第十九話 勝負ですか?
「勝負ですか!?」
帰ってきた私はすぐにリーリとスティーブンさんを呼び出し緊急会議を開いていた。
「えっと、どういった話になったんですか?」
「それが……」
私はあの子、フィーとの話を思い出す。
「私はナナミ、貴方を超える!
勝負いたしましょう!どちらがロリータを作るのにふさわしいか!」
「待ってください!いきなり勝負と言われても……!
それにブランドを賭けて勝負だなんて。」
「あら、自信がないのかしら?」
「いや、そもそも、貴方は……誰ですか?」
「ふふふふ!私はフィー!未来のロリータを広げるもの!」
「どういうこと?」
フィーはびしっと私を指差し、自信満々に話を続けた。
「ナナミ、貴方はロリータをこの世界に広めた素晴らしい方よ!
貴方がいなければ、私だってあの ボロ布を着ていたでしょうね。だから感謝するわ。
でも!ロリータを知った今、貴方が一番のままだということにはならないわ!
そう!私、フィーが新しいロリータを広めるんだから!」
高らかに宣言する少女はキラキラして見えて、私は……
「嬉しいー……」
「は?」
「フィーさん!ありがとう!そんな方が現れるなんて考えても見なかった!
私のブランドを評価してくれて嬉しい。それに私のことも知ってくれてて!」
「なななな」
「あ、服見せてもらってもいい?気になるし……」
「ちょっと!貴方!私の話聞いてますの!?」
「あ、ごめんなさい!勝負でしたよね?」
「なんだか調子狂う人ですわ。嫌な人。」
ほっぺを膨らませたフィーを改めて見てみる。
グレージュのサラサラのロングが黒ロリータが映えて見える。
真紅の瞳に白い肌。こんなモデルみたいな子が!話しかけてきてる。そしてなにより……
「なんですの!?そんなジロジロ見ないでくださいまし!」
お嬢様言葉!!!!!!!!!!最高か?
「とにかく!ナナミ!私と勝負してくださいまし!!!」
「……わかりました!」
思わず返事してしまった。だってこんなに嬉しくて、ワクワクすることない!
この子がどうしてこんなにも勝負したいのかはわからないけど。
私が勝てるかなんてわからないけど、でも!
ブランドは譲れないから。負けられない。
「勝負しましょう、フィー。」
私はもう、一人じゃないから。
「ふふふ!ウズウズしますわ!では制作するロリータのテーマと日時を決めましょう!」
「はい。よろしくお願いします。」
「公平性を取るために、ルールを設けたいですわ。
1、ロリータの制作は一人で行う。
2、二人とも同じ布を使用する。
3、審査はロリータに馴染みのない王都アニスで観客投票する。」
「王都アニス?」
「ここから西にあるこの国の中心ですわ。貴方、本当に噂通り何も知らないのですわね。」
「面目ない。」
私そんな噂になってるの?恥ずかしいんだけど!
「条件はそんな感じでよろしいかしら?」
「はい、大丈夫です。」
「では、布の調達に参りましょう。」
「どこまで行くんですか?」
「王都アニスまで行きましょう。貴方も一度はどんな土地か理解した方が勝負にもなりましょう?
……私だけが知っているのは不公平ですからね。」
「ありがとうございます。フィーは優しいですね。」
「そ、そんなのじゃありませんわ!行きますよ!テーマも話しながら決めますわよ!」
フィーはそう言って歩き出した。
私はマロン村以外の人で初めて出来た同士との出会いに隠しきれない動揺と嬉しさを胸に、
彼女の後を走って追いかけた。
「それで、引き受けちゃったんですか?」
「はい。」
「少しは警戒してくださいよ!」
「まぁまぁ、スティーブンさん。落ち着いて。ナナミさんも考えなしにという訳ではないでしょうし、ね?」
二人が色々と言ってくれてるけど、ごめん。
考えなしです…… なんて言えず。
私は10日後の勝負に思いをはせていた。
「テーマは春ですわね。」
どんな服を作ろうかなと、王都で買った布を眺める。
驚くほどの真っ白な布。どう春色にしよう。
「ナナミさん。これだけは言っておきますけど!」
スティーブンさんが真剣な眼差しで私に言った。
「必ず、勝ってください。」
「……必ず。」
私は笑って答えた。大丈夫だ。
次回予告!
勝負の春をテーマにしたロリータを制作する七海。
真っ白な布にどんな春を彩っていくのか!?
第二十話 春色は何色ですか?
お楽しみに!