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穴に向かって叫ぶ!  作者: マタゼロ
24/38

☆24話 採取した物が売れました

 


  「ほら、できたぞ」


その場にくずれ落ちそうな、憤りと絶望を味わっていると、オッサンが声をかけてきました。


 ハッとしてオッサンの方を見ると、長い鎖のついた木の板を差し出してきます。


 「普通は登録料が、500ゼニア、アクセサリー加工代金が、500ゼニアかかるが、アクセサリー加工代金は負けてやろう。あ、そうだギルドカードを無くすと罰金を含めて、再発行に10000ゼニアかかるから、気をつけろよ」


 差し出された木の板を受け取ると、ペンダントのように首にかけるようになっているようです。


 「これを首にかけろと?」


 「ああ、冒険者活動をしている時は、身に付けるようにしてくれ。身分証明になるし、危険がある依頼や迷宮に潜る時は特にな。身に付けていれば、生存確認できるようになってるんだ。

 ペンダントにしたり、腕輪にしたり、アクセサリーにして身につける奴が多いんだ。おまえの場合はそれでいいだろ。初めてアクセサリー加工までしてみたから、サービスだ」


 このアホウ板を首から、ぶら下げなければいけないようです。仕方ありません。

 見えないように、ジャージの中にしまってしまえばいいでしょう。板についた鎖の部分を手に持って、首にかけ……かけられません!


