第二十七話 30着作れますか?
正直フィーは才能に溢れているとはわかってはいた。
しかし、目の前でロリータに打ち込む姿を見てそれはさらに強くなった。
本当に私を見かけただけでこんな細かなことまでしかも手縫いでしていたなんて信じられない。
私達は喜んでフィーにありとあらゆる技術の共有をした。
布製品縫い合わせ機での制作。
デザインの幅、ロリータの種類。アクセサリー等の装飾。
布の作り方や、靴の種類。
チームの役割分担など。
その代わりにフィーも様々な事を教えてくれた。
フリルや生地の仕入先や、刺繍の種類。
彼女の得意なパールの編み方。
互いに利益のある情報交換があったお陰で作業はかなり加速した結果になった。
村長のギューが緊急で布製品縫い合わせ機をもう一台用意してくれ、私達はそれぞれのロリータ制作に急いだ。
村のみんなは新しい技術の練習をしてくれたり、仕入先に赴いてくれ沢山の材料が集まっていく。
「本当にこの村の……SAKURAの皆様は頼りになりますわね。素敵ですわ。」
「はい。私もとても助かっています。」
「この調子なら間に合うと思いますわ。こんなに協力していただけるなんて。」
「私もなんとかなりそうです。フィーのおかげです。」
「ナナミ。私は一人でしたので井の中の蛙。こんなにロリータに幅があるなんて。
まだまだ勉強することが多いと気づきました。とても感謝していますわ。」
フィーの瞳は、新たな事に、ロリータに出会ってキラキラ輝いていた。
こんなに好きでいてくれてるんだ。
絶対大丈夫だ。そう確信させてくれる。
「ナナミさん、新しい布が出来ました。」
「リーリ!ありがとう。わあ!花が入ってる。編み方、何か変えた?」
「ふふふ。王都の生地を見て、編み方が違ったり、柄が入っていたりしたので
私なりにアレンジしてみました。可愛く出来ました!」
「え!貴方見ただけで!?凄いですわね。」
「フィーさんだって。私も負けられません。」
リーリの新しい布を見て、私達にも変化があると嬉しく思った。
このブランドの可能性がまた広がったと。
全ては出会いの、人の優しさで出来ている。絶対に手放さないでいこう。
「みなさん、休憩されませんか?私も疲れちゃいました。
新しい茶葉を手に入れたんです。どうでしょう?」
「ありがとう、フィーも少し休憩したほうがいい。そうさせてもらおう?」
「……そう、ですわね!ありがとうございます。」
リーリは嬉しそうにお茶を入れに行った。
膨大な数の発注だ。焦らずしっかり休憩しながら着実にやっていかないと。
「少し、外の空気を吸ってまいりますわ。」
「わかりました。」
フィーは可憐に立ち上がり、部屋を出る。
久しぶりの一人。
ここまで怒涛だったから少し落ち着いて私も息をはく。
女王様に認められて、これから謁見に行く。
そのために私は自分のすべきことをしていくだけ。
それがどれだけ光栄で、誇らしく、素晴らしいことか、私は知っている。
みんながいたからここまできたんだ。
「忘れるな。一人じゃないんだ。」
私の大切な事。言葉にしてみる。
人は一人では生きていけない。
一人で出来ることはそりゃあ、ある。
でも誰かに見てもらって笑顔になってもらったり、意見をもらってまた前に進める。
感情は作れるけど、もらうことだって出来る。それが力になる。
なんだかそんな気持ちをニヤニヤしながら、
でも大切に噛み締めているとリーリが香りのいい紅茶を持ってやってきた。
「あれ?フィーさんは……」
「外の空気を吸いに行きました。見てきますね。」
「一緒に行きます!」
「はい!」
探さずとも外に出たところにフィーはいたが、私達は咄嗟に姿を隠した。
フィーがスティーブンさんと真剣な顔で話していたからだ。
なにを話しているんだろう。少し聞き耳を立ててしまう。
「僕は、最初。貴方がどんな人かわからず怖かった。
大切な仲間を、ブランドを奪おうとして来た人と聞いていたから。」
「そう、ですわよね。やり方が少々間違っていましたわ。」
「すみません、すごく。怒っていました。すごく。」
「こちらも、ごめんなさい。」
「でもその……。 貴方のロリータを見て思いました。
まだまだやり方があるんだって。優しいロリータだって。感じました。
貴方は笑顔であの場所で立っていた。とても、綺麗だと思いました。
そして、悔しいと、思いました。」
スティーブンさん。そんな事を考えていたんだ。
最初は「必ず、勝ってください」と真っ直ぐな目で言ってきてたもんな。
それがロリータを見て、評価して、悔しいと思って、それでも私を信じてくれていたんだ。
「そこで思ったんです。対等でいたいと。今まで僕の世界はナナミさんに助けられ、支えて、
村のみんなが全て、とても狭い世界で創作していたんだと思い知りました。
だから、今声をかけました。受け取ってください。」
そう言うと、スティーブンさんは靴を差し出した。
フィーのロリータにぴったりな白の丸い靴。リボンの真ん中にパールを縫い付けられたもので今までのスティーブンさんが作っていたものと少し違うものだった。
「まあ!なんて……綺麗なんでしょう。いただいていいんですの?」
「僕なりのけじめでもあるので受け取ってください。敵から、仲間になった証?というか、その。」
フィーも私達も思わず笑ってしまった。
ばっとスティーブンさんがこっちをむいた。
「ちょ、ちょっと!!!二人とも!」
「す、すみません!その、頑張って話しているスティーブンさん、レアすぎて。その……」
「ああああああああああ!もう!」
「スティーブンさん、可愛いです。素敵です。」
「リーリ!あなたまで!!!!」
「スティーブンさん!」
振り返るとそこには靴を早速履いた可憐な少女がいた。
「可愛いですか?」
私とリーリはスティーブンさんの顔をみて、返事を促した。
顔を真っ赤にした少年が大きな声で伝えた。
「当たり前です!!!!」
次回予告!
ついに謁見の場にSAKURAとフィーは征く。
そこで新たな問題がおこる。
でも、そんなのどうすればいいの……?
第二十八話 変わることは怖いですか?
お楽しみに!




