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狼仙人

作者: 灯宮義流


 少し昔のお話。山間部の村に、嘘つきで有名な子どもがいた。

 まだ十歳を迎えたばかりという若さだが、これがまた頭が良く、嘘をつくのが上手かった。

 普段は非常に優良児を気取っていて、頼れる所も多いので、評判が悪い癖に案外慕われているのだが、彼はそんな人を信頼をあっさりと裏切る。

 村のみんなは、いつも彼の言動には深く注意していたが、隙を突かれてとんでもないところで騙されてしまう。

 かといって、彼の言うこと全て信じないと、たまに本当のことを言い出して人を困らせる。

 ある者は、怪我をした子どもがいると聞いて急ぎ走っていくと、曲がり角に古いバケツがあって、それに蹴躓いて肥溜めへ一直線となった。

 また別の者は、隔絶された村の人間でも知るほどの大物俳優がやって来たなんて聞いて走っていったら、待っていたのは大物のアオダイショウで、散々な目に合ったなどという。

 彼が狙うのは、そういったここぞという時に間が抜ける奴が大半だった。

 でも、ある時は東京のお高い大学を目指せる理知的な受験学生ですら、彼の手玉に取られてしまったというのだから、村人は揃ってため息をついた。

 外からやってきた人間なんてのは、彼にとってはカモの中のカモであった。

 滅多にこの村へ足を運ばない客人に対して、彼は特に容赦が無かった。

 洒落た服を着た紳士が、帰りにはパンツとシャツとシルクハットだけになって帰っていった、なんてことがあったとか、なかったとかも言われている。

 村人は彼のことを、狼小僧なんて言って、密かに恐れていた。

 それでも彼が嫌われないのは、やはりどこか有能な部分があるからで、その悪賢さと人の怒りを恐れない妙な勇敢さに、同世代の子ども達は憧れた。

 もっとも、憧れたところで狼小僧本人は、そんな気持ちは露知らず、彼等を水浸しや泥だらけにしてしまうのだ。


 そんなある日、彼は一世一代の大嘘をつくことを決意した。

 山から村に通じる、谷越えの橋が、この村にはあった。

 つり橋であるために、歩くとすぐにグラグラ揺れるうえに、風が吹くとブランコのようになって、歩くことすらままならないという、危険な橋である。

 その橋の横にある崖っぷちに捕まり、落ちかけたようになって、村の人間を驚かそうというのが彼の作戦だった。

 だが、落ちかけるというのはとても大変なことだ。

 崖っぷちに捕まるのは、漫画のように簡単なことではない。まず握力がもたないのである。

 彼は村の中では運動神経にも腕っ節にも割と長けているほうだったが、それでも所詮は子どもだ。耐えられるわけがないのは、本人が良くわかっていた。

 そこで、崖の横に硬い杭を打ち付け、それにくくった縄を服の中の身体に巻いて、命綱にしようというものだ。

 勿論、崖の下を見下ろされた時に命綱がバレないよう、杭とは出来るだけ密着した位置で捕まり、縄が彼の身体から出ていてもおかしくない理由付けもする。

 彼の話に騙されてノコノコやってきた者は、その只ならぬ事態にオロオロして、間抜けな面をさらすのであろう。

 しかしこれは、あくまで机上の空論である。

 実際出来るかどうかは見てから出なくてはわからないと、彼は夕方頃に村の人間が右往左往して誰が誰だかわからなくなる時間帯に、こっそりと村から抜け出した。

 橋までやってきた彼は、杭は打ち込めるのか、どの程度の長さの縄を用意すれば、崖に捕まった時腕にかかる負担を和らげてくれるのか。

 思ったより検証は困難を極め、ついにはグラグラ揺れる橋のところから崖を眺める羽目になる。

「やっぱり、無理があったかな」

 と、少しがっかりして作戦の練り直しをしようと、彼が立ち上がったその時、突風が橋を激しく揺らした。

 彼はすぐに橋を支えている縄に捕まったが、老朽化していたそれはあっさりと切れて、彼は宙に身を投げ出された。

 悲痛な叫び声とともに、狼小僧は谷底へと頭から落ちていった。


 目が覚めた。

 ということは、自分は生きているのか?

