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尖んがりジプシーの航路  作者: 下市にまな
第二章 京都激闘編
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京都潜伏

 『ええな、午前中は4チームは御池通りより南エリアで重点配券や、有職者と主婦層、観光客を狙うぞ・・・残り1チームは昼前から近場の丸太町から催事場への即席誘導に徹してくれ・・・これは学生でも年配層でも構わんからな、まずはホール内に人を入れるのが先決や、人の居ない時間は絶対に作らんようにするからな!』

櫂はポイントリーダーだけでなく、全員を自分の周囲に集めて説明をした。

これは全員の意識に自分も参加しているのだと植え付ける為であるが、到着したばかりの峰山と井筒は30名以上が駐車場の一角に集まる光景を見て驚くしかなかった。


『配券は絶対にゴミにするなっ 道端に捨てられたら全部拾って帰るんやで、 一体あの楽しそうな集団は何をしてるんやと街中の人たちに思ってもらうんや・・・一枚ずつの配券が営業やと考えて行動すれば皆で大化け出来るからな』



《ずいぶんと短期間で大化けしたものだ》 峰山はちびっこギャングと呼ばれた研修生の櫂を思い返していた。

『森田主任、お目当ての物を持ってきたわよ』 櫂の話が一区切りしたのを見計らって峰山は声をかけた。

『あっ、おはようございます』 櫂は屈託のない笑顔で走り寄ってくると、峰山の傍らに立つ井筒の抱える紙袋を受け取った。

『ポイントリーダーちょっと来てくれ、プレゼントや!』 櫂は嬉しそうに紙袋から携帯電話を取り出してから、御池通り南エリアの4名に配った

『状況報告はこれで随時行う、臨機応変に配券ポイントで戦略変更をする場合は必ず報告してくれ、

 後は送迎バスの路線変更や時間変更も随時連絡し合って情報を共有するんや・・・丸太町般と補佐役AAはトランシーバーを必ず持ち歩くようにな』

『各携帯アドレスには既にそれぞれの番号をいれてありますから』 井筒はそう言うと櫂に5つの携帯番号を記入したプリントの束を手渡した

『サンキュ~』 櫂はそう言うと、各ポイントリーダーにプリントを配った

『昼前にはMCコンパニオンも来るわよ、該当でマイクを使えるのは京都駅前と烏丸御池交差点のみだからね』

『分かってます、準備は整ったな・・・この七日間で進出鬼没で活躍しようや』 櫂の言葉にポイントリーダー5名も楽しそうに返事を返した

『あなた達!・・・』 峰山が何かを言おうとしたのを櫂が遮る

『クレーム軍団にはならないでよね・・・でしょ?』と笑ってみせた

峰山はやれやれという表情を浮かべたが、『経営者感覚を信じましょう』とホール内に消えた。


搬入備品を積載した大型トラックが駐車場に入ってくると、外回り組には真新しい配券ジャンパーが配られた。

『おお、蛍光グリーンのジャンパー、しかもLLサイズ!』 川垣はジャンパーを着込んで喜んでいる。

櫂の入社した頃と比較するとワールドアートも随分と男性社員が増えたが、やはり櫂も悩まされたピチピチピンクジャンパーは男性社員を苦しめていたようで、川垣の喜びは痛いほど解るというものである。

『川垣! これで思う存分に活躍出来るな』 各般の準備が整ったのを確認してからいよいよ櫂は出陣の号令を出す


『焦るなよ、結果が直ぐに出ない時は先の為の行動を考えろ・・今がチャンスと思ったら何が何でも食い下がるんやで、こんな経験は2度と出来ないんやから、後悔せんように踏ん張ろうや』

 意気揚々とそう言い放つ櫂に鼓舞されるように、33名の外回り組は各ポイントに向けて散開した。


『いよいよ始まりましたね』 井筒が櫂の隣で呟く

『そうやな・・』 櫂はそう言ってから、井筒に腕を突き出した

『何ですか?』

『お前、飴ちゃん持ってるやろ? 腹減ったからくれ・・・』

『持ってませんよ』

『嘘をつけ、その鞄のサイドポケットにあるやろ』

『はあ~・・・』


《一人でも多くの人間を、紛れ組から脱出させてやるからな・・・》 

 鮮やかな蛍光グリーン軍団の後ろ姿を見送りながら櫂は決意を固めていた。


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