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穴に向かって叫ぶ!  作者: マタゼロ
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☆23話 ギルドで登録②



「じゃあ、次はギルドカードだな」


 不満を全身からにじませているマタゼロを無視して、オッサンが話しを進めます。カウンターの下から、木の札を取り出して上に載せました。

 手の平で握ったら、隠れる位の細長い四角い板です。想像していたカードとは違った形状でした。回りをぐるりと鉄のような金属で縁取ってあります。


「最初は『木製カード』からだな。詳しい説明が必要か?」


「お願いします」


 素早く答えましたが、今度はミィは何も言いませんでした。


「そうか。では、カードには基本、六種類ある。木、鉄、銅、銀、金、白金でできたものだ。


 ランクとしては『ぺーぺー』『それなり』『できる』『すごい』『ものすごい』『ちょうすごい』の六段階だな。この上に特別なカードやランクもあるにはあるが、関係ないだろう。最初は木製カードの『ぺーぺー』からだ。


 もちろん、ランクによって受けられる依頼は違ってくるし、待遇も違ってくる。

 上になると、優遇されるが、それに付随して義務のようなものも付いてくる。指名依頼とかだな。


 ランクはポイントと規定の条件を満たした後、試験で上げられる。ポイントはギルドに納入、売却した物の金額でつく。ランクによる規定の条件や、優遇措置なんかは、あそこの壁に詳しい一覧があるから、後で確認してくれ」


 そこまで言うとオッサンは、左の階段の昇り口近くの壁を指差さしました。言われた方を見ると、確かに表のような大きな四角い紙が貼ってあります。


「規定の条件を満たし、一定ポイントが貯まれば、次のランクへの試験資格ができて、申請すれば試験が受けられる。

 合格すれば、次のランクになれるというわけだな。ここまでで、何か聞きたい事は?」


 壁を見た後、向き直るとオッサンが尋ねてきたので、元気よく手を上げました。


「依頼の受け方とか、ダン、いえ迷宮の事とか聞きたいです」


 オッサンが分かったというように頷きます。


「部屋の中にボードがいくつかあるだろ。あそこは『通常依頼』と言って、依頼の紙が貼ってある。


 内容や報酬が書いてあるから、やりたい物があれば、それを持って受付に出せばいい。文字が読めなくても、紙の上にある赤い印を押せば、音声で読み上げてくれるようになっているから、安心していいぞ。


 依頼はランク別になっている。ボードの枠の素材や紙の色でランクが分かるようになってるから、自分のランクの所から選ぶように。合わない物を持っていっても受けられないからな。


 ランクが上の者は下の依頼も受けられるが、まあ、めったに下のランクの者の依頼を取るようなマネはしないな。

 あと、あそこの緑の壁には『常時依頼』と『臨時依頼』と言って、受付をしなくてもできる依頼が貼ってある」


 オッサンが指差さした方を見ると、うっすら緑色の壁の一角があって、そこにも紙がはってあります。

 薄く黄色っぽい壁や薄青色の壁などもあり、壁の色で貼ってある物の内容を分けているのが、推測できました。


「黄色の壁には『緊急依頼』がある。言葉通り、急ぎの依頼だ。

 青色の壁には一月以上、誰も受けなかった依頼が貼ってある。報酬を上乗せしての再依頼の場合が多いな。


 壁依頼は報酬がいいものが多く、ランクに関係なく誰でも受けられるが、そこは本人の判断に任せてある。無理する奴はそこまでの奴だな。依頼の件はここまででいいか?」


 オッサンに聞かれて、深く頷きました。基本は紙を持って受付へ行けばいいという事で理解しました。ボードや壁は、後でゆっくり確認すればいいでしょう。


「じゃあ、次は迷宮についてだな。この国には大型迷宮が一つ、中型が三つ、小型が一つある。通りに出れば案内看板があちこちにあるから、場所は分かるだろ。迷宮までの乗り合い馬車とかもあるからな。


 で、全部で五つあるが、『ぺーぺー』が入れるのは、この内の三つだな。鉄級小型迷宮と銅級中型迷宮の二つだ。

 推奨階層は小型が、八層まで。中型が三層までといったところか。

 入るのは一応ランク制限してるが、どこまで潜るかは個々の判断に任せている。


 最初は迷宮案内人を付けての講習を受けてからになるが、講習の受講の申込みはここでも迷宮でもできるようになっているから、好きな時にすればいい。まずは装備をそろえてからだな」


 そこまで説明したオッサンが、マタゼロの体を上から下まで見ます。


 ええ、ジャージですね。緑のジャージです。お気楽極楽ジャージですが、迷宮探索には向かないと判断されたようです。自分でもそう思います。


「あ、装備はもちろん整えますけどね、素材とかはどこで売ればいいんでしょうか」


 装備を揃えるにもお金が必要です。気になった事を尋ねてみます。


「素材は向こうの奥で買い取っているが、まずはカードをちゃんと作ってからにした方がいいぞ。なくても売れるが、カードがないとポイントがつかないからな」


 オッサンに言われたカウンターの並びの奥の方を見ると、仕切り板があり、カウンターの色が木目から白に変わって、何やらカウンターの上に物を載せて話している人達の姿が見えました。

 買い取り窓口のようなものは三つほど、あるようです。


「じゃあ、このカードを握りしめて自分の名前を唱えろ。口に出さなくても心の中だけでもいいぞ。手の中が熱くなって、名前がカードに浮き出たら、カード登録できたという事だ」


 おおう、血とか採られちゃうのかなと思ったら、ただ握るだけでよいとは、なんと優しい仕様でしょうか。


 オッサンが指差さした、カウンターの上のカードを手に握りしめました。


 心の中で、『マタゼロ』と繰り返し唱えます。カードを握った手が段々と熱くなってきました。


「アホウ」


 今まで黙っていたミィが近寄ってきて、声をかけてきました。


「あ?」


「大事なアホウをお忘れなく」


「アホウいらないだろ?!」


 大きな声で怒鳴った瞬間、カッと手の熱さが増しました。後は冷えていきます。


「ん? 終わったか。どれ、見せてみろ。無事にカードに登録できたか確認するから」


 オッサンに言われて、手に握っていたカードをカウンターに載せました。


「……ああ、うん、無事登録できた様だな」


 カードを確認したオッサンが、一瞬目を見開いた後、苦笑いしました。


 細長い板の上部に小さく『マタゼロ』とあり、板のほとんどの部分が太く大きな『アホウ』の文字で埋まっています。


 なんという事でしょう! いらなかった『アホウ』の板ができてしまうとは!

 これは最後に大きな声で『アホウ』と怒鳴ってしまったせいでしょうか。


「縦に名前が入ったのは、初めて見たな」


 オッサンが、苦笑いの口元をさらに歪めます。大笑いしたいのを堪えているようです。


 愕然としながらも、オッサンの言葉は耳に届きました。


 ――あー、そうだよ。ここって、横文字っぽい世界じゃないか。この場合は横書きで名前が入るのが普通? 細長いから、つい、縦書きでイメージしちゃったよ。


 異世界文字ですが、アルファベットの名前が縦書きだったらと考えると、ないとはいいませんが、かなり変わった印象を与えた事は分かります。


 はりきって作ったギルドカードが、珍妙だと思われてしまう縦書きの『アホウ』板になってしまいました。


 この絶望は、好きなキャラの高いフィギュアを通販で買って、開けたらまるで別の顔をした物が出てきた時に通ずるものが、あると思います。『違う! こんなものを買ったつもりはない! これじゃない!』感が強く襲いました。



 

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