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穴に向かって叫ぶ!  作者: マタゼロ
35/38

☆35話 好意ではありませんでした

 


「さ、ここだ」


 しょんぼり付いていくと、オッサンは一つのドアの前で立ち止まりました。右側階段の上には廊下があり、いくつかドアがありました。

 その中でも『資料室』とプレートがついているドアの前です。サッと回りを眺めると、廊下の突きあたりには豪華な扉があり、『ギルド長室』のプレートが見えました。『測定室』『検査室』『応接室』……。


「いま、開けるから、入れ」


 いくつかドアのプレートを読んだところで、オッサンに声をかけられ、他のドアを見るのをやめます。

 オッサンが手首をドアノブのところにかざしました。白金のギルドカードのついたブレスレットをしています。自然にドアが内側に開きました。


 ――オッサンて、実は超すごい? ギルド長とかだったっけ。


 オッサンのカードの四隅には宝石のような粒が埋め込まれているのが見えました。今まで気づいていなかった、オッサンのブレスレットに驚きます。自分はおしゃれなブレスレットにしているオッサンを憎いと思います。『オッサン』と書いてあるギルドカードを額に立てればいいと思います。


 白金カードに驚き、自動ドアなら、ドアノブいらなくないかとか思いながら、開いたドアの中を覗きます。


 本や紙の束が入った、木の棚が並んでいます。部屋奥の窓のある壁側に細長い木の机と椅子が5脚ほどあります。


 中に入ると、オッサンも続けて中に入ってドアを閉めました。閉めるのは手動でした。ドアノブいりました。


「初心者用の迷宮だな」


 オッサンがそう言って左端にある棚の方に行きます。


「あ、『ドンドロドン迷宮』と『デンデロデン迷宮』の物がみたいです」


 オッサンの後を追います。


「この辺が迷宮資料だ」


 オッサンが指差した棚を見ると、木の札が出ていて、『迷宮』と書いてあります。棚にはいくつか札があって、札で分かりやすく分類されているようです。


「持ち出しは禁止だ。汚したり、破いたりしたら弁償になるから、気をつけろよ」


 オッサンの言葉に頷きます。


「普通は窓口を通して、閲覧料が500ゼニアかかるが、今日はサービスだ」


 オッサンの言葉に少し驚きます。資料を見るのに、お金がかかると思っていませんでした。


「えっ、お金いるの?」


「ん? 本や資料は貴重品だぞ。新しい情報が入れば、書きかえるし、保全や維持費を考えれば当然だろう。王立図書館なんて、保証金に1金貨、閲覧料に1銀貨かかるぞ。ここはギルドだから、良心価格だ。まあ、下に無料で見られる簡単な魔物や迷宮の資料はあるがな」


 なんとなく、無料の公共施設の感覚でいました。そうでした。ここは異世界です。たいていの異世界で本は貴重品でした。魔法あるのに、何でもできそうなのに貴重品でした。きっと、人力で1枚1枚手書きしているのです。


「そうだった……」


 納得しましたが、ここまで連れて来て、無料にしてくれる、やけにサービスのいいオッサンをおかしく思います。


 ――女の子と話すことを阻止した詫びのつもりか? いや、親切のつもりでいるはずだ。ハッ、ま、まさか、わざと邪魔された!?


「あのー、サービスしてくれるのはなぜでしょうか」


 もしかしたら、聞いてはいけないことだったかも知れませんが、聞かないと落ち着きません。

 場合によっては、借りを作らないために、500ゼニアをスパッと払う必要があるでしょう。


「ああ、幻の『モノスゴイハリキリ草』の礼だ。ミルミールが感激してたぞ。あれはオークションに出すつもりだ。いったい、いくらの値がつくかと楽しみだ」


 過剰な好意ではありませんでした。


「あれって、そんなに珍しいものですかね?」


 もう売ってしまった物を、気にしても仕方ないのは分かっていますが、そんな言い方をされると気になります。


「まあな。見つけるのも大変だが、見つけても、一度採取すると500年は生えてこないと言われてる。珍しいというか、もはや伝説だな。ましてやあれはオリンボウズ神山産だろ。非常な高値で売れるのは間違いないな」


