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名門お嬢様JKの前世が異世界最強サキュバスだった件 ~魔性のスキルで清楚にお無双いたします~  作者: クサバノカゲ
Season 2.5

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33 聖条四彩媛

 ──屋上での死闘からひと月ほど経った、ある放課後。


 そそくさと教室を出た私は、独特のざわついた空気感のなかで足を止めます。

 廊下の両サイドに背をぴったり合わせ、整列する生徒たち。私も慌ててそれに(なら)う。その中央を、ゆっくりとこちらに歩んで来る一団が見えました。

 彼女らが通過して生徒が深々と会釈するウェーブが、じわじわと迫ってきます。


 お母様の在学中にも既にあったという、聖条院女学館生徒会伝統の「放課後視察」。またの名を──

  

「──レッドカーペット。改めて外から見ると、なかなか滑稽なものね」


 耳元で聞こえた囁きに、驚きつつ視線を向ける。

 いつの間にか私の真横に立っていたのは、つい先日まで視察(それ)の先頭で風を切っていた天王洲(てんのうす) 瞳巳(ひとみ)先輩、ご本人様でした。

 

「……あら、生徒会長。ごきげんよう」

「ごきげんよう、琳子(りんこ)さん。でも生徒会長はあっち(・・・)


 相変わらずの美貌ですが、天上人じみた威圧感(オーラ)はだいぶ薄れています。

 女神と決別したことで魔力供給を絶たれた今の彼女は、その能力(ちから)のほとんどを失ったも同然らしい。


 そしてつい先日、生徒会長の座からも「一身上の都合」ということで自ら退きました。


「じゃあ、元生徒会長?」

「間違ってないけど、なんか嫌な呼び方ね」

「天王洲先輩」

「ちょっと壁を感じるなー」


 えっ、なにこのひと。意外とめんどくさい。

 

「じゃあどうすれば」

「瞳巳ちゃんがいい」

「それはキツイ。だいぶキツイです」

「私とあなたの仲なのに?」

「誤解を招きそうな発言やめてください」

「べつに誤解じゃないでしょ、私の奥まで入り込んだくせに」


 えっ、なにこのひと。すごくめんどくさい。

 

「わかりました。それじゃあ、天乃(・・)ちゃんで」

「うっ……それは、嫌じゃないけど……校内(ここ)ではちょっと……」

「なら、瞳巳先輩ですね」

「うーん、まあ手を打ちましょう」


 彼女の能力(ちから)が失われたことで、石化(ペトリ)病の患者たちも、相次いで意識をとりもどしました。

 世間的には、ライブチャットで彼女が使っていた視覚効果(エフェクト)が、脳に何らかの過剰反応を引き起こした結果と思われる(・・・・・)が因果関係は証明できない、という結論になったようです。

 それで彼女は、石化(ペトリ)病患者一人ひとりの入院先に出向いての「直接謝罪」を敢行しました。そこでもちろん金銭的な補償も申し出たようですが、ほとんどの患者(ファン)はそれを断ったらしい。


 ──結果、アイドル天乃の神対応とファンたちの絆はネットでバズリ、ますます人気を上げることになったようです。


「ところで琳子さん、あの四人のことはどう考えてるのかしら」

「四人……?」


 近付いて来る放課後視察(レッドカーペット)に視線を向けながら、彼女は私に問いかけます。

 四人と言うと、行列先頭を歩く()生徒会長の真後ろに、横並びで付き従う四人の女生徒のことでしょうか。それは生徒会幹部にして、校内の才色兼備の頂点たる才媛たち。


「──聖条(セント)四才媛(フォース)のことですか?」

「ええ。彼女たち四人全員が転魔──あなたの敵よ」


 ……!? なんかさらり(・・・)と、とんでもないことを……

 

「校内の転魔は、私と先輩だけじゃ……?」

「そんなこと言った?」

「ええと、たしか『他にまだ居たなんて』みたいなことを言ってたような……」

「あの四人の『他にまだ居たなんて』ってこと。そしてやっぱり、気付いていなかったのね」


 ……なるほど……。言われてみれば確かに、これまで彼女たちとすれ違ったとき感じた異質な威圧感(オーラ)は、以前の瞳巳先輩のそれに通じるものだった、ような気もする。


「しかたない。あなたには借りがあるし、四彩媛(かのじょたち)のこと、情報共有しておきましょう」


 現実を受け入れ切れない私にお構いなしで、頼んでもいない解説をはじめる先輩。


「まずは右端のゆるふわな彼女、春瀬(はるせ) 祢々(ねね)。美化委員長で華道部長、兼園芸部長。そして妖樹アルラウネの転魔」


 情報量が……多い……。


「彼女はいわゆる『四彩媛(しさいえん)で最弱』の扱い(ポジション)──だけど、あなたにとっての相性は最悪かもね」


 確かに、そうかも知れない。植物系の魔物(モンスター)には私の蠱惑(チャーム)魔性技(ゼク・スキル)もすべて無効。彼らを支配するのは、欲ではなく本能だから。


「つぎ、左端でイケ散らかしてるボーイッシュが八朔(ほずみ) 夏眩(かぐら)。体育委員長で水泳部部長で、海魔クラーケンの転魔」


 イケ散らかしてるボーイッシュ……はじめて聞くタイプの日本語……。

 四人の中でいちばん背が高くて短い髪型(ベリーショート)の彼女は、爽やかな笑みを生徒たちに振りまいている。振りまかれた生徒たちは一様に頬を染め、ぽわんと瞳を潤ませています。

 大蛸(クラーケン)蠱惑(チャーム)を使えるわけないから、これは生まれ持った才能か。


 ……!? 


 いま一瞬だけ向こうから、ものすごく重い感情(なにか)の込められた視線で睨み返されたような……。

 そういえば彼女、生徒会長だったころの瞳巳先輩ととても(・・・)仲良しで、二人で一緒にいる姿を何度か見かけた気がします。

 潜夢(ダイヴ)した記憶の中でも、いちばんよく見かけたかも知れない。いつも普通に生徒会の話ばかりしていたから、深くは覗きませんでしたが……なんだか踏み込まない方がいい類の、ドロドロした気配……いやだなぁ……。

 しかし瞳巳先輩は私の困惑を気にも留めずに、話を次のひとりに進めます。


「そして中央右側、図書委員長……」


 それは姫カットの黒髪に、シルバーフレームの眼鏡が知的な文学美少女──文月(ふみづき) 言羽(ことは)先輩。


 ──私の、数少ないお友達のひとりです。



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