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穴に向かって叫ぶ!  作者: マタゼロ
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☆10話 異世界の一年は……



 「では、まず、このお屋敷の維持費、ご主人様の食費、その他もろもろを含めて、どの位お金が必要かを話し合いたいと思います」


 「あっ、ちょっと待ってくれる?」


 ミィの話を遮ると、テーブルの上のおにぎりと沢庵を無限収納にしまいます。収納の中はお約束通り、時間が止まっています。長く放置すると食べられなくなってしまいますからね。後で人間が食べられるように工夫すればいいでしょう。食べ物を無駄にしてはいけません。マタゼロは貧乏性です。


 貨幣を載せるのに使われたリラの手に視線がいきます。あの手は必要だったでしょうか?

 『考えたら負けだよ』どこからか声が聞こえます。


 「後でちゃんといただくよ。君達もそこのソファに座ったらどうかな」


 リラに一声かけ、テーブルの向こう側を指差します。

 広い乙女部屋はボッチ仕様ではありません。指差したテーブルの向こう側には、ぬいぐるみを座らせてお喋りする妄想が楽しめるように、一人掛けのソファが二脚あります。


 「ありがとうございます。ご主人様」


 「ありがとうごぜえますだ。座らせていただくだよ」


 ほとんど同時にお礼を言うと、二人ともソファに座りました。

 ──いえ、正確ではありませんでした。リラがソファに座ると、ミィはその膝の上に乗りました。ミィはリラの膝の上に座っています。


 あれ?なんでそこに座るんだ。小さいから?でも、一人でソファに座るには問題ないよね。どんな理由があるんだ。

 『考えたら負けだよ』どこからか声が聞こえます。


 「じゃあ、話し合いを始めようか」


 そう、余計な事は考えてはいけません。にっこり笑顔で話を促します。ミィがひとつ頷くと話し始めました。


 「はい。では、だいだい一月(ひとつき)にかかる費用の概算を出しましたので、その説明をしたいと思います。」


 「ああ、たの……まない。ちょっと待とうか。今、『ひとつき』と言ったよね?」


 嫌な予感がしてきます。これは気をつけないと、とても危険な話になりそうです。


 「はい。一月分の必要経費を出してみたのです。まあ、これ位かなという予想ですが」


 また、ミィが頷きます。少しドキドキしてきました。ああ、話を進めるためには、この一歩を踏み出さないわけにはいきません。


 「あっ、あのさ、この世界の『ひとつき』と言うと何日?一日は何時間?一年は何ヵ月あるの?」


 恐々としたマタゼロの質問に、ミィが目を見張ります。


 「なんとまあ……。ああ、そうでした。ご主人様は違う世界の方でしたね。分かりました。先にこの世界の事を、アホウでも分かるようにご説明させていただきます」


 「簡単!簡単にね!ざっくり基本的な事でいいからね。」


 胸を張って真剣な面持ちになったミィに、慌てて声をかけます。危険です。女神様に突然連れて来られ、ここに来て間もないマタゼロには危険な話題です。あまり細かい詳しい話は聞いてはいけません。自分を後々苦しめる毒になる可能性が高いです。


 「説明を始めます。まず、この世界では、神殿で24回の鐘が鳴らされ、それを一日としております。朝・昼・夜と鐘の音は違います。夜の鐘などは、穏やかで小さな鐘の音になりますね。どの国にも神殿はあり、鐘の音を拾う魔道具などを持ち歩く人も多いです。一日は24回の鐘の音。お分かりですか」


 ミィの確認に首を捻ります。24鐘は24時間という事でいいのでしょうか。

 う~ん、鐘の音の間隔は本当に一時間でいいのか?分とかどうする?ここは惑星?自転はどうなってるんだ?

 『考えたら負けだよ』どこからか声が聞こえます。


 「うん、一日は24鐘だね。わかったよ」


 マタゼロは笑顔で頷きます。


 「七日を一区切りとし、『一週間(いっしゅうかん)』と呼んでます。その七日間は、女神様の下僕……いえ、眷属の男神の御名が順番につけられております。太陽の神であるニッコビーから始まり、月の神であるゲツビー、火の神であるカビー、水の神であるスイビー、木の神であるモクビー、金の神であるキンビー、土の神であるドビーの7柱の御名前ですね。よいですか」


 ミィの問いかけに目を瞬かせます。七日で一週間です。神の名前がマタゼロに優しい安易なものになってます。

 う~ん、翻訳のせいなのか?ホントはもっと仰々(ぎょうぎょう)しい名前だけど、マタゼロ用に都合よく聞こえて、相手には本当の名前に聞こえるようになってるとか?男神ばかりなのもどうなんだ?月とか女神のイメージなんだけど……。

 『考えたら負けだよ』どこからか声が聞こえます。


 「うん、わかったよ」


 にっこりと笑顔で頷きます。


 「一週間が四回で、『一月(ひとつき)』になります。28日間ですね。この世界では13の月があり、それを『一年』としております。13の月は数字で呼ばれますが、女神様の眷属の13柱の女神の御名が順番につけられており、そちらで呼ばれることもございます。長くなるので今はいいでしょう。ここまではよろしいですか?」


 一年は13か月で、364日という事ですね。青くなってきました。 ちょっとヤバくなってきましたね。このズレは大丈夫でしょうか。月をとるか、日数をとるか迷った感じの13月だよね。異世界っぽく女神の御名とか言っちゃったのを聞いちゃったね。13柱も出てきてどうするよ。

 う~ん、公転とかどうなってるんだ。太陽は太陽?恒星か?神仕様?

 『考えたら負けだよ』どこからか声が聞こえます。


 「うん、よくかどうかはわからないけど、わかった事にするよ」


 満面の笑顔で頷きます。


 「今度はさらっと物価とか聞こうかなあ。あっ簡単にね。庶民の一回の食事の値段とか、一般的な家庭の平均収入とからへんをチョー簡単にね。詳しいのはダメだよ。この世界で生きていけなくなる危険があるからね。」


 マタゼロの言葉にミィは納得したように頷きます。


 「分かりました。ご主人様のようなアホウに合わせた、簡単設定でのご説明ですね。頑張ります」


 この世界でやってくためには必要な説明です。最低限の事は聞いておかないといけないでしょう。簡単な事だけ聞いて、後は日々の暮らしの中で学べばいいのです。難しい話はマタゼロには向きません。


  


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