 確かめようとして少年は身体を起こしたが、起きたばかりで意識がぼやけていて、よくわからない。

 やはり自分は死んでしまったのだろうか? 少年が首をブルブルと振るっていると、突然声をかけられた。

「おお、起きたねぇ」

 何かが喉に詰まっているのかと思うほど汚らしい声に、少年は身構えた。

「なかなか元気そうじゃないか。結構なことだね」

 少年はまだ、自分に声をかけてくる者の姿を確認出来ないでいた。

 少なくともまだ気を緩められないことだけは確かだったので、彼はとにかく身を小さくして待ち構えた。

 はっきりしない視界の中で、少年は精一杯に自分の状況を把握しようと、悪知恵で鍛えた頭を働かせる。

 ここは、声や音が反響するように響いていて、しかも辺りの空気もどことなく湿気ているようだった。

 するとここは、洞窟のような場所であろうか? 深いところまで来ているのか、少年の身体には、流れ込む風すら感じられなかったし、音も聞こえなかった。

「ここは、あの世?」

 とりあえず状況を把握するために、目の前の話せる相手と会話を試みた。

 返事は、意外と優しい口調で返ってきた。

「大丈夫だ。アンタはまだ生きているぜ」

「助けてくれたの? アンタが」

「まあ、落ちてきたアンタの足を掴んで、ここまで運んできたのは私だね。傷つけるつもりはないし、一応助けたってことにしておくかな」

 何か含みを入れた言い方が気になったが、とりあえず言うことを信じて、彼は自分が生きているということにしておいた。

 いい加減ぼやけた視界をハッキリさせるために、彼は大きく深呼吸して己を落ち着かせて、目を凝らして自分の話相手の姿を確認した。

「……ぁぁっ」

 言葉が出なかった。

 目の前には、狼がいた。

 だがそれは、四本の足で大地を踏みしめるような、普通の狼ではない。

 そもそも、狼が人間の言葉を話していること自体、奇怪このうえないのだが。相手は、そのうえで人間と同じ骨格をしているのである。

 あげくにボロボロの甚平服まで着て、もしその顔を正面から見なければ、少し腰の曲がった毛深い人間に見えるやもしれない。

 こうして意識してみると、洞窟の中はやけに獣臭さがするような気もした。

「化け物! 僕を食う気だ!」

「話を聞きなさい。私はお前に危害を加えるつもりはないって言ったぜ。狼小僧くん」

「ど、どうして僕がそう呼ばれていることを知ってる?」

「グッグッグッ。何を隠そう、私はね……」

 と、小さく笑いながら、狼は少年に顔を近づけて、あっさりと告げた。

「私は、仙人。だから君に触れるだけで、君が今までどんな人生を送ってきたか、その概要がわかるんだよ」

「……狼が仙人だって? ハハハ。そんな馬鹿馬鹿しい話、嘘にもならないよ」

「ああ、そりゃそうだがなあ」

 そして狼は、少年の顔に鼻を押し付けてきた。

「だから、私は狼仙人なんて呼ばれてるのさ」


 外に出ると、すぐ隣に猫の額ほど開かれていた畑があった。

 少年は狼仙人の命令で、その稲畑から米を刈り取り、一人で運ばされていた。

 そして、仙術で米を全て綺麗に精米すると、そのまま命ずるがままに炊かされていた。

 これまた、仙術で保存していたという猪の肉をおかずにして、二人(というべきかは微妙であるが)は一足遅い夕飯にありつくこととなったのだ。

 狼仙人は炊き上がっている白米の匂いに、涎を垂らしていた。

「なかなか米の炊き方は上手いようだねぇ! 早く食べたくなってきた!」

「あの、一つ質問しても良いかな」

「なんだい、小僧」

「仙人っていうのは、こういう俗世の食べ物を食べなくても良いんじゃなかった? 確か、かすみを食って生きると聞いたことが」

「ああ。それでも勿論生きられるのだけどね」

 といって彼は、用意した薪に仙術で火を起こすと、肉をそのうえに晒して焼き始めた。

「やっぱり、俗世の食い物には敵わんぜ。グッグッグッグッ」

「よくそれで仙人をやっていけるね」

「マトモじゃないから、こんな洞窟に住んで、いつも米炊いて肉を焼いてるのさ」

 なるほど、と少年が納得したところで、米がいい具合に炊けたらしい。

 この狼がどこから調達したのか知れないが、米は大きな鍋で炊飯されていた。

 鍋が大きいだけに、その量もなかなかにすごかった。少年も、我ながら良い出来栄えに、思わず舌が出て、ペロリと鳴った。

「ではでは、頂こうか!」

「い、いただきます」

 あくまで喜々とした感情を殺しながら、少年はその食事にありついた。

 毒やらなにやら入っていないか、彼は不安に思っていたが、すぐ米の甘い香りに理性を忘れ、がっついていた。

「これで味噌汁があったら、文句の一つも無かったなあ、小僧」

「……そんなものまであったの?」

「おう。前の弟子が味噌作りが出来る奴でな。毎日飯にはつけていた時期があったねえ」

「弟子って、仙人の?」

「当たり前よ。落ちこぼれでも、こうして火は付けられるし」

 と、狼仙人が指にロウソクの如く火をともし、フッと息を吹きかけて消した。

「少しだが雲に乗らなくても浮遊出来るし」

 そして、座禅を組むと、狼仙人は少し空中に浮いて見せた。少年は目を改めて見張った。

「他にも壁をまるで地面を進むかのように歩けるし、小さな熱線を発射して木の実やら果物を落とせるし、仙人になると孤独だけど、楽なモンよ。それを教わりたいっていうから、私はソイツに教えてやったのよ」

