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穴に向かって叫ぶ!  作者: マタゼロ
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☆04話 穴に向かって叫ぶのです!②

 


「不満に思っている事でもなんでも、その穴に向かって叫んでごらんなさい」


 穴を覗いたまましばらく黙っていると、女神様から、そう促されます。

 勤めていた会社への不満はセコセコ書きました。次はこれでしょう。マタゼロは、覚悟を決めて叫びます。


「ふっざけるなよー! 格差社会! 金持ちばかりに政治家させんなよー! 飛行機でファーストクラスばっかりに乗ってるやつが庶民の気持ちがわかんのかー! 選挙の時だけいい人ぶるなー! 自分の選挙区だけでいい人なんだろー! ポーカーみたいに政治家全部取っ替えさせろー! 応援するやつも無理やりすすめてくんなー! 好きなやつに入れさせろー!」


 一庶民として、不満に思っていた事を一気に叫び、ハアハアと息を切らします。

 何だか、心が晴れていきます。


 マタゼロの不満など、大勢の庶民の中のゴミ以下の様なもの──ナノレベルの一庶民の憤りに過ぎない……。

 政治と宗教ネタは危険だとは聞いている。こんなところでコソコソ叫んだら、思想犯扱いされてしまうかもしれない危険を犯した……。


 赤ピー(警告)がくるかもしれないが、心が凪いでいます。


 不思議です。腹に溜まっていたモザモザが無くなって、スッキリしています。


「どうですか。あなたの不満は穴に吸いとられたのです。さわやかな気分なのではないですか」


「さわやか? ……それとは違いますが、スッキリしました」


 マタゼロの顔に笑顔が浮かびます。


「このようにあなたの吐き出したなんやかやが、溜まっていって固まりとなり、魔王の核となるわけですね──さて、次はスキルについて話し合いましょうか」


 マタゼロが、体を起こして土下座から、正座の姿勢になると、穴は消えました。女神様がマタゼロのすぐ前にやって来て、厚手の座布団を差し出してきます。


「どうぞ」

「あっ、ありがとうございます」


 マタゼロはお礼を言って座布団を足の下に敷きました。ふわふわとして、それでいて適度な弾力があり、快適な座布団です。

 女神様も座布団を敷いてマタゼロの前に座ります。向い合わせで正座する形です。


「ほーれ」


 女神様が気の抜けた声で左手を振ると、マタゼロの右側に文字のビッシリ浮かんだ21インチ位の画面のような物が現れました。


「そこにスキルが書かれてます。好きなものを選んでいいですよ。画面にタッチしてスクロールしてください」


 スキル──心が踊ります。何をとったらいいでしょうか。収納、鑑定、翻訳などの定番は貰うとして、防御系や攻撃系……生産系もほしいよな。

 生産系と考えてマタゼロはハッとします。チートです。内政チートです。難しいことや、特に頭を使うようなものは出来ませんが、マタゼロにもできるものを思いついたのです。


「紙おむつを作るスキルも欲しいのですが、大丈夫でしょうか」


 前々から思っていたのです。異世界の女性は尿漏れしやすいと……。

 ちょっとの事で、漏らしすぎです。


 あちらで漏らし、こちらで漏らし、ここでも漏らし、みんなで漏らし。


 ──異世界人の股間はどうかしてるんでしょうか。


 紙おむつなら、赤ん坊からお年寄りまで需要があるはずです。マタゼロ王国の国民は紙おむつを標準装備にすれば、揺りかごから墓場まで面倒見の良い、内政チートです。どこに出しても恥ずかしくない、内政チートです。感謝されるのは間違いないでしょう。人望を集めてしまいます。


『マタゼロ王ばんざーい! 紙おむつばんざーい!』


 まだ見ぬ国民達の、マタゼロを称える声が聞こえて来るようです。


「ふむ、紙おむつですか。いいでしょう。他には希望がありますか」


 女神様は悩むことなく快く承諾してくれました。







 ──数刻後、マタゼロと女神様は向かい合って立っていました。


「これからわたしの世界に行ってもらいます。自由にあなたの世界と行き来できますが、穴はわたしの世界でしか開きません。マメに行って中にせせこましい不満をせっせと溜めるようにして下さいね」


「分かりました。女神様には感謝します」


 輝くような微笑を浮かべる美しい女神様に、マタゼロは頭を下げます。

 穴を掘って叫んでるつもりの小説書きでしたが、本当に穴掘りスキルを手に入れました。いくらでも叫べます。おまけに異世界で贅沢な暮らしができそうです。


「温泉つきの家とメイド達は、もう向こうに用意してありますからね」

「あっありがとうごぜぇます!」


 感動のあまり言葉がうまく紡げません。涙がにじみます。


「では、がんばって! ほーれ!」


 左手を振った女神様のかけ声とともに、マタゼロの足元が光輝きました。





 ハーレムタグはつけられません。



   ☆チキンカオスワールド☆



 隊員10羽は、隊長に引き連れられて、切り立った崖の上に来ていた。

 これから特別訓練が開始される。

 吹き上げてくる強い風が、彼らの羽根を揺らしていた。


「コッコケ、コッ、コッ! ズ、ズゥゥ」


吹き荒ぶ風邪がよく似合う。チキンタッタは激しく咳き込むと、垂れてくる鼻水を啜った。


「風邪か! 訓練を前に体調を崩すとは、たるんどるぞ!」


 その様子を見咎めた隊長は、チキンタッタの前まで来ると、怒鳴りつけた。


「インフルエンザじゃないだろーな」

「あれはヤバイぞ」

「移すなよ」


 みんな風邪になるのを嫌がっていた。


 回りの隊員達のボソボソ話す声を耳にして、隊長はサッと離れた。


「今日は、ここから飛び降りることにする。風に乗り、激しくはばたくのだ」


 チキンタッタから、離れながら話す隊長の言葉を耳にして、皆で思った。


──それ、風になるんじゃね?



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