 頭をくぐらせようとして、鎖が額の当たりで止まりました。どうやら短いようです。ぶら下がった板が、眉間から鼻筋にそって垂れ下がります。

 この状態はいけません。顔に『アホウ』と書かれた板をぶら下げている人になってしまいます。


 「サークレットでございますね」


 ミィがこちらの顔を見て、感心したように頷きます。


 「……すまん。ペンダントのつもりだったんだが、短かったようだ」


 オッサンが口元を歪ませた複雑な表情で、声をかけてきます。笑いを堪えているに違いありません。


 「こんな、顔に板をぶら下げてるの、なんか邪魔だしー、サービスでもこれはないよなー、直して貰えないかなー」


 そう言いながらオッサンを恨みを込めて見つめます。


 「……ああ、直そう。その間に売りたい物があるなら、行ってきたらどうだ。戻ってきたら、売却ポイントはこっちで付けてやるから」


 オッサンの言葉に額の板を外して、カウンターの上に置きます。


 「じゃ、よろしくお願いします」


 頼んだ後、受付カウンターの並びの、部屋の奥側にある買い取りカウンターに向かいます。

 三つある窓口にいるのはどれもオジサンばかりでした。がっかりしながら、一番空いている窓口に並びました。前に若い男が一人だけです。


 「なんでだよ!安すぎんだろ!」


 「状態が悪すぎますね。こちらの薬草はもう、萎れてますし、この魔石は拾ったものですかね?古いし、かけてますよ。

 他の窓口でも、同じ査定だと思いますがね。買い取るだけでもありがたく思って欲しい品ですね。ギルドですから、良心査定ですよ?」


 「ああ、ちくしょー、その値段でいい!」


 若い男と窓口のオジサンが、やりとりしている声が聞こえてきます。お金を受け取った若い男が去ると自分の番が来ました。


 「あー、薬草を売りたいんだが」


 「はい、こんにちは。初めての方ですね。私は一番買い取り窓口担当のミルミールと申します」


 「こ、こんにちは。マタゼロです。今日から冒険者始めました」


 細目の人のよさそうな男にニッコリと挨拶をされて、反射的に姿勢を正して挨拶を返しました。


 「ギルドカードをお出しください。買い取り金額によってポイントを付けさせていただきますので」


 「あ、今ペンダントに加工して貰っているところで、ポイントはそっちで付けて貰える事になってるんですが」


 「そうですか。では、後で買い取り金額証をお出ししましょう。えーと、買い取りのお品は?」


 オジサンに言われて、収納から採取した薬草を取り出すとカウンターに並べていきます。


 「収納持ちの方ですか。収納鞄をお持ちの方は結構いらっしゃいますが、能力持ちの方はとても珍しいですね」


 そんな事を言われて、瞬きします。


 うちのメイド達は全員持ってまーす。フツーだと思ってましたー。とは、言いません。


 「おおっ、こ、これは!」


 カウンターに置いた薬草を見ていく、細目のオジサンの目が大きくなります。


 「オリンボウズ神山産、スゴイ薬草ばかり……おおう!」


 叫んで、一束薬草を白い手袋をはめた手に持つと、カッと目を見開きます。オジサンの目は本当は大きいのかもしれません。


 「ま、まぼろしの『モノスゴイハリキリ草』!!」


 大きな声で叫んだ後、薬草を持つ手がブルブルと震え始めます。


 「生きてこの目で見る日がこようとは……じょ、状態もいい、こ、これは」


 ハアハアと息を乱して薬草を見つめています。


 「あの~」


 声をかけると、オジサンがハッとしたようにこちらを見ました。手に持った薬草を置いて、深呼吸して息を整えると口を開きます。


 「この薬草は、とても、ひじょーに、ものすごーく珍しいものです。欲しがる人も大勢いるでしょう。

 状態もいいので、このまま状態保存の措置をしてオークションに出せば、かなりの金額で売れるはずです。

 この場での買い取りとなりますと、1000万ゼニアまでしか出せません。いかがなさいますか?」


 「い、いっせんまん!」


 今度はこちらが大きな声で叫びました。のけ反ります。すごい金額です。今まで、縁の全くない金額です。

 牛丼が何杯食べられるのでしょうか。吉○家で大盛にして、卵とみそ汁を付けて、サラダとキムチとお新香を付けても、欲張って牛皿単品をつけちゃったりなんかしても、まだ、まだ、使いきれないような金額です。あ、牛丼は汁だくにしてもらいますが、これはタダですね。


 「そ、それでいいです。買い取りをお願いします」


 のけ反った体勢を元に戻すと、気を取り直してそう言いました。

 そう、今は手元にお金が必要です。屋敷の維持費や装備も整えなければいけません。オークションがあるらしいですが、オークションで現金が入ってくるのを、のんびり待つ余裕はありません。


 「そ、そうですか。では査定の合計金額をお出ししますので、少しお待ち下さい」


 オジサンはすごい速さでカウンターの上の薬草を一束ずつ手に持って見ると、手元の紙に何かをどんどん記入していきます。


 「こちらの金額になります。よろしければ青い印を押してください」


 あまり待たされずに、紙が一枚差し出されました。明細と金額が書いてあります。


 スゴイシリーズの薬草は一束10万ゼニア前後のようです。


 スゴイガンバル草─10万×23束

 スゴイマホボン草─9万×20束

 スゴイナオチャウ草─13万×19束

 スゴイドクケシ草─8万×25束

 スゴイナニカ草─10万×21束


 108束あって、1067万ゼニアです。そして、モノスゴイハリキリ草が1000万ゼニアで、合計2067万ゼニアになっていました。

 震える指で、合計金額の脇にある青い丸のマークを押しました。青いマークに指紋のような物が付きます。

 その紙をオジサンに返すと、奥から、ワゴンを押しながら若い男が現れました。カウンターの上の薬草をワゴンに載せて去っていきます。


 「では、こちらをご確認ください。こちらが買い取り金額証です」


 カウンターの上が片付くと、ジャラリとカウンターの上の脇にあったトレイに、丸いお金が置かれて差し出されました。その側に紙が一枚置かれます。


 トレイの中を見ると、白っぽい金貨が20枚、大きな金貨が6枚、金貨が7枚入っていました。分かり易いように5枚単位で置かれていて、すぐに数えられました。


 い、異世界のお金かあ~。そ、そうだよね。なんか札束で想像しちゃったよ。


 指の震えが止まります。すごい金額なのは分かりますが、あまり実感がありません。まだ、一度も使った事がないお金です。


 「確かにございますね。この中から一年分の経費をいただいても、問題なさそうですね」


 脇にいたらしいミィが、背伸びしてカウンターの上のトレイを覗くと、手を伸ばしました。ゴソッと白金貨が消えます。


 「どうぞ、こちらの……袋をお使いください」


 言い終わる前に、オジサンが素早く一回り小さい袋に変えるのが見えました。


 「あ、ありがとう」


 ゴッソリ減ったお金に何とも言えない気持ちになりながら、貰った白い袋に残ったお金を入れました。その袋を収納にしまいます。添えられた紙は手で持ちました。


 「オリンボウズ神山の薬草は、大変貴重なものです。またぜひ、お持ちください」


 「ああ、また越させてもらうよ」


 ニッコリ笑顔のオジサンに頷くと、買い取り窓口から離れました。


 半分以上がゴッソリ消えましたが、これでもう、一文無しではありません。脱貧乏人です。



 薬草、高額で売れました!


 


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