「ほ、本当に!」

「ああっ。見事卒業した後は、どうなったか知らないがねえ」

「僕も修行すれば、アンタみたいな力がつくってわけだね!」

 興奮する少年に対して、狼仙人はさらっとこう返した。

「もちろん。私だって元は人間だったからね」


 村に戻るという選択肢を捨て、少年は狼仙人の下で修行を積むことと相成った。

 とはいっても、最初のうちは物凄く単調でつまらない修行ばかりであった。

 何せ、木の実取りなどの食料調達をはじめ、掃除に巻き割りと、全てにおいて雑用なのである。

 そして今日は、巻き割りだった。

「我慢の中に仙術の基本あり。雑用は人を一番苛立たせる、だからそれに耐えるこそこそ我慢の修行というわけ」

「くぅっ!」

「はい。頑張って薪を割って!」

 一、二の随分と早い掛け声で、少年は薪を割っていた。

 この谷底にも日差しは容赦なく差し込んでいて、炎天下は少年の体力を吸い取るようにして奪っていく。

 少年は、かれこれ、こんなことを続けて三週間目に突入していた。

 家族も村のみんなも、自分のことを探しにこようとはしなかった。

 いや、本来なら谷底に人間が踏み入れる道らしい道など、そもそも存在しないのだ。

 狼小僧と呼ばれた彼は、今はそんなありえないはずの奇跡的な境遇の中で生きているのである。

「あー、肩こっちゃったな。肩揉み」

「は、はいっ!」

 命じられたことであれば、どんなに不満であろうとやらねばならない。

 どんなに疑問があったとしても、もし不平不満を訴えれば洞窟の外に捨てられて、寂しく一晩を野で過ごすになったことすらあった。

 それでも少年は、仙術という人知を超えた力に、大いなる魅力を持っていた。

 その力があれば、自分の嘘はもっと飛躍させることが出来る。

 あの崖っぷち作戦だって、仙術を使って飛ぶことが出来るようになれば、もう命綱なんて気にしなくても出来るのだ。

 少年は、あくまで人をコケにして生きることこそが、己の幸せだと確信したのだ。

 が、そんな確信に反して、欲望に駆られた彼の知性は、日に日に痩せ干せっていくようだった。


 修行を始めて、半年になる頃だった。

 簡単に習得出来る物ではないとはわかっていたが、こうまで同じ雑用ばかりさせられていると、ふつふつと猜疑心が沸いてくるものである。

 いつも不満を言えば放り出されていたが、ここまで疑問が膨張してしまうと、一度しっかりと聞かずにはいられなくなる。

 少年は勇気を出して、しかしいつものように怒りや不満を丸出しにするのではなく、あくまでさりげなく話を出すことにしたのだ。

「僕は、こうして半年間鍛錬を積んできました。でも、まったく自分に力がついた実感がないのです」

「ほほう、実感ねえ」

「自分なりにですが、僕は身を削って頑張ってきました。何かしら進歩を感じ取れる方法があれば、教えてください」

 真剣で、しかし疑心を含んだ目で、師を見つめる少年に、狼仙人はその突き出した口をかきながら、言った。

「なるほどねぇ。うん、では試しに空中浮遊が出来るようになったか、試してみるか」

「浮遊といいますと、座禅で飛ぶあれですか」

「わかっておるのなら、早くそこで座禅をしてみなさい」

 そう狼仙人にさらっと言われて、少年は慌てて座禅を組んだ。

