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名門お嬢様JKの前世が異世界最強サキュバスだった件 ~魔性のスキルで清楚にお無双いたします~  作者: クサバノカゲ
Season 2

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21 翼は紅く羽ばたいて

 意識(わたし)の抜けた肉体(わたし)が無数の蛇に覆い尽くされてゆく、背徳的な光景を眼下に私は上空へ離脱します。


 意識だけの状態は、魔力を媒介(つなぎ)にしているものの、潜夢(ダイヴ)する先がなければ徐々に大気に拡散していずれ消えてしまう。

 少しでも拡散(それ)を防ぐため、自身の姿形(フィギュア)を明瞭化してイメージを固定します。

 脳内に浮かべたのは、サキュバスの翼と尻尾が生えた小さな黒猫。通学途中たまに見かけるキュートな仔猫さんを参考にさせていただきました。


 前世では、この物理的制約のない離脱状態を活用し、人々の記憶に根付いた夢魔(わたし)のイメージを伝って夢から夢への遠隔(リモート)接続──夢渡(ゆめわた)りを行い、どんなに離れた場所でも関係なく夜這い(・・・)をかけまくっていたわけです。


 私もそれを活用して魔力を収集しようと考えた──のですが、最淫(さいきょう)の名を轟かせていた前世とは違って、現世(こちら)でサキュバスと言えばゲームやアニメのキャラクターたちが幅を利かせてる。


 ただでさえコミュ症や、肉体を留守にする不安が障壁(ブロック)になっているのに、これでは上手く行くわけがない。


 そこでヒントをもらったのは生徒会長──天乃(てんの)ちゃんがネット配信で石化(ペトリ)病を伝播させているのではないかという予想。


 どうやら、ネットのデータ通信と魔力は親和性が高いらしいのです。もしかするとデジタル技術が現世(こちら)における「魔法」に相当するから、なのかも知れない。


 とは言えネット配信なんてコミュ症の私にはできないので、文芸部の技能を活かし、某WEB小説投稿サイト(しょうせつかになろう)に「異世界から現代に転生して清楚な女子高生になってしまったサキュバス」の物語を()()()()()()()()()投稿したのです。


 読んでくださった読者さまに私──清楚系サキュバスのイメージと共に黒子(ほくろ)と見分けがつかない小さな魔印(マーカー)を刻み付ける。

 そして夜、魔印(それ)を辿って寝所にお邪魔し、すてきな夢(・・・・・)をお見せするのと引き換えにエナジーをおすそ分けしていただく。


 記憶には残っていないと思いますが、朝起きたとき妙にすっきりしていたり、逆にやたら怠かったりしたら、それは私の仕業かも知れません。


 ──ご協力ありがとうございます。また、今後お邪魔させていてだきました際には、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

 まあ……現実が舞台なのにダンジョンや配信モノのようなトレンドから外れてますし、まだ連載中で本当に面白くなるのはこれからですし……。


 はい、そのPVだけで生徒会長と対峙するのはちょっぴり心もとなく、前世の実体験(・・・・・・)を元に、敬愛する卯月(うづき)シズク先生を師と仰ぎながらしたためた短編も、夜想曲(オトナむけ)のほうに投稿しました。

 これが日間ランキング五位内に食い込む盛況ぶりで、たっぷり追いエナジーを補充したのがつい先週のことです。


 というわけで、夜な夜なかき集めた──皆さまの多様性に()()ちた(へき)濃密(ディープ)に堪能でき、正直とっても愉しかったのですが──とにかく、そんな貴重な魔力たちが肉体(むこう)側にまだ大量に残っているのに、このままではすべて泡沫(あわ)と消えてしまう……。


「やはり無意味だったわね、(すずり) 琳子(りんこ)……」


 生徒会長(ゴルゴーン)は、自身の頭部から生まれた無数の蛇で形成された球状の塊──琳子(わたし)の棺を見詰めて呟きます。

 鱗に覆われようと色褪せない、むしろ妖しく美しさを増した表情(おかお)に……そのとき、ふと浮かんだ疑念の色。


「なに……この魔力は……」


 眉根を寄せながら彼女は口にする。

 上空でパタパタ羽ばたく黒猫(わたし)のもとにも、急激に大気を満たす、むせる(・・・)ほど濃密で甘い魔力が届いた……次の瞬間。


 ──(そこ)から、紅くて巨大な刃が生えた(・・・)


 蛇たちがぼたぼたと地に落ちる。サキュバスの翼刃を弾く堅牢な鱗に覆われた彼らが、きれいな輪切りの断面を晒しています。


「……ッ……何が……」


 離れた蛇たちとも痛覚を共有しているのか、美貌を歪める会長の前で、棺の内側から対称形を為してもうひとつ刃が生える。

 双刃は死神の鎌じみた半月型で、翼だとすれば蝙蝠(もと)の倍──片側だけでも三メートル超の、もはや翼竜のそれ。


『──ようやく、お目覚めですか』


 上空で私が呟くのと同時に、紅の双刃がバサリと、自身が翼であると主張するように羽ばたく。生じた旋風までも紅いのは、切り裂かれた蛇たちの肉片と血の色をまとっているからでしょう。


 ──そして、そこに。

 

 巻き上げられた血肉が雨と降るなか、紅の翼を大きく拡げ、白い裸体に蒼銀の長髪を揺らして──琳子(わたし)と同じ(かお)の少女が、悠然と佇んでいた。

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