なんでしょう!
「ナナミさん、袖、こちらの縫い合わせで合ってますか!?」
「はい、完璧です!ありがとうございます!」
「ナナミさんー!バーガンディってどれですかー?」
「えっと、これ!このリボンでスカートにラインを塗ってください!」
なんと!このピンチを見て、今までなんとなく手伝ってくれていた【SAKURA】のみんながロリータを制作してくれているのである!
まあ指揮をとるのは変わらないけど、しかし本当に助かる。
なんとか体制を整えた状態で、私は自分のなすべきことに集中出来た。
そんな慌ただしくも、ロリータに向き合っていた夜だった。
ドタドタドタ!!!!!!!
とんでもない足音と共に、自室の作業場の扉がバーンと勢いよく開けられた。
そこには慌てて汗まみれのギューがぜえはあ言いながらかがみ込んでいた。
「ギュー!どうしたんですか?そんな慌てて!?」
「あ、ナナミ殿。来られておるんじゃ!」
「え、誰ですか?」
「私です。ナナミさん。」
声ですぐにわかった。
「ダ、ダイヤ様!?!?」
その場にいた、フィーも思わず立ち上がる。
無理もない、王宮の人間がこんな田舎町にやってくるなんて!!!
「ナナミさん、急な訪問、お許しください。」
「カガミさん…… これは?」
「ごめんなさい。あなた達を信用していないわけじゃないのだけど。
どうなってるか、気になって。その……」
「夜も眠れず、日中も窓の外を眺めていらっしゃる。もう頭の中がもうナナミ様達の事が
気になって気になって仕方ないご様子で。
どうか、ご容赦いただけませんか?」
「もう!カガミ!」
凄く、盛り上がってるし言いたいことはわかるけど!
王都の人間がこれ公式でいらっしゃってるの???怖くて聞けない!
「とにかく、こちらへ。どうぞ。
ギュー、すみません、リーリとスティーブンさんを呼んでいただけますか?
ダイヤ様がいらっしゃったので、出来ているものを全て持って来てほしいと伝えてください。」
「任された。ナナミ殿。後は頼む。」
突然の来訪に驚きを隠せないまま椅子を出し、座っていただく。
ダイヤ様は部屋を見渡す。
「ここでろりいたが作られているのね。凄いわ。」
「最近は村の方々にも手伝っていただいていて。ここだけではないのですが。」
「ごめんなさい。その、私の…… どうなったかしら?」
「はい、今、全てお見せできるだけご用意していますので少し待っていただけますか?」
「あ、そうよね、急に来たんだもの。待たせてもらうわ。」
ダイヤ様は今日もあの布を着ていた。大事なのが更に伝わる。
私達なりに大切にさせてもらったけど、どう思われるか。怖いというのが本音だ。
「貴方、えっと、フィーさん。」
「は、はい!ダイヤ様!先日は……」
「いいえ!謝らないで!
私がひどいことを言ったわ。まだ謝ってもいない私に希望を聞いてくれた。
とても感謝してるの。あの時も、今も、ありがとうございます。」
「……はい。少しだけナナミから話を聞いています。
大切なものがあったから、守りたかったんですよね。
私も、その気持ちがわかります。よく街の人にコソコソ言われていたので。
好きなものを塗り替えられそうになる感覚、怖くて、戦わなきゃってなっちゃうの。わかります。
だから、謝らないでください。」
「ありがとう。本当に、この国は優しい人が多くて誇らしい。
お父様とお母様が作った国ですものね。」
「それはそうですわ。とても素敵な国ですわ。」
「だから、貴方にコソコソ言った方々もまだ知らないだけ。
受け入れるのは時間がかかるかもしれないわ、私のように。でも、いつか伝わるといいわね。」
「……! はい!」
ダイヤ様なりに寄り添っていただいてるのがわかる。
少しだけ、少しかもしれないけど伝わったのかな。私達の好きが。
だからこそ、ダイヤ様の好きに寄り添いたいんだ。
私は、お洋服を見せるためにトルソーを持ってきた。
このトルソーも服が無かったけど、村の人と一緒に作った大切なものだ。
丁寧に、ダイヤ様の前に置く。
「え……?」
ダイヤ様はとても驚いた表情で布を見た。
なんの細工もない、その布を。
「こちらの布には一切手をつけておりません。
私達の好きのみを押し付けてしまうのは違うと判断しました。
なので、装飾のものを複数ご用意しています。」
「いいの……?」
「はい、今装飾をもってきていただいてます。
もしよろしければつけて見られませんか?
そこからまたこうしたいなどがあれば調整いたします。」
「ありがとう……!」
ダイヤ様は、トルソーにかかった布を撫でながらとても喜んでいた。
「あなたをこのまま、着られるのね。良かった。」
「本当に良かったですね。でも言ったじゃないですか。ナナミさんは裏切らないって。」
「そ、そうだけど。」
「ご配慮、ありがとうございます。僕も今から楽しみです。」
そこにタイミングよく、リーリとスティーブンさんがやってきた。
非常に驚いた顔をしていたが、二人の手にはしっかり装飾や靴が用意されている。
「お待たせしました!ダイヤ様!」
「少し、手を加えていたもので……」
「いえ、こちらが急に押しかけたのです。気になさらないで。」
「みんな、ダイヤ様に仕立てたものを試着させてあげてください。」
それぞれの担当しているものを丁寧につけてもらっていく。
全てつけることが初めてだからみんなゆっくりとやってくれた。
ダイヤ様は恥ずかしそうに、でも少しはにかんでおられた。
そして最後に青色の美しい花の飾られた靴をはく。
すっとそこにリーリが鏡をもってきた。
そこにはダイヤ様の好きと、私達の好きが集まった姿があった。
「わあ……!」
「ダイヤ様、私達はとてもお似合いだと思います。」
ダイヤ様はその場で一回転して変身した自身を不思議そうに見ている。
表情からではどう考えているのかまだわからない。
「気に入られていますね。」
カガミさんが優しく言葉をかけた。
するとダイヤ様は少し恥ずかしそうに、頷いた。
「この布をこんな…… 綺麗に着れるなんて。思わなかった。
自分に装飾をつけるなんて考えが私達にはなかったので、とても新鮮だわ。
最初はわからなかったけど、あなた達が着ている理由がわかったわ。
こんな私になったのは、初めて!
この布を、守ってくれてありがとう。私、この花がらがもっと好きになったわ!」
本当に良かった。
人の気持ちを尊重できるこの国にいられて。
私もその心を忘れないでいて。
「良かったですね、ダイヤ様。」
「とってもお似合いです!私達も嬉しいです。」
「こだわって作った甲斐がありました。」
「私のパール細工も映えてますわ。」
みんなも一緒に喜んでいた。
「ダイヤ様。好きを守ってお伝えいただけたので、私達もお力添え出来ました。
ありがとうございます。嬉しいです。」
「みなさん、本当に感謝します。……それで。あの……」
ん?どうされたのだろう。
急にまた下を向かれて、気に入らなかったわけじゃなさそうだが。
「ダイヤ様、頑張ってご自身でお伝えするんでしょう?そう決めたじゃありませんか。」
「うー。そうなんだけど。」
「お願いが、あるの。」
「はい、お伺いしますよ。」
ダイヤ様は、ゆっくり私達をみて。深呼吸した。
何か重要な事を言われるのか?
「私も、ろりいたを着てもいいかしら?」
次回予告!
なんと、ダイヤ様がロリータを着たいと言ってくれた!
しかし、後7日しか納品まで時間がない!?
どうなる!?
第三十五話 間に合いますか?
お楽しみに!




