月光もしくは星空
夜にも飽き出す頃合いに。
僕の歩みは早くなる。
厚手のコート、厚手のブーツ。手招きやまぬ窓を閉め。
友を呼ぼうかひとりで行くか。そんな迷いを、コーヒーと共に飲み干した。
ここで新しい迷い。あてもない、さてさてどこへ行こうかな。
夜と昼とで、行き先は変わる。
雑木林の暗闇は怖い。大通りの喧騒は怖い。
となれば、暗闇の大通り。
僕の歩みは早くなる。
音無し道路に差し掛かる。ふと立ち止まり鑑みる。
行けども行けども場末のようだ。
さまようたぬきに、眠らぬタクシー。やたらと明るいコンビニエンス。
こんな当然の光景に、僕は胸が躍るような、それとも感傷だろうか。
言葉に出来ない心持ち。それをぶら下げ、夜の街に直線を描く。
赤ら顔のサラリーマンとすれ違い、僕みたいだ、と自嘲する。
お酒に頼る酔っぱらい。下戸の僕は、僕自身に酔っぱらう。
それが醒めるのに必要なのは、あと何年と何か月?
目的地は待ってはくれず、さながら急行列車の足は、早くも既に終着駅。
歩道橋にてため息ひとつ。夜風寒風を身に受けて立つ。
空を仰げば、ただ曇り。大通りには僕ひとり。
望んだものは月明かり――月光もしくは星空を、ただただ拝み待ちぼうけ。
部屋からここまで一時間。帰路の道のりは三時間。
友を連れてくればよかったと、一時間前の僕を睨んで。
目覚める前にさようなら。
僕はこれから眠ります。