第三十話 大丈夫です
先ほどとは違う騎士が私達を案内してくれる。
城の中を改めて歩いてもきらびやかで全てに人の手が行き届いているのがわかる。
大切にされてきた場所なんだなと私にもわかる。
「申し訳ありません。ダイヤ様は昔から頑固と申しますか……
一度嫌だと思ったら気が変わらない気質なんです。」
「いえいえ。こちらが急なご提案をしにきているのですから。」
「……でもダイヤ様のお話も聞いていただきたいのです。
意味もなく拒否をされているわけでは無いと思うんです。もちろん!無礼だったのは認めます!」
「貴方はダイヤ様の事をとても大切にされているんですね。」
そういうと騎士は、少し照れたように笑ってみせた。
ただの市民である私達にも分け隔てなく話してくれるこの人はとてもいい人だと更に感じた。
「申し遅れました。ダイヤ様の騎士のカガミです。」
「改めまして、七海です。こちらがリーリとスティーブンです。」
「御三方は不思議ですね。ああなったダイヤ様はクラブ様もハート様も我々も手が出せない。
なのに、なんとなく安心して任せられるとクラブ様が判断なされた。
私も、その気持ちがわかります。」
「それは…… きっと私達が信じているからです。このロリータの力を。
そして私は知っています。拒否する人もいらっしゃることも。」
「ナナミさん……」
私は、思わず立ち止まる。
「私はロリータに人生を何度も変えてもらった。
でも皆が皆そういうわけではない。人によって考え方は違う。
それを尊重する事。今からもダイヤ様に押し付けに行こうなんて考えてません。
ただ、私達の考えを、知っていただきたかったんです。
私達は様々な事が折り重なって今に至ります。決して楽な道のりではありませんでした。
ダイヤ様にも、国民が一人ひとりなにかに打ち込み、宝物を持っている。それをわかっていただきたいと思ったんです。」
カガミさんは驚いた顔をしていた。
私はとても熱く語ってしまったので途端に身分の違いや、気恥ずかしさが勝ってしまい慌てた。
「す、すみません!!!なんだか私!」
「ナナミ…さん。カガミは今、とてもその、驚いているというか。
言葉が難しいのですが、ダイヤ様と対等に話していただいているのが、一個人としてはとても嬉しく思っています。
先程声を上げていただいた女性もそうですが、皆さん私達と身分など関係なく話してくれようとしてくださっている。そんな事今まであるはずもなく。
クラブ様もハート様も、ダイヤ様に対等な友人などが居ないことをとても悲しんでおられました。
私も、騎士という身分ながら仲良くなるよう命を受け努力はしてきましたが、限度がありました。」
「そうだったんですね。」
カガミさんは微笑みながら、剣を腰から鞘ごと抜き何故か右下においた。
私達はわけがわからず驚いていると。
「騎士ではなく一個人、カガミとしてお願いです。ダイヤ様とお友達になってくださいませんか?」
剣を抜いたのは騎士ではなく、一人の人間として話すためにだ。
騎士にとって一番大切なものを置いてまで。私達に伝えてくれたんだ。
この方はとてもとても優しく、そして誠実だ。
「剣をお持ちください。気持ちはわかりました!伝わりましたから。」
「ありがとうございます。」
カガミさんが剣をしまっていると、すっと、スティーブンさんが一歩前に出た。
「大切なんですね。ダイヤ様が。」
「はい、幼き頃から縁があり、最初は遊び相手としてこの城へやってきました。
ダイヤ様は常に孤独で、姫という立ち位置から考えれば当たり前なのかもしれませんが、
いつも寂しそうに、クラブ様やハート様を待っておいででした。
私も、将来的には騎士となるべく訓練もあり、ずっとご一緒出来なくて。
よく喧嘩もしましたね、その頃は。」
「今は、どうなんですか?」
「……騎士になってしまってからは友だちじゃないと言われてしまいました。
仲は良かったんですけど、一線を引かれていると言うか。
そうせざるを得ないのはわかってました。でも、少し、今度は僕が寂しいというか。」
スティーブンさんは少し考えて、カガミさんに言った。
「僕、それ伝えたほうがいいと思います。」
「え!?」
「凄く大切で、身をわきまえなきゃならないのはわかります。
でも、また仲良くしたいって気持ちはカガミさんの中で無くしたくない気落ちだと思いました。
大丈夫です。今日は幸運な事に僕らもいますから。
それに、対等、なんでしょ?僕達は。」
スティーブンさん。カガミさんの気持ちをしっかりと組んであげて凄い。
カガミさんは少し、嬉しいそうにでも泣きそうになりながら「はい」と答えた。
「あの、聞いてもいいですか?」
リーリが珍しく声をあげた。
「はい、なんでしょうか?」
「私の意見なのですけど、ナナミさんのお気持ちと少しそれてしまうんですが。
ダイヤ様って美人だからロリータ、似合うと思いませんか?」
「へえ!?」
「いや、どうお思いですか?カガミさん!」
三人の視線が一気にカガミさんにベクトルが向く。
一気に汗を垂らして焦っているカガミさんは口をあわあわさせている。
「……絶対、お似合いになると。」
「ですよねー!私もそう思ってます!ナナミさん、それはお伝えしてもかまいませんか?
無理強いはしません!お願いします!」
「そう、ですね。それはいいと思います。」
「……! ありがとうございます!カガミさん!伝えましょうね!」
「ぼ、僕が!?」
「はい、だってダイヤ様をずっと見てきた方ですから。説得力が違います!」
「それはそうですが……」
「じゃあ決まりです!行きましょう!」
こんな生き生きと提案出来るようになったんだな、リーリ。なんだか嬉しく思う。
「部屋はすぐ近くです。参りましょう。」
全員の足取りは明らかに変わっていた。
個々に思うところは違えど、ダイヤ様のためにというところは合致したからだ。
やがて、とても可愛いピンクの紋章が装飾されている扉の前にやってきた。
「こちらが、ダイヤ様のお部屋です。あの、僕から最初にお話してもいいでしょうか?」
「はい、その方がいいと思います。」
「ありがとうございます。では」
カガミさんは黄金のドアノックを握り、ドアを叩いた。
「ダイヤ様、カガミと、先程のろりいたの制作者の方々です。
少しお話させていただけませんか?」
沈黙。それはそうかと思ったが、そっと扉が開いた。
「カガミ、その人たちなんで連れてきたの?」
「ダイヤ様にお伝えしたいことがあると言うことで、国王の許可も得ています。」
「お父様が?」
「はい、少し、お話されてはいかがでしょうか?」
「……わかった。」
ダイヤ様が少しうつむきながら扉をあけてくださった。
「入りなさい。カガミ、メイドに紅茶を人数分出させて。」
「伝えます。」
「貴方の分も、いれるのよ。」
「……はい。」
カガミさんが近くのメイドに話している間に私達は部屋に招かれた。
中をみて私はびっくりした。
天蓋があり、ぬいぐるみに囲まれたベット。
クローゼットには布の着るものが何枚もずらりと並んでいた。
そう、私の部屋に似ていたんだ。
次回予告!
ついにダイヤ様と話す七海達。
ダイヤ様の本当の気持ちとは……!?
そしてカガミは気持ちを伝えられるのか?
第三十一話 ご希望はなんですか?
お楽しみに!




