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尖んがりジプシーの航路  作者: 下市にまな
第二章 京都激闘編
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明日への成果

運搬業者が全ての作品と備品を詰め込んだトラックを、KB京都から発車させたのは午後7時を廻った頃である。


『全員集合や!』 閑散としたホール内に桝村の声が響き渡る。

この時来日展の開場以降初めて、ワールドアート全員の大きな輪が作られた事になる。

意気揚々と集合した営業マン達の表情には、やり遂げた充実感と自信が漲っているようにも見えた。


『成果を発表する前に先ずは井川部長から一言、感想を述べていただく』 

 桝村は笑顔で井川の後ろに下った。

『桝村?・・・まだ・・・森田がこの輪におらんぞ!』 

 井川が不思議そうに大きな輪を見渡すがそこに櫂の姿は無い。


『あの~、森田主任はまだ寝てますけど』 桝村の後方で終礼の輪を眺めていた井筒が遠慮がちに発言する

『まだ寝とったんか! ええ加減に起こさんか井筒!』

 河上も締まりのない終礼になる事を嫌って井筒を責める

『何度も起こしてるんですが・・びくともしない爆睡っぷりで』 今度は峰山が井筒をフォローした。

 輪の全員が峰山の見た方向を注目すると、ホールの隅でピクリとも動かずに此方に背をむけたまま眠り続ける櫂が寝そべっている。

『桝村! 起こしてこい』 河上は呆れた表情で桝村に指示を出した


『おいっ、森田! 終わったぞ! いい加減に起きろ!』

 桝村は速足で櫂に近づくと、大声で櫂の肩を揺すった。

全員が注目して行方を見守ったが、櫂は起きる素振りも見せない

『ダメですね・・犬っコロみたいに寝てますわ・・・』 桝村が呆れ顔を輪に向ける

『誰か! あの犬っコロを起こせる奴! 行ってこい!』 河上は今度は苦笑いで大きな輪に指示を出す。

即座に林葉が動いたが、糸居・人吉・小倉に続いて外回り組33名がゾロゾロとそれに続く。


『おい! ドテ寝森田! 起きろ!』 林葉は遠慮なく櫂の頬をパチンと叩いた。

うっすらと櫂の目が開きかけるのを見て、林葉はさらに続ける

『皆が待ってくれてるから・・起きなあかん時間や・・・分かるやろ?』

櫂はむくりと壁面を向いたままその場に起き上って座り込むと、『ふぁ~』とあくびをしながら背伸びをした。

『おい、寝ぼけるな』 言葉とは裏腹の優しい口調で林葉は櫂の肩を揺すった。

『あ~ジャイ子~、やったか新記録~?』

 壁面を向いたままの櫂は注目されている状況に全く気付かぬ様子で、林葉に問いかける。

『当然でしょ! 自分の会期新記録は達成したよ・・2400万!』

『2400万か~ 随分と差をつけられてしもたなあ~・・・ 置いて行かれた気分やぞ~』

 櫂はそう言うと、ようやく林葉を振り返って笑顔を見せた。

自分に注目する50名以上の営業マンの輪が目に飛び込み、瞬間的に櫂は状況を理解したが、もはや慌てふためく事も出来ないと腹を括る。


『やっと起きたか? 今回の立役者が寝そべってたら終礼が締まらんやろ!』

 河上は大声でそう言ったが、その笑顔に釣られるように輪にも笑顔が拡がってゆく。


『森田主任! 終礼に行きますよ』 岸岡と馬場が櫂の腕を持って引き上げる。

『ああ、大丈夫・・・寝たら元気が戻ったみたいや』

 櫂は外回り組に囲まれながらゆっくりと歩き出した。

途中で櫂は林葉を振り返って 『直ぐに追いつくからな』と不敵に笑った。


林葉は声には出さなかったが、笑顔の外回り組に囲まれる櫂を見て感じている。

《 随分と差をつけられたのは私のほうかも知れん・・・・ 》


其々が自分で掲げた目標を完遂する為に闘った今回の来日展は、同業他社をも寄せ付けない大成功で終える事となったがそれは数字上の成功に留まらず、其々の明日に繋がる成果をもたらしたに違いないと河上は噛み締める


未開の地を切り開くべく競い合った2人のライバルは、お互いに新たな開花を実感したであろう。

今後のワールドアートの拡大にはこのような進化が必要である。

そしてこの2人から生まれる新時代のチームとは?



その成果を確認する未来は、そこまで近付いているのかも知れない。


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