第三十二話 素敵な選択ですね
それから王様も女王様も、ダイヤ様は恥ずかしそうにでも笑顔でオーダー会が始まった。
それぞれ、初めてみたロリータに驚きを隠せないようだった。
細かいところまで、触って、間近で拝見していただく。
私は東京でお店に通って、お姉さんと話しながらロリータを選んでいた時代を思い出す。
そうだ、こうやって私は大好きなものを選んで悩んでて。
その時、私もこんな幸せそうな顔をしていたのかな?
「これはボンネットと言って、取り外すと、わかるのですがこのピンで止まっています。」
「まあ、素敵!こうすることによって落ちてこない工夫をされているのですね。」
「そうです!こちらのものはヘッドドレスと言って、飾りがついた頭飾りです。」
リーリは直ぐに皆と混じってロリータの説明をしてくれている。
最初の方から私から知識を勉強していたから、的確にそして利点をしっかり伝えてくれている。
心強い存在になっている。
ダイヤ様をふと見ると、どうしたらいいかわからない顔をしていた。
あ、そうだ。女王様がタイミング良く頭飾りの話をされている。
チャンスだ。
「ダイヤ様、ハート様が頭飾りについてお伺いしています。ご一緒してはいかがでしょうか?」
「そ、そうね。ありがとう。カガミ、ついてきて。」
「承知しました。」
そう言うと、少し緊張した足取りでダイヤ様はハート様の方へ向かわれた。
なんとかうまくいきますように。
「ナナミさん。」
「スティーブンさん、先程は……」
「はい、一応今あの布がご用意出来るか聞いています。
もしかしたらロリータを着たいとおっしゃられた時の場合に備えて。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
「いえ。……あんな風に否定されたのはやはり驚きました。」
「そう、ですね。」
スティーブンさんは少し俯いて、ズボンの裾を握った。
ああ、悔しいんだ。
私はすぐに察して話を聞こうと体制を立て直す。
「なんだか、無条件に受け入れてもらえるって。話せばわかってくれると思っていたんです。
どんな人でもわかり合えるって。
でも人にはそれぞれ好きがあって、それを押し付けてしまうと先程のように傷つけてしまう。
難しいんですね、好きを伝えることは、認めてもらうことは。」
とても寂しそうに言うもんだから、胸が痛む。
私も、ここに来て当たり前に受け入れてもらえていて、努力すればって思っていたから。
でもしっかり知っていたんだ、受け入れられない人だって当たり前にいて。
その中には拒否反応がひどく、言葉が強くなる人だって居る。
好きと好きが時には傷つけ合うことだって、あるんだ。
「はい、でも。スティーブンさん。
諦めないでください。貴方の好きなことを。
だれになんて言われたって。諦めてはダメです。
例え認められなくても、嫌われても。好きなものを守ってください。
自分の好きは自分でしか守れませんから。」
私に出来るのは、みんなの好きを肯定してあげることだ。
誰も好きを諦めなくていいように。
「……はい。わかりました。
僕は、靴作りが好きです。ナナミさんに、ロリータに出会って幅が広がりました。
種類や装飾、デザインが増えてますます好きになりました。
明日、また何を作ろうと思うと夜も素敵な時間になって。
だから、まだ知らない方もそうなってくれたらなって思ってます。今も。」
「そうですね。私もですよ。」
「ダイヤ様にとって素敵なオーダーがあればいいのですが……。」
ダイヤ様は話を聞きながら、まだ戸惑っていらっしゃる様子だった。
無理もない。自分の好みがはっきりしている方だから。
何か、気に入っていただけたら嬉しい。
しかし、ダイヤ様が無理をなされてないかだけが心配だ。
「ナナミ殿。お伺いしたいことが。この靴の事なんだが……」
「クラブ様、靴はこちらのスティーブンを中心に作成しております。
彼からご説明してもよろしいでしょうか?」
「おお!そうであったか!スティーブン殿。よろしく頼む。」
「は、はい!」
「そう緊張するでない。これだけ種類があって悩んでおるのだ。聞いてはくれんか?」
「はい、お任せください。ナナミさん、ちょっと行ってきます。」
クラブ様に呼ばれて、スティーブンさんは急ぎ足で去っていった。
私は少し心配なので、ダイヤ様の方に行くことにした。
そちらへ向かうとリーリがしっかり説明を続けていた。
本当に布と小物が好きだからこその熱量だ。
ハート様は全てにご興味があるご様子。
それに比べてダイヤ様はまだ少し、戸惑っていた。
「ダイヤ様。」
「ナナミさん。あの……」
「ご無理はなさらず、素直にいていただけたらいいので。」
「あの……」
ダイヤ様が少し、もじもじしている。
……ん?なんだろうか?
「ダイヤ様、少しご興味があるものがあるようなのですが……」
「カガミ!わかったの???」
「何年ご一緒させてもらってると思ってます?
あれ、ですよね。おそらくは。」
カガミさんが手を向けたのは、リーリの襟元にある薔薇の花の装飾だ。
最初に作ったリーリのロリータ。その花を指している。
「確かに!あの布に合いそうです!ダイヤ様、素敵なものを見つけられましたね。」
「えっと。その。私、花が好きだから。首近くにもあったらいいかなって。」
「とてもお似合いになると思いますよ。」
がっつりロリータなわけじゃない。
でもこの薔薇の花は確かにダイヤ様にとって大きな決断なんだろう。
それがとてもいいなと感じた。
「あの方の、パールの花も美しいわよね?」
「あ、フィーのものですね。彼女はパールで細工するのが得意なんです。」
「そうなんですね。」
「本当に、ダイヤはこの花の布が大好きで、花もよく見ているの。庭の花もダイヤが決めているのよ?おかげで美しい庭になったわ。」
「お母様、あんまり言わないで、恥ずかしいから。」
ハート様も嬉しそうに笑っている。
ダイヤ様は恥ずかしそうだが、少しはにかんでいた。
「ナナミさん、うん。決めた。一着私の布をお貸しします。
そちらに花の装飾を頼めますか?
……あと、それに似合う髪飾りも。」
私は、素直な感情が顔に出てしまう。
嬉しい。
「素敵な選択ですね。その話、お受けいたします。」
最高の一枚に仕上げるために。そして、ダイヤ様のこの決断をいいものにするために。
次回予告!
それぞれ王、女王、姫からオーダーを受けた七海達。
気に入ってもらえるかどうかを真剣に考える。そして出来たものは?
第三十三話 お花はどうしますか?
お楽しみに!