 普通修行といったら、こうして座禅を組んで精神集中するという印象が強い。

 だが、少年は修行中始めて、このように座禅を組むことを命じられていた。

「…………」

「目を瞑って頭に浮かべてみなさい。そして、唱えるようにして思い続けるんだ。宙に浮きたい、宙に浮きたい、宙に浮きたい」

「……宙に浮きたい」

「宙に浮きたい、宙に浮きたい、宙に浮きたい、宙に浮きたい〜」

「……宙に浮きたい……宙に浮きたい……宙に浮きたい!」

 すると、少年の身体が、少しだけ上に持ち上がった。

「おおっ!」

「気を緩めてはいかん。ほら、尻が落ちたぞ」

「ああっ! えーっと、宙に浮きたい宙に浮きたい宙に浮きたい宙に浮きたい宙に浮きたい宙に浮きたい」

 また彼が念じると、落ちた尻がまた上にあがり、足も地上から離れた。

 狼仙人の浮遊からすれば、まったく大したことの無いものである。

 見たところ、蟻が通れるか通れないかという、その程度のものだ。

 だが、少年にとって、それは感動的な瞬間だった。

「飛べて、いや、浮かびました! 身体が浮かびました!」

「うむ。君はやはり筋が良い。このまま誠実に雑用の修行を続け無我に辿りつけば、今度は雲も呼べるようになるであろう」

「は、はいっ!」

 少年は、立ち上がって師に一礼した。

 自分に仙術の初歩が使えるまでにしてくれた御礼と、疑った謝罪をこめて。

「じゃあ早速だけどね、猪を狩ってきなさい」

「ああっ、わかりましたっ!」

 狼仙人にまた惜しげもなく命じられた彼は、洞窟を走って後にした。


 修行が始まってから一年を軽く過ぎた。

 いまや、少年の身体は干物ではないかと思えるほど、痩せ細っていた。

 特に顔は以前の原型を残しておらず、下手したら眼球がポロンと落ちてきそうなほどだ。

 あれからさらに断食を命じられた彼は、かれこれ一ヶ月の間、水だけを飲んで暮らしてきた。

 それでかつ、あの雑用を毎日のようにやらされていたのだ。おまけに師は、気まぐれで滝登りや走り込みまで要求し始めた。

 基本の修行とやらは、ようやく修行らしくなったと同時に、最大の過酷な面へと差し掛かっていたのだ。

 そんな状態で一週間、少年はへばりながらも膝をつかずに働き、鍛錬し続けながら生きていた。

 だが、とうとうそれも限界となってしまった。

 師の肩を叩いているうちに、少年は力尽きて倒れてしまった。

 ヒーヒーと苦しそうに息を荒げる少年に、狼仙人はため息をついて見下ろした。

「筋が良いと思ったのに。もう根を上げてしまったんかね」

「いや、そんなことは、ありま、せん」

「良いのよもう。タダで搾り取れる人間じゃなくなったからね、君は」

 目を閉じようとしていた少年の目が、パッと開いた。

「どう、いう、こ、とで」

「なあに、簡単な話。ほとんどの話がウソだったってこと」

 そう全てをいつものようにあっさりと明かしたかと思うと、狼仙人はニヤリと笑った。

「私が元々は人間というのがまず嘘ね。君が最初に私をそう呼んだ様に、化け物……あるいは妖怪といったところかな」

「ウ、ソ?」

「以前弟子がいたというのも嘘。昔ここには人間が住んでいた小屋があってね、そこからコッソリ味噌を奪ったあげく、物足りなくなって人間ごと手に入れてしまった。ついでに畑も奪った。それだけの話」

