陰陽師(なりたて)の日常
ピピピピッ、ピピピピッ
今日も何も変わらないたいくつな1日が始まる。
ピピピピッ、ピピピピッ
起きて、学校行って、帰ってきて
ピピピピッ、ピピピピッ
宿題して、飯食って、風呂入って
ピピピピッ、ピピピピッ
そして布団に入る。そしてまた目を覚ます。毎日がこれの繰り返しだ。
ピピピピッ、ピピピピッ
「なんでしょう、うるさいですね」
おっ、父さんだろうか。これは怒られる前に起きておくか。
ピピピピッ、ピピピピッ
「これでしょうか?。さっきからピッピピッピうるさいのは。」
おっと、もう入ってきたのか。きずかなかった。
「えっと、ここを押せばいいんでしょうか?」
カショ
「よしっ、止まった止まった」
目覚まし時計を止めたぐらいで何なのだ。
5秒ほど考えたけど時間の無駄だ。
「よし、起きよう。」
やっと決心がついた。僕は目を開け、天井を見つめた。
すると頭の上から
「おっ、やっと起きましたか。」
声が聞こえた。もう一度言おう、頭の真上から聞こえたのだ。
自分は今床に伏せているため、声の主は父親ではないだろう。
だとしたら誰なのだ。
「早くしないと、学校に遅れますよっと!!」
声はどんどん離れていき、自分の布団は宙に浮かんだ。
理解不能だ。
そこには先ほどまで自分を暖めていた布団をたたむ、1人の青年がいた。
いや、この場合1人と数えていいのだろうか。
なぜなら彼には、耳が、尻尾があったからだ。
何の動物だろうか。耳の形からして犬の種類だろう。
「おきろー、朝だぞ。」
父親が部屋に入ってきた。昨晩も飲んでいたのか、酒臭い。
「ほら、飯食って支度しねえと。学校に遅刻するぞ」
「うそ!今何時。」
「えっと8時15分だな。」
それ聞くや否や、僕は走り出した。狭い家の中を。
「えっと飯食って、歯磨いて、着替えて、用意して。」
現在8時20分
学校は近くなので、3分もあれば余裕だ。
「いってきまーす」
「おう、いってらっしゃーい。」
「はやくかえって来てください。」
あいつにまで返事を返された。まあいい。帰ったら聞けばいい話だ。
学校が見えてきた。全力で走ったから疲れてきた。
校門をくぐり、くつを履き替えていると、チャイムが鳴り出した。
やばい、幸い自分の教室は2階なので急いで登る。
チャイムが鳴り終わると同時に、教室に入った。
「ぎりぎりセーフ」
「アウトだばかもの!」
出席簿でたたかれた。てかあるんだな、そんな展開。
「さっさと席に着け。大谷」
「はい・・・」
自分の席に向かう。
「いやーふこうだったね~」
「ああ、ほんとだよ」
こいつは、如月 瞬
俺の幼馴染だ。最近は「この小説はフィクションです」とか「まあ実際、考えんの面倒なだけなんだよね~。あいつ」だとか、なぞの発言を連発してくる。そのせいでこいつ、クラスで浮き気味なんだよな~
「そういえば、彼の自己紹介をしていなかったね~。彼の名前は大谷 信也ボクの友達だよ~。えっ?「最初にしとけよ!」だって。しょーがないよ、だってあいつが序盤にいろいろ詰め込みすぎたからね~」
「おい、誰としゃべってんだ」
「?。これを見てくれているすべての人にだけど」
「・・・」
とこのように、時々意味のわからない発言をするんだよな~
「はい。というわけでホームルームを終わるぞ」
「起立、礼、着席」
学校が終わった。そいえば帰る途中、瞬がわけのわからないこといってたな。
たしか「学校のシーンカットしたのって、あいつが面倒くさいからなんだよね~。ほんとにいやだな~、ちゃんと考えてくれないと」って。
どういう意味かはさておき、朝のあいつの件だ。学校の図書室であの耳と尻尾で、何かわかるかもと思っていたら、思わぬところで発見した。
さて、鳥居をくぐってまずは一礼・・・、なんてしている暇じゃない、行こう。
「神様すいません」
俺は心の中でそう思った。
うちは神社だ。この近くではうちしかないため、初詣なんかは人がいっぱい来る。まあこの町の人口もそこまで多くはないため、生活はぎりぎりだが。親父はうちの宮司だ。まああの駄目親に宮司が勤まるわけも無く、ほとんどの仕事は俺がやっている。
「ただいま。」
返事が無い。とうとう死んだのだろうか。
「おお、帰ったか信也どの」
いた。さっきの続きだ。おそらくだがこいつは、化け狐の類だろう。
「おまえ、妖怪なのか?」
「おお、やはり聞いておられたのですね。私たちのことを」
「は?だれに」
「え、あなたのお父上様、竜様からですよ」
「聞いてないんだけど・・・」
あのハゲ帰ってきたら殺す!
