第三話 材料は全て揃いますか? (7月11日更新)
私の名前は、石田七海。34歳。
今のこの夢みたいな状況を少し飲み込み始めている。
ここはマロン村。
どうやら私はこの世界に転移したらしい。
信じがたいがそうみたいだ。
この村は30人ほどの小さな村で、自給自足でみんな生きてる。
ここの人間の服装は、ねずみ色のボロ布を服のようにしているものだ。
ワンピースになっていて男女問わずソレを着ている。
かろうじて靴は履いているが、地味な服装だ。
村に自然以外の色がないのだ。
その中で私の存在は異質だろう。
桜色の渾身のロリータ姿。
服の概念がない世界には珍しいようだ。
今、村は私のロリータを求めている。
私はこの服の概念がない村で、ロリータ服を作ることになったのだ。
東京ではひとりぼっちだった私も、ここでは英雄だ。
お気に入りの桜色のロリータスカートをひるがえし、歩くだけで人々の視線が集まる。
まるで昔に戻ったみたいだ……素直に嬉しい。
自然と足取りも軽くなる。
村長のギューはすぐに家を用意してくれた。
中はシンプルな部屋で、ベット、机、椅子、ちょっとした棚がある。
広さはそこそこあって、型紙を広げることも出来そうだ。
木造の家なんてファンタジーだなと思っていたら、ギューが話しかけてきた。
「何か足りないものがあれば言ってくれ。できる限り用意をしよう。」
「ありがとうございます、ギュー。」
「七海殿の為、ロリータ?服の為。我々も全力を尽くそう。」
最初はどうなることかと思ったが、ギューともなんとかなりそうだ。
私は安堵しながら、服を作るに必要な物を考える。そうなると……。
「あの。服を作るには色々必要でして……その。布とかってこの村にあります?」
「布。これか」
と言いながらギューは自分の服のようなものを掴む。
「それなんだけど!新しいやつ!新しい布です!」
お世辞には綺麗とは言えないんでね、すみません。
でも概念がないんだもんなぁ。仕方ない反応ではあるのか。
「布を作るのは、機織り機ならあるが……」
「は、機織り機!そこから作らないと無いんですか!?」
「そうだなぁ。布を使う事が少ないのでな。」
機織り機から布を作らないといけないなんて…!?
分厚さとか大丈夫なのかしら…。こりゃ大変だぞ。
と言うか、布を使うことが少ないってどういう状況だよ!!!
「そうだ!ミシンってありますか?」
「ミシン……?」
嘘、まさか。無いとか言わない…… よね?
「あの、布とかを縫い合わせるような機械は……」
「ああ!布製品縫い合わせ機か!」
そのまんまのネーミングすぎるだろ!!!!!!
「そ…… それが欲しいんですが、ありますか?。」
「それは着るものに使うものじゃない!そんな勿体ない!」
「はい!?じゃあ何に使うんですか!?」
「テーブルクロスとか、鞄などだ!
それに、そんな高級なものはこの村には無い。」
よく見たらテーブルクロスがある。…よく出来ている!!
金色の縁に色とりどりの豪華な花の刺繍、
ご丁寧にそのまんま服に応用できるフリルまでついてんじゃないか!!!
服でミシンを服に使う頭もないなんて!考え方が違いすぎる!!
何かを縫う技術はあるが、本当に服とう文化がないんだなと痛感した。
っていうか、ミシン……のようなものもこの村にはない!やばい。
ということは手縫いでロリータを縫っていく事になる。
幸いだが、裁縫道具があるのは助かった。
これも無かったら話にならなかったよ……
だとしてもピンチはピンチだ。
どうにかしていくしかない……
だって私は、あんな大見得張ってロリータを作るって言ったんだから……やばいよ!
夢見たいー!なんて言ってた瞬間は儚く散った。
ギューは私の焦りに気づいた。
「大丈夫か?ナナミ殿。」
「え…… あ。」
…もう腹をくくるしかない。
私はやると決めたんだ。必ず。
「とりあえず、機織り機のある場所まで案内していただけますか?」
「もちろんだ、こちらだ。」
私は出来ることからしていくしかなさそうだ。
でもこの一歩は無駄じゃない。そう思うようにした。
マロン村は穏やかな村だと思う。大きな農園もあるし、食堂がいくつかあるようだ。
人々も緩やかな時間を生きている。子どもが走っていく。それを笑顔で見ている大人。
争い事なんておきなさそうな、みんながリラックス出来る場所だ。
素敵な所だなと思いはするが…みんなあの布を着てるんだよなぁ…。
ビジュが!!!!!!ビジュが悪いよ!!!!!!
