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名門お嬢様JKの前世が異世界最強サキュバスだった件 ~魔性のスキルで清楚にお無双いたします~  作者: クサバノカゲ
Season 2.5

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34 氷の刃

「──うん? よく見たらあれは副委員長の文月(ふみづき)さんね。彼女は転魔じゃない。図書委員長はまたサボりか」

 

 数少ない、というかぶっちゃけ綾さんを入れても二人しかいない、入学当初からの仲良しである文月先輩が転魔(てき)だったら、さすがに立ち直れないかも知れません。

 そこで居心地悪そうに俯いている知的メガネの文学美少女に、私は内心で胸をなでおろします。一年の春に私が文芸部に入ってすぐ意気投合した彼女とは、主に創作論について熱く語り合う仲。それと……私にBL小説の素晴らしさを教えてくださったのも彼女です……。


 ──だけど、どちらにせよ。


「転魔なのは文芸部の部長にして図書委員長、朽葉(くちば) 律子(りつこ)。前世は高位の不死者──アンデッドだと思う。正確にはわからない」


 やっぱり、そうなりますよね。


「不死でも、転生ってするんですね」

「不死であっても不滅ではないでしょ、聖なる力で浄化されたり。と言うか、彼女のことはあなたのほうが詳しいんじゃない?」


 私が漏らした現実逃避(やけくそ)ぎみの疑問は、真正面から打ち返されていた。


「……とても尊敬できる先輩です」


 敵にしたくない相手であることは、何も変わりません。

 そして、そういう意味では誰より四人目の彼女。


「最後は北大路(きたおおじ) 雪那(せつな)。風紀委員長にして薙刀部の部長。彼女もかなりの高位──おそらくは固有名詞(ネームド)級の氷雪系だと思う」


 きっと校内でいちばん真っすぐな背筋に、侍じみた高め黒髪ポニーテールを揺らし、彼女は冷たく鋭い眼光で前だけ見つめ歩く。


「──そこ。スカート丈、1センチ足りない」


 そのくせ、並んだ生徒たちの僅かな服装の乱れも見逃さず、手にした銀の指示棒で完璧に指摘してゆく。……怖い、転魔うんぬん以前に人としてシンプルに怖い。


「……あのひとだけは……敵にしたくないです……」

「気が合うわね。私もよ」


 しかも固有名詞(ネームド)──リリスと同格か、それ以上に強い名前(・・・・)を持つ可能性があるということ。


「以上が私の知る四彩媛(しさいえん)──まあ、この世界にとっては『彩』(いろどり)より『災』(わざわい)の四()媛がしっくり来るかな」


 目前まで迫りつつある彼女たちに向け、なかなかの台詞を吐く瞳巳先輩。聞こえてしまわないか気が気でない私ですが、彼女は気にする様子もなく。

 

「で、そんな四災媛(かのじょたち)を従える生徒会長が、久遠寺(くおんじ) 耀子(ひかるこ)。でも彼女は転魔ではない、はず……」


 言い終えるとほぼ同時に、行列の先頭を歩くご本人──()生徒会長が目の前を通ります。透けそうに蒼白い肌の儚げな美少女。まっすぐな黒髪と薄い眉がどこか(みやび)やかな印象を漂わせています。

 

 通り過ぎる瞬間きっちり礼をする私の隣で、先輩は軽い目礼だけ。

 会長とその後ろの四災媛が何事もなく通り過ぎて、続く生徒会役員のみなさんの一団を前にほっと胸を撫で下ろした、そのとき。


 ──背筋をぞくりと冷気(さむけ)が撫でる。


「あなたの前髪」


 目の前の役員さんの肩越し、冷たい声と同時に殺気をまとった刀の切っ先が空中を走る。


「──ッ!?」


 硬直する私の眼球の数センチ先でぴたりと静止するそれは、よく見れば刀ではなく銀色の指示棒の尖端でした。


「目を、隠しすぎではないかしら?」


 役員さんがスッと横に捌け、その向こうで指示棒を手に立つのは風紀委員長──四災媛“絶対零嬢(アブソリュートゼロ)”北大路 雪那。


 背筋だけではなく、急激に体感温度が下がる。

 唇から漏れる私の吐息も白い。すぐに全身が震えだし、ガチガチと奥歯が鳴った。

 固有名詞(ネームド)の氷雪系、その言葉が脳内をぐるぐる回る。


「──あら、おかしいわね」


 そのとき、指示棒を片手の甲でそっと払い除けながら、私の前に割り込んだのは瞳巳先輩の長身でした。

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