十一話 私、間違えましたか?
村人の意見が割れることは、それからも頻繁に起こった。
わかってる。これは善意だ。
知識を教えられ、自分たちで行動できるようになったのだ。
一人ひとり、考えが違うのは当たり前で、とても自然な事だ。
だが、私の熱量や、私が作りたいものを伝えきれておらず
解釈違いな行動で言い争いが起こってしまう日々が続いた。
その度に、これも当たり前だがみんな私の所にやってくる。
そして聞くのだ。
「「どっちが正しい!?」」
私は、少しづつみんなに自分のしたいことややってほしいことを説明しながら、
どちらも正しいと答えた。
村人たちはそれに納得してくれる。
しかし、次の日には、「じゃあこれはどうだ!と違う角度から意見を求めてくる。
決断の連続。同じ説明。
私は、少し疲れていたのかもしれない。
ここらで一度、みんなと意識統一しないと身が持たない。
ぐるぐるとどうしたらいいかと頭を悩ませていた。
そんな日々がもう何日も続いていた。
「村のみんなの、意識統一したいと思ってるの。」
昼下がり、リーリとスティーブンさんを自室に呼び、
紅茶を飲みながら提案をしてみた。
「それはいいと思います。みんな、どうしたらいいかわからないのに動き出してしまってるのがあまり良くないと思います。」
「毎日、質問攻めでナナミさんも困ってるし。まぁ、僕たちもしてますけど……」
「いやいや、いいんです。誰も間違ってないから困ってて。
どうにか、みんなで同じ方向に向けたらいいと思うんだけど。」
「すみません、ナナミさん。同じ方向ってどういった意味合いなんでしょうか?」
リーリが私に真っ直ぐな質問をぶつける。
なぜだ。言葉に詰まった。
私は、その問いに答える言葉が曖昧であることに気がついた。
でも、答えないと何も始まらない。
「ごめん、ゆっくり答えるんだけど。
その、一つのものを作るのにデザイン画があるでしょう?
それに沿って、みんなが材料に合ったものを集めていく。
そしてそれを一つにしたものが、一枚のロリータになるの。
今、そのデザイン画が今たくさんあって、みんな作りたいものも違ってるの。
だから、私はみんなで同じものを作りたいの。
言うことを聞いてほしいと言うか。自分勝手に動かないでほしいなって。」
言葉を選びながら二人には素直に話しておこうと思った。
最近の困惑や少しの苛立ち。
どうしたらいいのか私にはわからないから。
「みんな勝手に材料を買ってきたりして。勝手に喧嘩して。
全部私に聞いてきて。本当に困ってるし、つらいし。
なんかブランドをやるって思ってたのと違うっていうかさ。
毎日同じ事の繰り返しで、ちょっとみんなワガママで困る。
一人でやった方が、早いかもね。あはは。」
ちょっとした愚痴をこぼしたもんだと思ってた。
ふと顔をあげると、いつになく真面目な顔をしたスティーブンさんと目があった。
ちょっとした愚痴、なんて思ってたのは私だけだとすぐわかった。
まずい。そう思った瞬間、
「ナナミさん。」
その声はいつもより声色が違って、私はびくっとした。
「皆がやって良かったと思うものをたくさん生み出したい!
そんな皆とブランドを作りたい!
そう、この前おっしゃってました。そう言った。そしてブランドを作りました。
なのに、どうしてそんな事をおっしゃるんですか?
みんな貴方といいものを作りたいと尽力してるんです。自分勝手じゃない。
確かに意識統一は大切です。デザイン画通りにすることも。
でも今の言い方だと、自分の意のままに動いてくれる人になってほしいって事に聞こえます。どうですか?」
「あ、えっと……」
え、そんな怒ること……?
「何人もの人をまとめることは難しいことなのかもしれません。
苦悩もあるとは思います。
でも、そんな諦めた言い方。ちょっと……残念です。
本当に一人でやりたいんですか?」
待って。
「そうなら仲間として、とても悲しいです。
ご一緒したくてここまで……」
待ってお願い。これ以上は。
「スティーブンさんも落ち着いてください。
きっとナナミさんもお疲れなんです。」
「だからって言っていい事と悪い事があります。」
「でも……」
全部
わかってる。スティーブンさんの言ってることも。
でも!!!今の私は、
「わかってますよ!!!!!」
限界、だ。
「じゃあ貴方がやりますか?この役目を!
出来ますか?知識もない貴方が!」
「ナナミさん!?」
どうして否定されなきゃならないの?私こんなに頑張ってるのに!
「私しかできないんです!私がやらないと!
換えが効かない。そんな立場にあるんです!
わかりますか?私の気持ちが!!!!!貴方に!
わかったようなこと!言わないでください!!!!」
「ナナミさん!!!」
リーリの声で我に返る。
あれ、私、今何を……
部屋がぐにゃりと廻る。
なんだ……?
瞬間身体に衝撃が走る。
バタン、音が聞こえた。
あれ?なんの音だ?
なんだか、身体が痛いような……
「ナナミさん!?」
「わ、私お医者さん呼んできます!!!」
二人の慌ただしい声が聞こえてくる。
それが遠く遠くなっていく。
「ナナミさん!しっかり!!!」
どうして私は。また一人……
次回予告!
倒れてしまった七海。
村医者のエスターと話す事になった。
「ナナミさん、とりあえず薬を飲んで。ゆっくりして欲しい。」
休むことに抵抗のある七海にあることを言って……。
十二話 また一人ですか?
お楽しみに!