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第1章 プロローグ

ここから本編スタートで、三人称で進める予定です!

各章ごとにテイストが変わるかもしれません。



 ちらほらと明かりがつきはじめた夕暮れ時。

 人で混雑する路地を、一人の男子高校生が歩いていた。


「はあ。帰りたくないなあ」


 肩を落としてため息をつき、うつむきがちに歩いてはボソリと独り言を漏らす。

 暗い。

 笑顔でアピールするメイドさんたちが声をかけられないほど暗い。

 小遣いをつぎこんだ重い紙袋で肩が沈み込んでいる。


 紺ブレザーの制服姿とはいえ、時間は夕方だ。

 平日のこの時間であれば、制服姿の男子はちらほらとこの辺りを歩いている。

 学生じゃないのに制服姿の女性がいるが、いまは関係ない。


 男子校生は、駅に戻って帰ろうとしていることさえ忘れたのか。

 ふらふらと角を曲がり、さらに狭い路地に入っていった。

 ふと顔を上げる。


「あれ? ここどこだ?」


 秋葉原である。

 メイドさんが多いあたりを曲がった狭い路地である。

 うつむいていた男子高校生はわかっていなかったようだ。


「道に迷った……げっ、スマホの充電切れてる」


 ゴーグルマップに頼ろうとした男子高校生だが、スマホの反応はない。

 自分がどこにいるか把握しようと、男子高校生がキョロキョロと周囲を見まわす。

 狭い路地、入り口さえない雑居ビル、高架は見えない。

 背後を振り返って、ようやくいまいる場所がわかったようだ。


「ああ、オトナ向けコミック店があるあの路地か。……うん? こんな店あったかな?」


 振り返る途中で視界に映った看板に目を止める。


 夕暮れ時の路地裏に、前面がすりガラスになった外観。

 店舗上部の看板には、黒地に赤で、目立つようにデカデカと店名? が書かれている。


”異世界無料案内所“


「いや異世界って。なにかのキャンペーン? 最近そんなアニメ多いし」


 気になったのか、男子校生はすりガラスの向こうを覗き込もうと近づく。

 と、店内から一人の男が出てきた。


「あー、今回は少年かあ」


 年齢は二十歳前後だろうか。

 ネクタイなしのスーツは細く、ひょろ長い体型に似合っていた。

 耳にかかるほどの黒髪、眠そうな目はやる気が感じられない。


「え? あの、このお店は?」


「そうだよなあ。よかったら中で説明しようか? 入ってみるのも自由、出るのも自由だし、話だけ聞いて帰るのも少年の自由だ」


「はあ。じゃあ……」


 普段であれば、男子高校生はそんな怪しげな店に飛び込まなかったことだろう。

 帰りたくない理由でもあるのか、あるいはなんとでもなれと自暴自棄だったのか。


 誘われて、男子高校生は入り口を通り抜けた。

 それが、人生を変える一歩となることを知らずに。





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