第4話「旅の理由」
こんにちは、オロボ46です。
前回でひとつめの狼寺の試練を達成した四人。
次の狼寺に向かって歩いている所から今回のお話は始まります。
それでは、どうぞ。
人気のない路地裏。
死臭が漂うその路地裏に、二匹の狼は人間の死体をじっくりと眺めている。そして、人間の肉を噛み、引きちぎる。それを飲み込み、再び噛む......
それを繰り返していた狼の内の一匹は何かを聞いたように顔を上げた。
二匹の狼は近くにやって来た獲物を求めて走っていた。路地裏を駆け抜け、見通しのいい道路へと出てくる。
そこには四人の人間たちがいる。二匹の狼たちはその人間たちに襲いかかった。
その時、人間の一人が静かに猟銃を構え......
バン!!
「危ないところだったわね......」
煙を出す猟銃を下ろしながらリボンは呟いていた。
「もう一匹は音に驚いて逃げて行ったみたいっすね」
反対方向へ全速力で走る狼を見ているのはロックだ。
「口に着いている血......さっきまで何かを食べていたみたいだ」
メガネは横たわる狼の口元を見て呟いていた。
「......」
メコはリボンの手にしている猟銃をじっと見ていた。
「あ、ごめん、驚かせちゃった?」「ヒッ......!」
リボンがいきなり振り向いたので、メコは驚いて一瞬耳が狼のようになった。
「う......ううん......さっきのは......音に驚いていただけ......正当防衛だし......」
そう呟きながらも、メコは猟銃から出てくる煙から目を離せなかった。
「そう言えばさ、他の二人はまだしていなかったわね」
歩いている途中、リボンはメガネとロックの方を見た。
「あ、そう言えば、昨日は疲れていて筋トレをしていなかったっす......」
「自己紹介だよ。まだリボンしか名前言ってないだろ?」
そう言いながらメガネはメコの方を向いた。
「僕の名前は"目崎 軟"。通称"メガネ"って呼ばれているよ」
掛けている眼鏡を上げる。
「俺は"大岩 岩助"って言うっす!他の二人と違って特徴的なアクセサリーがないから"ロック"って言われているっす!」
ロックは力瘤を出して見せた。
「岩みたいな体があるからそう呼ばれているんでしょ?」「それもそうっすね!」
リボンに指摘されて、ロックは頭を描ぎながら笑っていた。
「......ねえ......その......三人は......どうして旅をしているの......?」
メコは少し距離を取って、恐る恐る質問した。
「うーん、どうしてだろうね......」
リボンは少し考えるような様子を見せたあと、メコの顔を見た。
「特に気にしなかったから、わからないわ」
「......?」
メコは不思議そうに首を傾げた。
「実は僕たちもそれぞれの事情は特に知らないんだ。
たまたま会って、たまたま行き先が決まってなくて、たまたま一緒にいる......」
「そういう訳っすから、特に気にしなくてもいいんっすよ」
「......?」
メコは納得しない様子だった。
しばらく歩いていると、日が沈んできた。
「おや、もう暗くなって来たかな......」
メガネは腕時計を見て呟いた。
「今日は満月じゃないから大丈夫だけど......」
「あ、あの建物なら入れそうっす!!」
ロックが指差した方向に、廃墟があった。
四人は廃墟の中へと入っていった。
そこでリボンは木材とライター、そして先ほどの狼の死体を取り出していると、何かに気づいたような表情でメコを見た。
「メコちゃんは大丈夫?」
「......?」
「今から、その......元人間の狼を食べるんだけど......」
「......元人間なら......大丈夫......でも......その......」
メコは言葉に詰まってしまった。
「もしかして、人間が元人間の狼を食べることが不思議かしら?」
リボンの言葉を聞いて、メコはコクリと頷いた。
「狼になった人間の体はほぼ別物になる。だからこの世界では結構ポピュラーな食べ物だから平気さ」
メガネはナイフを取り出しながら解説した。
木材を並べ、火をつける。その間にメガネとロックは狼の肉を解体して、木の枝に串指しにして火の周りに刺した。
「おお......いい匂いっすね......」
焚き火で焼いた狼の肉の匂いを嗅いでロックは微笑えんでいる。
「それじゃあ、いただきましょうか」
リボンは串指しの狼の肉を手に取り、続いてメガネ、ロックと手を伸ばし、最後にメコが取った。
「それじゃあ、確認しようか」
メガネが肉を片手に地図を取り出した。
「確かそれ、あの住職さんにもらったやつっすよね」
「うん、狼寺の中からメコが巡る五ヶ所に目印してもらった」
そう言いながら肉に噛みつく。
「次の狼寺まで結構あるわね......食料持つかしら......」
リボンが覗き見るために近づいてくる。
「そこでなんだけど......」
メガネは申し訳ない程度にメコを見た。
「......?」
「この先にある"コミュニティ"......つまり、人々が集まる街に立ち寄ることを提案する。メコさえ良ければね......」
いかがでしたか?
人々が集まるコミュニティ......
人間に恐怖心を持つメコは大丈夫でしょうか......?
次回もお楽しみに!