第二十二話 諦めてしまいますか?
少し考えればわかる話だったのかもしれない。
ここは服という概念がない国だ。
そんな国で急にロリータに興味を持って投票する人間なんて、
居ない。
三時間、私達は橋の上でただ立っていることしか出来なかった。
王都の人々はクスクス笑ったり、見向きもしない。
私からするとここは東京と変わらない。だから驚きはなかった。
「どうしてですの?だって私達は……」
「フィーさん……」
「みなさん!悔しくありませんの!?こんな……」
「落ち着いて、フィーさん。」
泣き出すフィーをみんなが慰めている。
無理もない、あれは昔の私だ。
認めてもらえない、自分の好きをバカにされたり見向きもされない現実に耐えられない。
私は、みんなの絶望感とは違う気持ちだった。
ここに、私がいる。
それだけでいい。
いつか誰か一人にでもわかってもらえるなら。
今の私は自然と冷静にどうしたら見てもらえるかを考え始めていた。
「ナナミさん、私!帰りますわ。」
フィーが泣きながら私に訴えてきた。
「負けたんです。こんな…… こんな!」
「フィー」
私はまっすぐ王都の人々を見渡しながら今の気持ちを伝える。
「俯いては、素敵なロリータがみなさんに見えないですよ。」
「ナナミさん、でも、」
「堂々としていてください。貴方はこのロリータに誇りがあるはずです。
大丈夫。きっと誰かが認めてくれます。時間はかかるかもりれませんが。」
「……どうして、こんな状況でも諦めないの?」
「もう、諦めるのはやめたんです。一人じゃないから。
フィーだって一人じゃない。私達も、グリスさんもいる。」
フィーが顔をあげると、グリスさんはにっこり笑ってみせた。
「いつまでも、お供いたします。フィー様。」
グリスさんは優しくハンカチを主に渡す。
フィーはすぐに涙をぬぐってみせた。決意を固めた顔になったのがわかった。
そして前をしっかり見た。
「申し訳ありませんでしたわ。私も、諦めません。
ナナミさん、無様な姿をお見せしてしまいましたわね。」
「いえ、それより、この状況をどうしたらいいか考えませんか?
このままだと変化はないと思うので。」
「そうですわね。なにか、ロリータに興味を持っていただくきっかけになるような……」
偉そうに言っておきながら私には策はなかった。
それがわかっていたら東京でだってやっていけたんだ。
みんながいるんだ、頑張ってきたんだ、ここまで。
最高のライバルとここまで来たんだ。
なんとかしないと……
どうすれば…… どうすれば……!
その時だった、リーリがすっと前に一歩進んだ。
なにかいつもと違う、そう思った。
「リーリ……?」
リーリは目を閉じ、ひと呼吸した。そして、
春風のような笑顔を見せた。
右足から始めるステップを踏む。
見たことのない踊りだった。
急に踊りだして驚いたが、スカートがふわりと舞う姿を見て、
私は最初にロリータを見たあの日を思い出していた。
キレイだ。
「そうか。ナナミさん、少し僕に時間をください。」
そう言ってスティーブンさんは走ってどこかに行ってしまった。
二人にはなにか考えがあるんだ。
「フィーさん、ナナミさん。踊りましょう。」
リーリはそう言って手を差し伸べた。
私達は、どうなるかなんて今はわからないけど踊ることにした。
二人は同じ踊りをしていたので、おそらくこの国の踊りなんだ。
二人はすぐに私にもその踊りを教えてくれた。
三人はすぐに笑い合いながら踊りに夢中になった。
スカートが舞い上がり、袖がひらひらと動く。ロリータが笑ってる。そんな気がした。
すると、王都の人が数人集まってきた。
「なんだ?あの布は。」
「なんだかキレイに見えるわ。」
「あれはなんなんだ!」
すかさず、グリスが人々に注目されるように話しかけてくれる。
「どうぞ、ご覧ください!こちらはロリータというお召し物でございます。
ただいま素敵なロリータを皆様にお見せするためにここにおられます
フィー様、ナナミ様、そのご友人が春の祭りの踊りをしておられます。
少しでもご興味ある方はどうぞ、ロリータをご覧になってください。」
「すごい、人が集まって……!」
「あなたのおかげよ、ありがとう、リーリ。」
「いえ、私はロリータの素晴らしいところの一つのひらりと舞う姿を皆さんにお見せしたくって。」
数人ではあるが、人が集まり私達のロリータを見に来てくれた。
フィーと私は各々のロリータを見せながら魅力を伝えていく。
リーリは人を呼ぶために踊り続けてくれた。
そしてついに、
「私は、こちらに。」
そう言ってフィーの青い花瓶にバラが一本入った。
「あ、ありがとうございますわ!」
「ぜひ、私もこんなロリータ?が着たいわ。」
「その際は私に作らせてくださいまし!」
「まあ。うれしい!」
ついに投票が始まった。
自分のことのように嬉しい。負けてられないな。
「ナナミさん!」
「スティーブンさん、……え!みんな!?」
そこにはマロン村のみんながいた。
笑顔で、でも走ってきたのかみんな息があがってる。
「どうして。」
「僕達が人々を引き寄せます。
ナナミさんとフィーさんは自分のロリータを説明するのに大変でしょう?」
「スティーブンさん、みなさん……!ありがとうございます。」
「リーリが踊らなかったら考えられなかった。こちらこそ、ありがとう。
じゃあみんな!ロリータを存分に王都の人に見せよう!」
「おー!」
橋の上は祭りが始まったように賑やかになった。
みんなの活気と笑顔とロリータが場を一気に華やかにする。
これまで見た景色の中で一番美しいかもしれない。
「ナナミの仲間は、なんて心強いのかしら。」
「グリスも、素敵な仲間ですね。」
「お互い恵まれていましてね。」
「はい。」
向こうから沢山の人がやってくる。
ここからが勝負だ。
次回予告!
王都の人々に興味を持ってもらえ、勝負はやっとはじまった。
そこにある人物がやってきて…!?
第二十三話 困惑ですか!?
お楽しみに!




