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尖んがりジプシーの航路  作者: 下市にまな
第三章 チーム築城編
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 新年1月4日・・・

『うわ~まるで旅行に来たみたい~』 

 奈良の山奥までの景色を車内の藤田ファミリーは楽しんでいる

江坂からの運転を続けながら貴子の体力が心配な櫂ではあったが、今日は体調が優れているらしく貴子も窓からの景色を眺めながら笑顔を浮かべていた。


『もうすぐ着きますから』 櫂の言葉に優華が 『緊張する・・』 と漏らしたが、

『何であんたが緊張するのよ』と貴子は笑った。


櫂からの報告で優里の母親の来訪意向を伝えられた両親は少々戸惑った様子ではあったが、隆明は直ぐに『相手のお母さんの体調の良い日でいいから』 と、2つ返事で承諾の意を櫂に伝えた。


『ここが櫂ちゃんの育ったお家なんやね・・・』 

 優里は庭の細い小道の先に見える玄関を眺めながら呟いた。

のそりと犬小屋から出てきた巨体のハスキーを見て優華がビクリと反応したが、櫂が即座に『シッ』と手の平を向けると、ハスキーはくるりと向きを変えて再び犬小屋に潜り込んだ。


『わざわざ遠いところを御足労戴いて、申し訳ありません・・櫂の母親の泰代です』

『父親の隆明です・・・さあどうぞ、中にお上がり下さい』 

 直ぐに玄関から笑顔の泰代と隆明が姿を現した。

『突然のご訪問、失礼をお許し下さい・・・優里の母親の貴子です』 

 貴子も丁寧にお辞儀をしてそれに応えた。

『そしたら堅苦しい挨拶はここまでで、ざっくばらんに暖かい部屋で話をしましょう・・さあさあ!』

 隆明は砕けた表情を作ってから一行を玄関に招き入れたのである。


お互いの両親の心眼はこの時点で相手の素養を見抜き、自分の経験値の中で信用に足る人物なのか、全てをオープンに見せて良い人物であるのかを瞬時に弾き出している。

この後はなんとも和やかに、正直な対話の時間を共有しながら話は弾んだ。

櫂と優里は顔を見合わせながら、話の弾む親達に取り残されたように苦笑いを浮かべるしかない。

『甘やかして育てたから、優里は頼りない所が多いんですよ・・目に付く事は厳しく言ってやって欲しいんです』

『任せて下さい・・もう自分の娘やと思ってカツンと言いますから』 

 隆明は嬉しそうに貴子に答えた。

『櫂も頑固な所がありますから・・暴走したら止めるのに苦労させられて・・』 

 泰代もやはり嬉しそうである。

『いえ、櫂ちゃんは優しいですよ・・女ばかりの家庭に櫂ちゃんが居てくれるだけで、安心感が持てるんです・・』

『いいや、こいつは男としてはまだまだです・・お母さんからも目に付く所はビシバシと言って聞かせてくださいよ』

隆明の言葉はフランクであるが、誰に媚びること無く娘達を育て上げた貴子に尊敬の念を持って対応していると櫂は感じていたし、貴子が湿った感覚の無い櫂の両親に安堵感を抱いているとも感じ取れる。



 2人から始まった好意は、色んな経験や試練を経験しながらも継続し続け・・・・・

やがて2人の心はそれを取り巻く複数の心を動かしながら、もう一歩踏み込んだ世界の扉を開こうとしている。

 相対する前から複数の心はそれぞれの決心を秘め、それぞれの想いを伝え切ろうと覚悟を固めていたのだろう。

中心にいる2つの心は周囲のそんな意思を汲み取りながら、この先の一歩を踏み出して行かねばならない・・・


【巣立ちの時が、一気に目の前に迫っているのだ!】


『お兄ちゃん、お姉ちゃん・・これからも宜しくね』 

 優華が笑顔で2人に言葉を送る


『よ~し、おっちゃんは優華ちゃんにもビシバシと行くぞ!』

『え~、何で!』 驚く優華に全員の笑い声が向けられた。


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