 オッサンの言葉に驚愕します。一度採ったら、500年? 誰がそんな長生き観察したのかは分かりませんが、あそこでは、もう採れないのは分かりました。

 ジュリアスくんは根があれば、またすぐ生えてくるとか言っていたので、そんな貴重な物だとは思っていませんでした。


 ――ジュリアスくん感覚の『すぐ』か!? 他のはどうなんだ。


 長生きしてそうな、これからもしそうな神狼のジュリアスくんの言ったことに懸念を持ちます。


「あ、あのー、ちなみに他の『スゴイシリーズ』の薬草は、一度採ったらどのくらいで生えてくるんでしょう?」


「ん、他のはすぐだな。一年もすれば生えてくるだろ。けっこう見つかるしな。『モノスゴイハリキリ草』に比べれば、そこまで珍しいものじゃない。」


 頭の中でゴーンと音がします。異世界の鐘とは違う音です。


 ―― 一年!? 一年て長いよね? ジュリアスくんの感覚が違うのは分かるけど、オッサンの感覚もおかしくないか!?


 もうオリンボウズ神山のあそこで、薬草は一年は採れないのは分かりました。


「オリンボウズ神山の薬草はそれだけで貴重だからな。これからもよろしくな」


 ニコッと可愛くない、いい笑顔で言われます。


 そう、山は広いです。他にも生えているところはあるはずです。安全に一人で探せるかは分かりませんが……。

 またジュリアスくんに教えてもらってもよさそうですが、あまり頼りすぎはいけないでしょう。力を借りると命の危機になるかもしれません。


「オークションでいくらで売れたかは、絶対に教えないでください」


 これだけは真剣に頼んでおきます。オッサンの口ぶりから、聞いてはいけない金額で売れそうなのが分かります。

 聞かされたら、きっと、きっと身悶えて床を叫びながら転がるはめになるでしょう。泣きながら、三日三晩サンバを踊ることになりそうです。(時々上げる奇声付き)


「おお、わかった。教えん。……あ、あったぞ」


 真剣に見つめて頼むと、オッサンは少し引いた表情をして頷いた後、棚に手を伸ばします。


「『ドンドロドン迷宮』と『デンデロデン迷宮』だったな」


 そう言って棚から二冊の本を取り出して渡してきます。


「『ドンドロドン迷宮』は貴重な鉱石や宝石がとれる。貿易港区に近いところにあって、行くのに便利だから、人気があるな。『デンデロデン迷宮』は、けっこうあちこちにあるタイプの迷宮だ。少し離れたところにあって、罠とかが多いんだ。三層までなら、どちらもスライムやゴブリンなどの下級魔物が出て、そんなに変わらない。講習を受けるのが目的なら、罠の種類が学べて、空いてる『デンデロデン迷宮』がおすすめだな。講習の受講申込みは、前にも言ったが、ここでも、迷宮でもできるから、どこにするか決まったら好きな方でしろ」


 受け取った資料本が、ずっしりと重いです。けっこう厚みがあります。


「じゃあ、おれはもう下に戻るが、読み終わったら、それは元の場所に戻しておいてくれ」


 オッサンは本を抜き出して空いた、棚の隙間を指差します。


「わかった、ありがとう」


 コクコクとお礼を言って頷いてみせると、オッサンは手を軽く振って、資料室を出ていきました。


 もう、これ読む必要なくなったんじゃ……とか思いながら、窓の側の机に向かいます。親切な説明で、重い本の価値を軽くしてくれたオッサンに複雑な感謝をします。


 ドサッと机の上に本を置いた後、柵のような背もたれのある木の椅子に腰かけました。


 ――この場合、『デンデロデン迷宮』から見るべきだよな。


 何だかもう、明日の講習は『デンデロデン迷宮』で決まった気がします。


 『デンデロデン迷宮について』と背表紙に書いてある本を手にとって、読み始めます。


「ふん、ふん……」


 迷宮は広さと階層で小型・中型・大型に分けられるようです。階層の広さにもよりますが、普通、30層までが小型、中型は31層以上、60層未満の物をさすようです。60層越えは大型です。『デンデロデン迷宮』は55層で中型です。


