表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/54

第十話 リーダーは大変ですか?

マロン村。山の奥地にある豊かな村。

そこは今や、私達のロリータブランド【SAKURA】の製造地となっていた。



私達はあの日、【SAKURA】という一つのチームになった。

私だけではない。村全体でこのチームは出来ていて、そのリーダーが私なんだ。

責任重大。一生に一度もあるのかというこのチャンス。

なんとでも成果を上げて行かなければならない。



噂を聞きつけたように、

買い出しに行った村人のロリータを見た隣町の人から

ジャンジャン衣服制作の要望が相次いだ。

嬉しい悲鳴で、石田七海。今日も頭がフル回転中です!



やばいよ……。

生産量を増やす手を考えなくては……。

まずリーリだけが布を生産する事は避けたい……

スティーブンさんだけが靴を作る事は負担がでかすぎる。



仕入れの役割分担も決めなきゃならないのに。

あ!布縫い合わせ機も一台じゃ絶対無理!

えっと……どれからやればいい?

そもそも、大見栄張って村でブランド作るとか言っちゃったけど本当にできるの?

拠点はこの部屋…… うち?

そもそもみんなにロリータの知識も教えないと……。



あーーー!やることが多い!!!

あの…えっと…!!!!!!



「ぎゃあああああああああ」

「わわわ!ナナミさん!?」

「どうされました!?」



昼下がり、リーリとスティーブンさんと今後について会議をしている。

この三人はリーダーの核になる人間だからだ。

私の焦りとは裏腹に、のほほんと紅茶を嗜んでいる二人。

そりゃそーだ。全体が見えているのは私だけだから…… あはは。



「ブランドってどうしたらいいのでしょう。」

「僕たちにはわからないことばかりだけど、

きっと楽しいことの連続ですよ!ね?ナナミさん!」



ま、眩しい!!!

とんでもなく眩しい!!!!

無知が故のキラキラだー!!!

こっちはめっちゃパニックだってのにぃ!

しかし、彼女たちは悪くない。

みんなには、こちらからお願いしてロリータについて頑張ってくれてるんだから。

私が一から教えていかないといけない。



「あの、まず二人には勉強会をさせてほしいなと。」

「はい!」

「わあ!嬉しいです!」

「今からですか!?」



ずずいと来る二人に圧倒され、私はニヤリとしながらも驚く。

やるか……!



「で、では。まずはロリータの種類から。」

「確かに、今まで作ったロリータは同じようだけど、感じが違うと思う時がありました!」

「例えば、リーリに作ったそのロリータは甘ロリ。可愛いデザインで作っています。

何人かに作ってますが、黒と白のロリータはゴシックロリータという括りになります。」



私の10年以上の知識の一部をゆっくりと伝えていく。

段々正しいのか?とは自分を疑うが、私だけが教科書なのだ。

私がしっかりしないでどうする。

私、責任重大だなぁ。



時は流れていき、重大な事が進んでいく。

私達は伝言ゲームみたいに、村人たちにロリータの知識を教え合っていった。

その間に私は村人の役割分担や、機材手配をしていく。

全ての作業や、共有が同時進行。

情報の嵐に私はかなり頭を悩ませた。

でも順調。なんとか順調。

綱渡りみたいな状況だが、上手くいっている。ように感じている。



この時までは。




最初におかしいなと思ったのは、今まで仲良くしていた村人の意見が割れた事だ。

休憩でもと自室を出て、外の空気でも吸おうとして扉を開けた瞬間



「こっちのフリルの方がいいに決まっている!」



ここに来てから聞いた事の無い感情が乗った叫びに思わず身体が強張る。

声の方へ目線をやると、買い出しチームの男性達が一斉に私の元へわっとやってきた。



「ナナミさん!」

「「どっちのフリルがいい?????」」



そこには二種類の赤色のフリル。

一つは林檎みたいな鮮やかな色。

もう一つはワインレッドみたいな深みのある色。

どちらも素敵なフリルだけど……。



「あの…… どういった意味合いなのかな?

今すぐ赤いフリルが必要な感じではないのだけど……」

「いや、いずれは必要だろ?」

「どちらが優れたものを買い出しできるかしているんだ!」

「俺のフリルのほうが、きれいだ!」

「いや、こっちの方が色に深みがある!」

「「ナナミさん!どっちのフリルがいい?????」」



唖然としてしまった。

まだ必要な物を考えて買ってきたのではなく、自分たちの遊び感覚で選んできたってこと?

私は戸惑って目線がぐるぐるとしてしまった。

私はそんな指示はしてない。

でもこれは…… 善意の行動。

ロリータをよくしようとしてるだけ、私と同じことを考えてくれている。



でも…… 

私は、みんなの熱意と私の熱意は統一をさせていない。

当たり前の事なのだ。

働いていたロリータの店でも、熱意の違いで売上が如実に違ったりしていた事を思い出す。

でもその人達だって本気ではあるのだ。

ロリータが好きというスタートが一緒でも、ゴールは人それぞれだ。



だから、こうなる。



わかっていることだった。

だから今はどうしようもない。

私は、ぐっと気持ちを抑えてこういった。



「どっちも素敵だから、2つとも使うね。ありがとう。」



どんな顔をしてるだろう。笑えているだろうか?

次回予告!

戸惑いながらもブランドをどうにかしようと奮闘する七海。

そんな中、七海はリーリ、スティーブンと話しているうちにとある事が起こってしまい……。


十一話 私、間違えましたか?

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