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第十七話 宝物が出来ましたね?

スティーブンさんとリーリは私の手をとって、奥の部屋に私を誘う。

微笑みながら何も言わなかったので、当然だが戸惑う。

こんな風に誰かと手を繋いで歩くのは久しぶりだ。なんだかこそばゆい。

今見える風景、手のぬくもり、温かな空気を大切にしたいなと思った。



「ナナミさん、テーブルを見てください。」



そこにあったものは、

フリルいっぱいの桜色のヘッドドレス

真っ白でワンポイントの桜の花が散りばめられたショートブーツ。



「……これ」

「ナナミさんがいない間、みんなで出来ることをしました。」

「え?」



そうだ、だって布だってフリルだって仕入れなきゃならない。

これは二人だけの力では出来ないことだ。



「ナナミさんが倒れて、自分たちだけで出来ることをみんなで考えました。

意識統一。それだけでも達成しなければならないと思ったんです。」

「だから、スティーブンさんと村の皆さんを呼んで、私達なりにこのブランドについて話し合ったんです。

でもやっぱりみんな考えがバラバラで話し合いは難航しました。

なんとなくやってきたからこそ、出てきたプライドや、

まだ知識不足で曖昧な人もいました。

本当にみんなが一気に意識統一なんて出来ないって、私達も挫けそうでした。」

「じゃあどうして……」

「一つだけ、みんな全く同じ気持ちがありました。それを軸にこの2つは作られました。」



全く同じ……?



「ナナミさんに元気になってほしい。それがみんなの願いでした。」



私……?



「みんな、ナナミさんが倒れた事はとても大きな事件になっていました。

小さな村ですから、誰かが倒れると村中で支える。

それがこの村の、チームのいいところです。

今までと違ったのは、ナナミさん、貴方に元気になってもらうためにどうしたいかを考え行動できたことです。」

「そこで、みんなですぐに決まったんです。ナナミさんに元気になってほしいって。

そのために何かを作り出そう、自分たちで、ってなったんです。」

「それで、出来たのが。これです。ナナミさんに作りました。」



太陽がスポットライトみたいにヘッドドレスとブーツを輝かせる。

みんなが作った努力の結晶。何よりも美しく見える。

どうして……

どうしてこんなにもここの人たちはあたたかいのだろう。

それを象徴するような作品に私は胸が熱くなっていく。

今まで感じたことのない、人からもらったこの感情になんと名前をつけたらいいんだろう。



「これまでが僕たちの、出来たことです。」



……そうか、みんな。

私を待っていてくれたんだ。



「この2つに似合うロリータをデザインするのは、ナナミさんしかいません。

どうか、作ってくれませんか?一緒に。」



私は不甲斐ないリーダーだったのに、

あんなひどい事を言って、勝手に潰れたのに、

信じてくれていた。一緒にしたいと言ってくれているんだ。



「作らせてください。私達のロリータを。」



それから私は、リハビリも兼ねて自分のロリータを制作し始めた。

これは私にとって大事な一着になる。

みんなの思いも乗せる気持ちで、そこに自分の大好きも沢山詰め込めるように。

そうだ…… こうやってみんなで作っているんだ。



私は一人なんかじゃない。




このブランドが、この村の人が、私の仲間なんだ。

そして作り出されるロリータはみんなの力で出来ている。



「ありがとう。」



一人、自然と口にした。

この言葉を伝えよう。このロリータと、みんなが作ってくれた宝物と共に。



カタカタカタカタ

ミシンを踏む音。

今までは無機質に聞こえていたけど、今は心地よいリズムに聞こえる。



私、いいリーダーになりたい。

みんなともっとロリータを作っていきたい。

気分は晴れ晴れ。きっと明日にはロリータは完成する。



もう一度、ここから。


次回予告!

ついにブランドを立て直すため村人と向き合う七海。

順調にいくかと思いきや、まさかのライバル登場!?

「え、盗作!?」



第十八話 貴方は誰ですか?

お楽しみに!

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