表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫が犬になった。  作者: ゆかこ
2/2

気のせいだった……?

今日は平日、金曜なので推し舞台の新作発表映像を見ながら最寄りへ到着。

何だったらついでに新作舞台のチケット予約もした。


残ってた仕事もちゃんと片づけて、今日は調子いいぞ~!家に帰ったら夜通し舞台観るぞ~!と思いながら帰ってたら、昨日と同じ場所でまた声がした。

声というか、呻き声。


「お腹すいたなぁ……。こっちには何があるんだろう。おいしいものはあるんやろか……。」


小さな男の子の声。

周りを見渡すけど、やっぱり人はいない。


何だろうなこれ。あなたの頭に直接語りかけています、みたいな?

でも、ちゃんと耳から聞こえてる。


そう考えながらいつもの道を曲がると、膝丈くらいの何かにぶつかった。

っとと、なんだ?


「っった!なに?」


お、さっき聞こえた男の子の声。


「ああああ!あんた!この前もここ通ってたやろ。なんで無視していってったん。ん???」


めっちゃしたから睨め付けつつ、指差してきてるな。でもちっちゃい子だ。たしかに角の向こうにいたなら見つけられないのも当然だよね。


「そんなに人の顔見て指ささないの。ここ帰り道だから、昨日もここ通るの当たり前なの。でもごめん、ぶつかったよね。けがとかしてない?」

「痛いわ!心が!!!何度も声かけてんねん!!いろんな人間に声かけとんのに、誰も返事して…くれへん…ぅっ…なんでや……」


あらら泣いちゃった。


「どうしたの。お菓子…は無いな、ドライフルーツならあるけど、いる?」

「どらいふるーつってなに。おいしいん?」

「果物だからおいしいよ、はい。」


たまたまカバンの中にマンゴーのドライフルーツが入っていたので、これをあげた。

おいしそうに食べてるな。私も1個。

うーん美味しい。ほんとはお菓子食べたいけど、ダイエットダイエット……。


「んぁんやこれ。うんまいなぁ。もう一個ちょうだい」

「ふぁい」


2人でもぐもぐもぐ……

美味しいなぁ、ドライマンゴー。


口の中でむぐむぐと咀嚼し、飲み込み、あらためてぶつかった男の子に声をかける。


「んっで、なんであんなところにいたの?」

「そう!それやわ!忘れとった!ついお腹空いてて。あんな、うち違うとかから来たんよ。」


突然なんだろう。違うところ?うーん。

ちょっと話合わせてあげるか。


「親戚のお家とか?」

「んぃや。そうやな、ここと違うことと言ったら、あの空のやつ。あんなに小さないで。」


空のやつ?

そう言われて空を見れば、今日は満月。

季節もあって、より綺麗に月が見える時期だ。


「月のこと?近くに見えるの?」

「つき?あれ、こっちじゃつきって言うんか?」

「月じゃなかったら何?あのまんまるの、白いのでしょ」


そうなんやけど……と言い、夜空を見て小首をかしげる少女。


ん?少女?


「あれ、あんたそんなに髪長かった?」

「あ?ああ、まぁた姿変わってもうたんか。まぁ気にせんといてや。」


姿変わってしまった。

はぁ……?


「とにかく、あのお空の穴が小さいのが何よりの証拠やな。うちはここじゃないところから来たんよ。」


この子は何を言っているんだ……?



ああ!

ははーん。小さい頃ならではの思い込みとか、お母さんの胎内の記憶とか、そういうやつ?


「はいはい、わかったわかった。じゃあお名前教えてもらおうかな?」

「やっと名前聞いてくれたな!うちの名前はツカイ!ツカイって呼んで!」

「はーい、じゃあツカイちゃん?くん?お姉ちゃんと一緒にこっち来ようね〜」

「なんや、ええとこ連れてってくれるんか!」


ニコニコとし始めた。簡単に人を信用して……。こんな子供が夜に1人で歩いてるの、おかしいでしょ。


そう思い、ツカイと名乗ったその子を連れて、私は少し歩きとある建物に。


「すみませーん。」

「はーい、どうしました?」


「なんか、迷子みたいで……名前はツカイというらしいのですが……」

「迷子?こんな時間に?うーん、捜索願とか出てたかな……」


そういって制服の男性は裏にあるパソコンを触り始めた。


「すみません、このあと用事あるので、この子お願いしてもいいですか?」

「ああ、はいはい。連れてきていただき、ありがとうございました。」

「いえ、お願いします。」


そう言って建物を出ようとした。

あ、そういえばお腹空いたって初め言ってたな。


ここが一体どこかわからずキョロキョロしてるツカイに向かって、一言。


「お父さんとお母さんのこと、ここで待ってな。安全だから。あとこれ、マンゴーあげる。」

「安全?あそこ危険だったんか。はぁ、まぁありがとう。これ美味しいやつか。食べるわ!」

「うん、そうして。じゃ。」


そう言って私は早足で交番から立ち去った。


よくわからない子には関わらないのが一番。うん。


そのあとは無事に家に帰って、テレビをつけて、お気に入りの舞台の円盤差し込んで。


よし、変なことあったけど、華金たのしむぞ!!!


そう思いながら、再生ボタンを押した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