決行前夜
多忙につき今回は短めです
「あー!!!あんたは昨日のイチャイチャしていたバカップル!!」
アキが叫ぶと、ガンッ!と壁に頭をぶつけるクリス。
「不名誉すぎる称号です!今すぐ撤回していただきたい!」
「っていうか君!それ、フブキちゃんのコスプレだよね!?」
アキはクリスの衣装を凝視しながらいいました。
「違う!ってこれ説明するの何回目!?」
クリスは心底うんざりしたような表情で嘆きました。見たところ、連れの女性もだいぶ……というか相当賑やかな女性のようなので、そこにアキが追加されるとクリスとしては手に負えない状況なのでしょう。…しかしご安心を、クリスにも味方がいます。
「そうですよ!クリスはクリスなんですから、クリスはクリスのコスプレを……ってコスプレってなんですか?」
「姫様は黙っていてください!」
あらら、余計なお世話でしたか…
「説明しよう!コスプレとは、コスチュームプレイの略で…」
「説明しなくていい!」
「アニメのキャラクターの格好をしてプレイをする…」
「しない!誤解招く表現はやめろ!」
「あっ、ちなみにプレイというのは…」
「やめろ!」
「英語で遊ぶって意味で…」
「そのまんま!」
「大人の遊びを…」
「しない!……はぁ、はぁ、一旦ストップ!」
交互にボケるアキとビキニアーマーの女性にクリスは矢継ぎ早にツッコミを入れていき収拾しました。
「……やるなあいつ」
リュウジが呟きます。
「と、とにかく、姫様はあのマイズナー帝国兵とグリムリーパーとかいう一団に追われているんですよね?もう家が割れてるならここにいるのは危ないのでは…?」
「あっ……そうかぁ」
カスミがなにかに気づいたかのように呟きます。
「そういうことなら任せて!みんな私の部屋に来なさい?私の部屋、衣装部屋もあるし、ドレスアップルームもあるし、友達を泊めたりするからすごく広いノ!」
「いやいや、さっきいきなり現れた怪しげな女の部屋に泊まるのはどうかと思うわ!」
ビキニアーマーの女性に警戒心を顕にするレーネ。
「怪しげな女じゃないわヨ!コスプレイヤーのエマ・バネットヨ!」
「存在自体が怪しいじゃない!」
「失礼ネ!」
「まあまあ、ちょっと怪しいとはいえ、別に悪い人じゃないと思う。僕も1日泊めてもらったんだし…」
クリスがフォローします。なるほど、クリスがそこまで言うなら…
「では、私はエマさんを信じます」
「えぇ……」
レーネは不満そうでしたが、私が1度決めたことはやり通す性格だということをわかっているので、それ以上は何も言いませんでした。
「そうと決まれば!」
エマがパンッ!と手を叩きながら言いました。
数十分後、私たちはエマの部屋に移動していました。エマの部屋もリュウジやアキの部屋と同じアパートにありましたが、エマの存在がマイズナー兵士や〝死神〟にバレていないことから、アキの部屋にいるよりは確かに安全かと思われました。
「で、異世界バケーションの制作者に会いたいのよネ?」
「そうですけど…」
私は代表してエマに答えます。
「なんと!都合のいいことに明日イセバケのイベントがあるのヨ!」
「あっ、知ってる。同人誌の即売会だっけ?」
とリュウジ。ドウジンシノソクバイカイとはなんでしょう?何かをする会であるということは推測できるのですが…
「うわ、出たよ同人誌…」
眉をひそめるレーネ。
「そうなんだけど、どうやら主催者サイドでイセバケの制作陣も参加するそうなノ!」
「なるほど、シモン殿に接触するチャンスってことだな」
クリスが言うと、そうそう!と嬉しそうにエマが笑いました。
「でも同人誌の即売会とか私たち別に行く予定ないし、買う予定もないし…」
「大丈夫!そのイベントは同人誌の即売会だけじゃなくてコスプレコーナーもあって、コスプレをしに行く人もいるのヨ!」
アキに説明するエマですが、その様子を見てレーネが露骨に嫌そうな顔をします。
「あー、なんか嫌な予感がするよ……」
「コスプレするのヨッ!!」
「やっぱり!!嫌よそんなの!!」
「……でも、人が集まる場所なら当然敵の邪魔は入りにくいし、仮装するなら大人数でバラバラに行動して敵の狙いを拡散させることもできるんじゃないすか?」
カスミがそんなことを言い始めたので、面倒くさそうだった場の空気が変わりました。
「確かにそれはあるかも……」
「1回やってみたかったしいいんじゃないか?」
「私もやってみたいです!」
アキとリュウジ姉弟が賛同し、私も意欲を示したので、レーネも渋々といった感じで了承しました。
「今回だけだからね!」
「心配しなくても、もうこの世界に来ることもないだろ?」
とリュウジ。
「いや、そもそもシモンに会って帰る方法が分からなかったら……」
「あー、その可能性がありましたね…」
レーネの言葉に私も頷きます。
「まあそれは会ってから考えればいいわヨ!衣装は私が全部持ってるし、明日決行ヨ!」
「ちょっといいすか?自分にアイデアがあるんすけど……」
エマにカスミが言います。
「実は……」




