第三十三話 お花はどうしますか?
「ダイヤ様はロリータを着られないんですの!?」
王室から、マロン村に戻ってきた私達は自室で早速会議を開いていた。
ちゃっかりいるフィーの姿にも慣れてきた。
茶菓子のスコーンと紅茶を出しながらリーリが笑う。
「フィーさん、落ち着いてください。大丈夫ですから。」
「だって!……やっぱり認めていただけなかったということですの?」
「違うよ。ダイヤ様にとってあの布は思い入れのあるものだったんだ。
ナナミさんはダイヤ様の好きを尊重したんだ。」
「そう、ですの。」
スティーブンさんがはっきり言ってくれたのは良かったが、空気は少し落ち込んでしまった。
フィーは納得のいかない顔で紅茶を飲む。
無理もない。初めての拒絶。
それに立ち向かっても駄目だったと感じているのだろう。
「フィー、聞いて。」
「ナナミ……」
「好きは人によって違います。
フィーのロリータは私のロリータを真似て最初は作っていたかもしれません。
しかし、今はパールの飾りを作ったり、刺繍に力を入れたりして変わってきてますよね。
好きなものは人それぞれあります。ダイヤ様の好きがたまたま、ロリータではなかったという事です。」
「……はい。」
「でも悲しまないでほしい。そんな中でも私達のロリータを見て、オーダーをいただいたから。」
「そうですの!?良かった……ダイヤ様に何かが伝わっていたんですね。」
「はい、そのうちの一つが、貴方のパールの飾りです。」
「私……の?」
フィーは驚いた顔で自身のロリータについた飾りを見る。
キラキラ輝くパールのリボン、お花。
これが、姫、ダイヤ様の心を確かに射止めたのだ。
「ダイヤ様のオーダーはこの布に合う、お花の飾りと頭飾りです。」
「この布ですの?かなり無茶ですわね。とても古い生地ですし、年代物ですわ。」
「はい、かなり年季が入ったものですから。良いように言えばビンテージ、っていう物ですね。」
「??なんですの?」
「昔の布や物を指す言葉です。わざと昔の生地を使って服等を作る人も少なくないんです。」
一同は初めて聞いた知識だったのか、へえーと声を揃えた。
「これを、リメイクと言います。私は、ダイヤ様のこの布をリメイクすることを提案します。
形はほぼそのままに、オーダーの花を添えて。
ロリータらしいものじゃないかもしれませんが、可愛いものに仕立ててあげたいんです。」
「はい、良いと思います。りめいく、まだちゃんとわかりませんが楽しみです。」
「ナナミさんが言うんだ。間違いない。でも、何か気が変わったら言ってください。
`次のご用意`は出来ていますよ。いつでもどうぞ。」
「はい、ありがとうございます。
フィー、手伝ってくださいますか?私はパールの細工はわからないので。」
「はい……!任せてくださいまし!」
そこから、王様と女王様のロリータのデザインをつめていく。
王様はクラシックな物が好みだったようで、マント仕立てのロリータに夢中だった。
服を知らなくてもやっぱり王というものはマントが好きなのかなと少し面白かった。
また、袖がしっかりボタンでしまったものと申されていた。
なんと趣味が大工らしく、巣箱や棚、城の装飾の彫り物も王様が作ったものだったらしく、
そういった事もしたいから、袖が大きいものは…… という事だった。
この国の自然が好きだから、色は緑を中心に考えてほしいというオーダーだった。
女王様は姫袖に大変興味があり、何個も姫袖をしっかり見比べた。
その中で、何層ものフリルの姫袖を気に入っていただけた。
なんだか、ケーキみたいで可愛いわ。
とどちらかと言うと甘ロリ系、可愛い感じのものをオーダーされた。
可憐である女王様ではあるが、好みは可愛い。ギャップに周りの人間も絶対似合います!と興奮気味であった。
オーダーに沿ってデザイン画を書いていく。
最近では書きながら、リーリやスティーブンさんが横からアドバイスをくれるようになった。
フィーもアイディアをすぐに提案してくれて凄く助かる。
四人であーでもない、こーでもないと言いながら、素敵なアイディアを提案し、引き算してどんどんと形にしていく。
お二人のものはなんだかんだものに出来そうに確信がもてた。
でも……
「ダイヤ様のものは、いかがされますの?」
「飾りを単につけただけだと悪目立ちしてしまいそうですね。」
そう、この布はブルーの小振りの花が散りばめられていて、その上、長年着ているのだろう。
首周りと腕周りの布がゆるく伸びている。
色味も薄く、少し古びた色になっている。
オーダーの際に参考にした、リーリの薔薇の飾りと、フィーのパールの飾り。
どちらもそのまま足したらうまくマッチしないのはわかっていた。
何もなければ、この布を少し切って、フリルを足してジャンパースカートにして、中に着るシャツを仕立てて、ゆるくなったところは詰める作業をして…… なんて提案も出来る。
「この布を切りたくないんです。」
「はい、そうですよね。」
「じゃあどうしますの?」
私は紙にデザインを書きながら話していく。
「飾りを増やす、という形で考えています。
例えばですが、腰回りが真っ直ぐなデザインなのでベルトでアクセントをつけて、
付け襟をプラスし、そこにこの布に合う刺繍をする。
パールでチョーカーを作って首元も華やかに。
お袖とめは花と同じ色のリボンにしてあわせて……。
頭飾りはヘッドドレスを気に入っていらっしゃったのでそちらを。
靴下にもフリルを追加して、靴もこんなイメージで。」
書き終わったデザインを見て私は少しハッとした。
私がロリータに出会ってすぐにしていた服装に似ている。
あるものを集めて、作れるものは自分なりに作って、工夫していた。
着ていた普段着がいつもと違う気がして、特別な服になった気がして嬉しかった。
そんな気持ちが蘇ってくる。
「こんな気持ちになってくれたらいいな。」
「ナナミさん?」
「いえ、すみません。どうでしょうか?
こんな感じで。布はいじらずにという形で少し可愛さを足したものになるのですが。」
「私は素敵だと思います!是非、ヘッドドレスと付け襟を作らせていただけませんか?」
「わかった。リーリに任せるね。」
「このチョーカーというものは知らないのですが、私が作りますのね。」
「しっかり教えるよ。頼めるかな?」
「あら、誰に仰ってますの?お任せあれ!刺繍も私がやってみせますわ!」
「ベルトは皮の方が映えますよね?僕も挑戦させてくださいませんか?勿論靴も。」
「はい、よろしくお願いします!」
私達は、花を分担して沢山咲かせることにした。
この布に新たな花が咲くように。
あの頃の私みたいに、新しい扉の前に立てるような。
好きなものを好きなままでいいんだと伝えたい。
王都の家族、皆さんに笑顔になってもらえるように。
次回予告!
制作がついに始める。王都への納品が迫る。
そんな中、ダイヤ様とカガミがやってきて……!?
第三十四話 お願いはなんですか?
お楽しみに!