「その、ひと、は」

「夫婦だったんでね。妻を人質にして夫を奴隷に仕立て上げてやった。まあ、妻に最低限の水と食い物だけあげてたら、栄養足りなくてすぐ死んじゃったんだがね。夫をそのまま十年くらい騙したけど、ソイツは病気にかかって死んでしまった」

「あぁぁぁぁ……」

 少年は呻いた。だが、怒りに燃えたところで、もう立ち上がることは出来なかった。

「あとね。私が元々人間じゃないってことは、つまり生きてる人間が仙術を使うことは無理ってことでもあるのは、わかるかな?」

「え? じゃ、あ、あれ、は? ぼくの、せん、じゅ、つ」

「私が君に仙術をかけて飛ばしたに決まってるでしょう? 君も昔と比べると随分頭が回らなくなったようだね」

「ぅ、ぁぁぁぁぁっ……!」

 いくら腹の底から咆哮しようとしても、力が入らないので呻き声にしかならなかった。

 少年は突然悲しくなって、か細い声で泣き始めたが、水分が足りず、まともに泣くことすら出来なかった。

 狼仙人は、不意に倒れた少年の心臓あたりに手を置いた。

「じゃあ、最大の目的を果たしましょうかね」

「な、に、を、する」

「君の魂を私の仙術の源にするのさ。百五十年単位でやらないと、私もこの術が使えなくなってしまったね。丁度あと二年後だったから、君は本当に丁度良い奴だった」

「く、そぉぉ……」

「じゃあね。あの世にいったら本当に仙術を教えてあげるから、勘弁してな。グッグッグッグッ」

 最後に気味の悪い笑い声をあげながら、狼仙人は仮にも弟子だった少年の最後を看取った。

 魂が抜けて、ミイラのように萎れた彼の身体は、どんどん灰になって、やがては消えた。

「彼の炊くご飯、好きだったんだけどなあ」

 少しがっかりそうにして、狼仙人は洞窟の中に入っていった。

「さて、次に人間が橋から落ちてくるのはいつかな。グッグッグッ」

 そして寝床に寝そべると、また気持ち悪く笑った。


 だが、彼の願いは叶わなかった。

 狼小僧が落ちて死んだことがわかった村の人々は、協力してもっと安全な橋を作ることを決定したのだ。

 彼の死を無駄にしまいと作られた橋は、今までとは別の場所に作られ、つり橋でなくもっと頑丈なものとなった。

 いずれにせよ、既につり橋は安全上の問題から廃止されてしまった。今谷の上に見えるのは、もう空だけである。

「やれやれ、残念だ。引っ越さないとね」

 狼仙人は風呂敷に荷物を纏めると、谷底の霧の中へと消えていった。

 これから彼は、当分霞かすみを食って生きていく羽目になった。


友人に「漫画を描くのだけど何か良い話のネタはないか」と言われて、その場で考えたプロットが採用されたので、自分も独自に書いてみることにして、結果できたのがこれ。最後は段々とグダグダが身に染みて面倒になり、端折ってしまった部分があるのが悔やまれる。案としては褒められたし、自信はあったのですが。書いてて疲れるってことは、また読み難い文に戻ってしまったということか……。

ちなみに、連載停止作品を除くと本作品がどうやら記念すべき50作品目になるようです。

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