「で、あいつはどこ行ったの」
「はい、先ほど新潟県に」
「新潟ぁ。何しに」
「妖怪退治ですよ、妖怪退治」
「・・・え?」
「だから、妖怪退治ですって」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ。え、妖怪なんていんの」
「現にこの私、九尾がいるじゃないですか。やだな~もう」
「あ、九尾だったんだ~おまえ~。」
「そうですよ~」
「でその九尾が何のようなの?」
「あ、はい。あなたのお父上様に「息子がそろそろ14になるから修行がてらこっちに来るか」って誘われまして」
あのボケ、そうだったら俺に一言言えよ!帰ってきたら絶対ただじゃおかねぇからな。覚悟しとけよ。
「そういえば修行って何?具体的に何すればいいわけ?」
「あ、はい説明いたしますと、大谷家の家系は代々の陰陽師なのです。その元をたどればあの伝説の陰陽師、安倍晴明の血を受け継いでいる!、と自分の曾じいちゃんに聞きました」
「えっ、なにその都市伝説感」
「この神社でも探したらあるんじゃないんですか、家系図くらい」
「また今度探しとくわ。で、続きは?」
「あっ、はい。大谷家には代々、16歳になったら陰陽師としての修行を必ずしなければならない。というしきたりがあります。」
「ちょっとまて、自分13歳の中学2年生なんだが。16歳にすらなってないんだが」
「はい、私もそういったんですが。「1年も2年も3年も大して変わらんって」といわれまして・・・」
「適当すぎるだろ」
「で、私は信也様の式神としてきたわけです」
「・・・なるほど、大体わかったわ。じゃあな」
「えちょっとぉぉぉぉ」
九尾が服をつかんできた。
「やめろよ!服が伸びるだろ!」
「放しませんよ。この腕は」
「放せよ!俺にはこれから宿題をして、飯を食って、布団で寝るという義務があるんだよ」
「いやです、死んでも放しません」
「アーアンナトコロニソラヲトブオオキナアブラアゲガー」
「!!」
「アーカラスガツイバンデルナー」
「ぅぅぅ・・」
「マアイイヤボクニハカンケイナイカラナー」
「どこです、どこですか。大きな油揚げは?」
「嘘だよんなもん」
ふすまを閉めて、全力ダッシュで自分の部屋に行き、お札を取った。昔、母さんがくれた僕を怖いものから守ってくれるというこのお札。これを、あいつに貼り付けた。
「・・・」
「どうだ、苦しいか?」
「・・・」
「おいなんかしゃべれよ」
「・・・」
「もしかして、死んでる!?」
「あ、油揚げ、カラスに全部食べられてしまいました・・」
こいつ人の話をまったく聞いていない。しょうがないな
「おい、九尾聞け」
「な、なんですか」
「今から買い物行くから、ついでに油揚げ買ってきてやるよ」
「ほ、ほ、本当ですか。ありがとうございます。ありがとうございます。この喜びと感謝をどう伝えればいいのやら」
「とりあえず落ち着け。んじゃま、行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ」
そういえばあのお札、あいつ調べたときに見たな。もしかしたら母さんも陰陽師だったのかもしれないな。
帰ったら聞いてみるか。
「あれ~信也じゃん。どしたの。あ買い物か」
「正解、おまえは?」
「俺もお使いだよ」
「そっか」
「そいえばおまえ、今日の昼休み、図書室で何してたんだよ」
「ん~、ちょっとした調べ物」
「オカルト系と動物図鑑ってどんな調べ物だよ」
「何でそれを」
「ちょっと記憶を探った」
「どっかで見てたのか」
「うん、まあそうしとくよ」
記憶を探った?なに言ってんだ、こいつ。
「おっ、やっと着いたね~」
「ああ、うん、そ、そうだな」
「?どしたの急に。化け物でも見たような顔して」
「ん、いやなんでもないなんでもない」
「そうか?ならいいけど」
俺は見てしまったんだ。こいつには隠したけれど、反応なしとなると見えていないのだろう。あの化け物を
うちにいる九尾とは違う、重々しい雰囲気。体には目玉が5個あり、蜘蛛のように足が横から8本生えている。そして何より、でかい。100Mは超えるであろうその巨体は、この町で暴れれば町崩壊ENDになってもおかしくない大きさだ。
「さっきからどうしたんだよ。早く入ろうぜ」
瞬の声で一気に現実に引き戻された。
「お、おおそうだな。さっさと買って、さっさとかえろうぜ」
帰ったらあいつに報告だ。
「と、いうことなんだ。どう思う?」
九尾は俺が買ってきた油揚げ(4枚入り 200円+税)をおいしそうにほおばっている
「そうですねもぐもぐ、おそらくそれはもしゃもしゃ、妖ですな」
「食うかしゃべるかどっちかにしろ」
「あっ、お茶もらえますかな」
「・・・はいよ」
「で、その妖ってなんだよ」
「はい、妖怪にも種類がおりましてな。まず私のように人と接触したり、人間にまぎれて生活しているもの。これを魂怪と言います」
「魂怪、か」
「次に、人とあまりかかわらず、きずかれないようにひっそりと暮らしているもの。これらを妖怪と呼ぶのです」
