嫌いな自分
空気をよむのが、昔から苦手だった。
人の気持ちが、分からなかった。
だから、いつも、ひとりだった。
仲間といる時も、恋人といる時も、いつもひとりだった。
身体を重ねれば重ねるほど、ふたりの気持ちは遠くなってしまうぐらい。
気持ちが昂れば昂る程、どんどん醒めてゆく。
どんどん醒めてゆく自分を、そんな気持ち悪い自分を、見つめている自分がいる。
僕は、そんな自分が嫌いだった。
そんな僕のことを、君は好きだと言ってくれたね。
でもね、そんな嫌いな僕を、好きだと言ってくれる君が、一番嫌いなんだ。
君を見てると、一番嫌いな自分が好きになりそうだから。
好きにならないと、益々嫌いになるから。
君のことが。
僕のそばにいる、それだけで嬉しいって、君は言っていたね。
嬉しそうにしている君が、大好きで、僕は大嫌いなんだ。
君をかわいいと思うほど、君を壊したくなる。
全部、壊したくなるから。
だから、僕は僕を嫌いになる。
僕は、こんな僕が怖い。
こんな怖い僕を、お願いだから嫌いになって。
お願いだから、そばにいて。
お願いだから、どっか行って。
もう、そばに来ないで。
僕のそばにいるなんて、言わないで。
本当は、君が一番怖いんだ。
君のその優しさが、僕を壊していくから。
だから、僕の中の君を、壊すんだ。
粉々になるぐらいに。