第十八話 貴方は誰ですか?
「ナナミさん!新しい注文まとめておきました!」
「ありがとう、助かります!」
「ナナミさん、新しいフリルと刺繍糸を買ってきました!」
「わあ!とっても素敵!リーリの方に回してくれるかな?」
「ナナミおねえちゃん!お散歩行ってきたよ!お洋服の宣伝もママとしたんだ!」
「ありがとう!きっと着たいって思ってくれると思う!またお散歩よろしくね!」
私、石田七海!
異世界のマロン村で、ロリータを広げるため村一丸となって【SAKURA】というブランドを立ち上げて日々服作りに奮闘中。
最初は足並みが揃わなくて大変だったけど、今は、村人みんなに役割分担をして意識を少しづつ合わせて行けている。
ここまで自分だけが大変だって勘違いしてたけど、仲間と共に一緒に頑張るんだって決めてからは誰かに頼りながら頑張ることが出来てとってもいい感じ。
「ナナミさんの新しいロリータ。とっても素敵だ。」
「ありがとうございます、ギュー村長。私もお気に入りなんです。
みんなが作ってくれたものを身にまとえるなんて、幸せです。」
ギューはにっこり微笑む。
やっぱりみんなが作ってくれたヘッドドレスとブーツに合わせたこのロリータは思い入れが違う。
白をベースに桜色のリボンを散りばめ、
フリルをふんだんに使って広がりがあるスカートに。
リーリが最近覚えてくれた刺繍で、袖に桜をアクセントでつけた。
これぞ【SAKURA】の看板だと言える仕上がりになった。
それにこれを身にまとうと、一人じゃないって確信出来る。
もう迷わない。そう思える一着だ。
「では、今日の会議を始めます!」
「はーい!」
夜になると、リーリ、スティーブンさんと私で必ず今日会ったことの共有を行う。
ケアレスミス、伝達不足をなくすためにとスティーブンさんが提案してくれた。
仕事面でも必要だけど、私にとってほっと一息つける癒やしの時間でもある。
仲間とこうやって必ず会う時間があるのは、とても重要だと感じるから。
「今日は隣町への注文がすべて完了し、配達までいけたのは良かったですね!」
「他の町からも注文が3件きましたね!以前と違って、お客様へのヒアリング係を設けたので具体的にどんな服がいいのかがわかりやすくて、効率的になったと思います。」
「これもみんなのおかげだよ、ありがとう。」
「ちょっと前だとあわあわするだけでしたけど、ナナミさんがみんなの役割分担をしてくださって、指示も的確なのでナナミさんのおかげでもありますよ!」
「えへへ。ありがとう、リーリ。」
「やっとブランドとして、回ってきた感じで安心しました。」
二人にはとても助けられている。
いいところはとことん褒めてくれるし、駄目なときは指摘してくれる。
いい関係性を築けていることに嬉しくなる。
リーリの入れてくれた紅茶を飲みながら、ふうと一息つく。
この時間がたまらなく愛おしい。
「明日は、新たな注文のもののデザイン画を書いていくね。」
「よろしくお願いします!」
よし、明日も頑張るぞ!
翌日も、その次の日も順調にブランドは稼働していた。
みんなわからないことがあったら聞いてくれるし、確認してくれるようになった。
お互いにありがとうと改善点を伝え合い、関係の品質も向上していくのがわかる。
こうやってチームは育っていくんだ。
チームで作っていく、一着はこんなにも強い。
どこにだしても恥ずかしくないものになっていく。
私のワクワクは止まらない。もっとみんなでいいものを作りたい!
その日も、いつもと変わらない忙しい時間を過ごしていた。
珍しく、村の子どものロロが泣きながら帰ってきたのだ。
ロロはお散歩をママとしながら、服の宣伝をするという仕事を任せている仲間だ。
「ロロ!どうしたんですか?」
ロロのママに顔をむけると困った顔をしていた。
「それが、ロロに話しかけてきた女の子が…」
「ナナミお姉ちゃんのロリータを真似してたんだ!」
「え?どういうこと?」
「その女の子、ロリータを着ていたんです。でもうちが作ったものじゃ無かったの。
それでロロがそれどうしたの?って聞いたら、作ったのって言ってて。」
「ナナミお姉ちゃんの真似してくれたんだって嬉しくって言ったら…
これは私のものよ!私のロリータが一番なんだから!って。」
ロロは唇を噛み締めてぐすぐす泣いている。
いつかは来ると思っていたが、
ついに来てしまったのか。
「私の真似をしてくれたんだ… 嬉しい。」
「でも!ナナミお姉ちゃんが一番だもん!」
「ロロ、ありがとう。そう思ってくれるのは嬉しい!
でもね、こうやってロリータが広まってくれたことが私は嬉しいの!」
私は本当に嬉しいのだ。
私がやってきたことでこの世界の何かが変わってきているのを感じられたから。
「ロロ、その子何処で会ったの?」
「隣町だよ…」
「教えてくれてありがとう。」
その子に会いたい。
どんな気持ちで作ってくれたんだろう。
どんなロリータを作るんだろう。
「ごめんなさい。今日少し、出てもいいですか?
デザイン画、出来たものをこちらに置いておきますね。
リーリ、ごめんなさい。少し店を任せてもいいですか?」
「はい。わかりました!お気をつけて。」
私は、いても立ってもいられず隣町にむかった。
何度かフリルの調達で付き添いで行ったことがあったのでなんとか一人で行けそうだ。
向かいながらどんな話が出来るだろうと胸が踊った。
初めて見つけた同士なんだ。
もしかしたら仲間になってくれるかもしれない。
期待を膨らませながら隣町についた。
一目でわかった。あの子だ!
真っ黒なロリータはうちでは作ったことがない。
大きなボンネットで顎下のリボンが特徴的だ。
低身長だからこそミニスカートが映えて見える。
なぜかはわからないが、その子は仁王立ちで立っていた。
「あ、あの」
「ふうん。あなたね、ナナミ!」
「はい。私が七海です。」
「ふーーーーーん。まあやるじゃない?いいロリータ!着てるわね!」
「ありがとうございます。えーと、貴方は…」
「宣言するわ!」
私にまっすぐ指を指し、少女は自信満々の笑みを浮かべる。
「私はナナミ、貴方を超える!
勝負いたしましょう!どちらがロリータを作るのにふさわしいか!」
「勝負!?」
「負けたら、ブランド【SAKURA】を頂戴いたしますわ!!!!」
「えーーーーーーーーーーー!!!!!」
「覚悟しなさいまし!」
な、なんなの!?この子!!!!!
次回予告!
突然のライバル出現!?
ロリータで対決することになったけど…
この子の目的はなんなの!?
第十九話 勝負ですか?
お楽しみに!