序
初めてこういったものを使うので何か間違いがあればご指摘お願いします
ようやっと、床がほとんどれなくなったのに彼は気づいた。
恐らく船が湾に入ったのだろう。
とてつもない湿気と熱気と埃臭さの中
ようやっとこのむさ苦しい地獄から解放される。
10日間も船荷と一緒に閉じ込められていたのだ。
今はただ新鮮な空気の中で体を伸ばしたかった。
これからどうすればいいかを考えるのはその後でいい。
船長が来て扉を開けた時
その彼方には夕闇に照らされる都会のシルエットが見えた
ようやっとあの街に入れる
そう思うと鉛のように重く固まっていた体が少し軽くなった
「おい、お前もう直ぐ街へ着く
わかってるとは思うがここから先はお前一人でやっていけよ
船から降りたら俺とお前は全くの他人だ。」
「わかってる、迷惑はかけないさ」
答えてから少し腹の底が気持ち悪くなった
ここからは自分一人。
考えないようにはしていた現実が重くのしかかってきた
警察に捕まれば最低でも銃殺
下手したら故郷の仲間まで巻き添いを喰らうかもしれない。
そんなこと、考えるだけで手から温度が消えていくのがわかった
けれど今更逃げることはできない
船から降りるとすぐビルの路地裏に駆け込んだ
とりあえず日が沈むまではここに隠れていよう
ポケットからパンを出した
船から出る直前船長が投げてよこしたものだった
パンが今の自分の全財産とは笑えたものだが
何も無いよりずっといい
ビルの隙間からは煌びやかな無数のネオンが夜の街を照らしているのが見えた