 このランクの人ならなんとか潜れるんじゃない? と、分かりやすいようにギルドカードの素材と同じように難易度が表されています。さすがに最下層はもう少し上のランクにならなければダメそうですが。

 『デンデロデン迷宮』は銅級でそこまで難易度は高くありません。3層までなら、『ぺーぺー』でも大丈夫そうです。


 本は1層ごとに出る魔物や罠の種類などが書いてあります。その層の地図もあります。


「1層はスライムとマッドマウス、2層がスライムとマッドマウスとマッドラビット、3層がその他にゴブリンが出て、ごくごくたまに下層から昇ってくる、マッドウルフには、要注意と……」


 魔物の絵もあり、特徴も書いてあります。マッドとつくだけあり、どれも可愛くない動物の絵です。ネズミやウサギにおっきな牙があります。

 

 ・スライム──様々な種類がいる。物理攻撃、魔法攻撃しか効かない個体もいる。下層には、たまにものすごく強い個体もいるので、よくよく注意すること。弱いという先入観で見ないこと。


 ・マッドマウス──上層のみで現れる。個体としては弱いが、集団で群がってくる場合は注意。


 ・マッドラビット──すばやい動き。脚力が強くジャンプして飛びかかってくるので注意。下層では飛躍的に身体能力が上がる。眷属のいる巨大なものには特に注意。


 ・ゴブリン──棍棒、剣、槍を持って襲ってくる。下層に出る者は弓や魔法も使ってくる。下層に行くほど強い個体が出現するので注意。


 ・マッドウルフ──すばやい動き、足が速く、炎、氷魔法などを使ってくる。(ランクが低い者は気配を感じた瞬間、逃げること。けして戦わないこと。逃げても無駄かもしれなくても、一縷の望みにすがって、必死で逃げること)


 マッドウルフのかっこ内の文を読んで、鼻に皺が寄ります。マッドウルフ──ヤバすぎます。


 魔物は何だか下層にいくと、形態や能力が変わってくるようです。詳細が知りたければ、魔物図鑑の方を見るように書いてあります。今は三層までの事が分かればいいでしょう。


 罠は落とし穴、槍や弓が飛んだりしてくる罠が、三層までにはありました。この下の層になると、転移罠とか岩ゴロゴロとか、炎や氷の魔法系の罠とかがあるようです。

 幸い固定罠のようで、階層地図に罠の場所が書いてあります。ごくたまにランダム罠が出現するようですが、それに引っ掛かった場合は『運が悪かったとあきらめろ』と諭してあります。親切です。


「スキル発動! 『写しとり』!」


 本の階層地図が書いてあるページの上で両手で丸い円を作って叫びます。


「あー、ここ、ここが資料室!」


 3層分、地図を写し取ったところで、ドアの前で数人の人の気配と、高い女の声がしました。




えー、今日は三話投稿します。後書きの修正(?)報告です。つい、この間、完結してから、異世界ジャンルに引っ越すとか、書いていて、前の方の後書きも詐欺になってまーす。とか、書いていたのに、いつの間にか移っていました。気にしてて、眠いときにでも、やっていたようです。記憶、ありません。そう、夢遊病ですね。

 いつ、異世界転移に転移したのでしょう。すみません、嘘つきました。もう、詐欺じゃ、なくなってました。あ、もう一つジャンル詐欺の可能性が……この場合、どちらが優先されるのでしょうね? タグつけのところをみると、異世界でしょうか。そして、コソッとコメディとつけるのが、正しいんでしょうね。コメディはジャンル詐欺じゃないんでしょうね。

 嘘ついて移動してて、すみません。m(_ _)m (ふふ、穴がいつの間にか転移してたよ。これじゃ、詐欺じゃなくなっちゃうじゃないか。詐欺と書いた、あらすじ詐欺になる?)

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