「へーそうなんだ」
「最後に、生前や妖怪になってから人間に恨みを持ち、人間に危害を加えようとするもの。これを妖と呼ぶのです」
「なるほど、でも人を襲うようには見えないけどなぁ」
「それは人と同じですよ。よく言うでしょう。人は見た目より中身だ。って」
「ふーーん。そういうもんなのかな、妖怪って」
「案外そういうものなのですよ。妖怪も、人間も」
「でももし、暴れたりしたらどうすんの」
「そのときは竜様が退治を・・・」
「親父、新潟に言ってるんじゃなかったけ」
「えっと、修行とかは」
「した覚えが無い」
どうすんだ、これ。
「せめて、白装束でもあれば・・・」
「なんで白装束なんだよ」
「正義の味方は変身するのが当たり前でしょう。●面ライダーしかり、スーパー●隊しかり」
「そいえば倉庫にそんなんがあったな」
「ではそれを着て、外に出てください」
とりあえず着てみた。なんか陰陽師感は出てなくも無いな。あとお払い棒?みたいなのもあったから持ってきた。
「おお、すばらしいですぞ。竜様そっくりです」
「うっせーよ。そいえば九尾、お前が俺の式神なんだよな」
「はいそうです。ご自由に使ってください」
「よし、じゃあいくか」
「はい」
九尾いわく、この白装束には霊力があり、空を飛べるらしいが、まだ未熟者のため無理らしい。また便利なことに、これを着ると、よほど霊感の強い人でもない限り、見えないらしい。
「あれですね」
「ああ、そうだ」
「ってあれれ、あれは妖じゃないですよ」
「えっ、まじで」
「はい、あれはこの土地の神様みたいな存在ですね。不気味な姿をしてはいますけど、神とか妖怪とかなんて、そんなもんですよ」
「この白装束を着た意味が無くなってしまったじゃんか」
「都合よく悪霊でも出てきませんかね」
そう九尾が言った瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・
地震が起きた。というか、神様が突然暴れだした。
「おい、あれどうなってるんだ?」
「わかりませんよ、自分にも。いったい何が起きているんだ」
理由がやっと見えた。妖らしきものが数匹神様の周りを飛び交いながら、攻撃している。
「おい九尾、おまえ、なんでもできるんだよな」
「ええ、まあ実現可能なことならほぼ何でも」
「じゃああそこにいる妖倒してきて」
「あーすいません。それは無理です」
「いやなんでだよ」
「妖の浄化は、聖なる力を持つ、陰陽師、祓魔師とかの類しかできません。あくまで式神はサポート役なのです」
「じゃあそうだな・・・武器にでもなれる?」
「あいわかりました」
そういって九尾は刃の赤い日本刀へと変化した。
「さあ、お使いください。これを握ってる間は、サポートが利くので、ある程度は自由に空を飛べますし、狐火を操ることもできますよ」
「よし、いこうぜ九尾」
「はい」
俺は刀を掴んだ。九尾の言っていたとうり、空が飛べる。魔法使いにでもなった気分だ。妖にきずかれないように神様に近ずき、神様の具合を見て、そのまま妖に飛び掛った。さすが日本刀というべきだろうか。それとも九尾がすごいのか。妖は豆腐のように簡単に切れた。他の妖もきずいたようだが、すでに九尾の狐火で、身動きすら取れない状態になっていた。俺は剣先に力いっぱいこめ、妖を切った。
「ふぃー、終わった終わった」
「お疲れ様です。修行なしであそこまでできるとは、思っていませんでした」
「いや、あれは単純に九尾が強かっただけだって。ほんとに九尾一人で妖退治出来るんじゃないの、って感じだったよ」
「いえ、あれは信也様自身の力です。式神が出せる力は、主人の霊力によって変わります。修行で霊力を高めていないにもかかわらず、あそこまで私の力を引き出すのは、本当に予想外でした」
「へーそうなんだ。まあいいじゃん、帰ったら飯にしよーぜ」
「あ、私油揚げがいいです」
「さっきも食ってたじゃん」
後日、クソハゲ親父から連絡があった。
「妖を退治したんだって?すごいねぇ~、さすが父さんの子だ。こっちは用事で2~3年ぐらいそっちに戻れそうにないから、その間妖退治よろしく~。もちろん修行も忘れんなよ。じゃーなー」
ということで、2~3年の間この町の妖退治を任された。というか押し付けられた。なんだかんだで楽しいしまあいっか。
「おーい信也、学校行こうぜ」
「おはよ、瞬。いってきまーす」
「いってらっしゃい」
またいつもの日常は再開した。
「いやー結構放置されたなー俺」
「またなに言ってんだよ」
いつものって言うとちょっとおかしいかもしれない。
「起立礼着席」
でも、これだけは確かだ。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ。さあ、修行ですぞ修行」
ぼくは、この毎日を楽しんでいる。
どうも、蔵餅と申します。今回はこの小説を閲覧していただきありがとうございます。
小説の制作や物語の構成など何から何まで初心者ですが、温かく見守ってもらえると幸いです。