服というものが当たり前だと思っていたからこそ、違和感のある風景。
でもここの村の人は疑問にも思っていなかった。
しかし、話していたわかった。今までそんな概念など無かったのだから仕方ない。
なんせミシンを服に使わない思想だもんなぁ。
もし…みんなに私のロリータを着せることが出来たら。きっと映えるだろうな。
自然の中、ピクニックなんかしたら最高に可愛いだろう。ロケーションは完璧だ。
芝生の上で白い布を広げ、サンドイッチをみんなで食べるの。
そこにはロリータを着た人の
フリルがひしめき合っていて、美しいんだろうな。
早くそんな姿を見たいと私は素直に思った。
どんどん進んでいき、私は村の奥の林の中にある家に連れて来られた。
緑の屋根のファンシーな家。
か、可愛いーーー!これだけで映える。
この村はどこを切り取っても絵画になる場所だと思う。
いい場所だ。いい場所に来た。
いやいや!今は布!
「この家に機織り機を持っている者がいる。」
「ギュー、ありがとうございます。」
緊張しながら扉をノックする。すると可愛らしい声でハーイと聞こえた。
扉が開くとそこには、若い女の子がいた。
可愛らしい顔立ち、キラキラ輝く金髪のロングヘアー。
目は緑色で吸い込まれそうな美しさだ。
めっちゃ可愛い子が出てきたーーーーーーーーー!!!
私を見てハッとした顔をする。
「ナナミ様!?」
可愛い声で私の名前を呼ぶ。
「ナナミ様!?え、やめて!その様って何!?」
「いえいえいえ!服をお作りになられるんでしたよね。聞いております。」
ずずいとギューが前にやってきて、彼女に言った。
「そうだ、その事でそなたの家に来た。」
「村長!はい、私が出来ることならなんなりと。」
は、話が早い!村長の力が強い。すぐに言う事聞くんだ!改めて村長の偉大さを感じた。
それに、私が有名になるのが早すぎる!戸惑いはあるが、話を進めいくしか無い。
「あの、ここに機織り機があるって聞いて来たの。見せてもらえないかなって…」
「はい、ナナミ様!どうぞこちらへ!」
私は彼女について家に入る。すぐに椅子に座った老婆と目が合う。
同じ金髪に緑の目に親族なんだとすぐにわかった。
「リーリ。お客様かい?」
「うん、うちの機織り機を見にいらしたの。」
「そうかい、お客人、ごゆっくり。」
私は会釈をし、彼女に導かれ奥の部屋にいく。
そこには立派な機織り機が合った。実物を見るのは初めてだ。
木製の博物館で見たことあるみたいなやつだ。
「こちらがうちの機織り機です。この村の布は全てここで作っています。」
「全て!?」
「はい。ここにしか機織り機がないもので。」
よく見ると、生成り色の布が少しだけ並んでいる。
これが村のみんなが着ている布。
「生成り色…」
「生成り色?」
「素材そのものの色のことよ。なかなかの布ね。」
「ありがとうございます!」
好意的に取られてしまった。
確かに生成色のロリータはあるんだけど…。色がないのは寂しいなぁ。
「昔はおばあちゃんが織っておりましたが、今は私が引き継いで織っています。」
「そうなんだ。えーと…」
あっと言って、胸に手を当て彼女は言った。
「リーリと申します。ナナミ様。」
「その様ってのやめてくれないかな?ちょっと緊張しちゃう。」
リーリは少し考えて、ニコッと笑い
「はい。ナナミさん」と答えた。
その微笑みに女の私でもキュンとしてしまう。
不思議な子だ。
「で、服に布がいるという事でしょうか?」
「そうなの。それも大量に。」
「なるほど。」
リーリは私のロリータをじーっと上から下まで見る。
とくにフリルのあるスカートが気になったようで。
「ちょっとみてもいいですか?」
「はい。」
「し、失礼します!」
スカートをそっと触れられる。どんなふうに布が必要なのか、一つ一つ確認していってるようだ。
「確かに沢山の布が使われている様ですね。不思議で、
なんて言えば良いのか…… 素敵な布です。」
初めて見るロリータに頬を赤らめて褒めてくれている。
この服は私のもっているロリータの中で、
とびっきりのお気に入りのものだ。嬉しくもなる。
「ありがとう。」
「で、布。ですね!」
「同じ色でもいいんだけど、大量の布を用意してほしいの。どう…でしょう?」
「村のため、人のためですから。喜んでお引き受けしますよ。」
「本当!?ありがとう!助かる!」
私はあまりの嬉しさに手を取って喜んだ。
リーリは驚いた顔をしたがまたニコッと笑ってみせた。
一歩、進めそうだ。
次回予告!
布を機織り機で作っている少女、リーリと共にロリータを作り始めた七海。
一から全て作っていかなければならない状況、不安を感じる中、リーリとの会話で気づく事があって……
そう私は、諦めが悪いんだ。
第四話 デザインは決まってますか?
お楽しみに!




