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テイク14 【Q〇ま!! プレッシャースタディ2】

「第一問は漢字読み取り問題です。全て『わ』で始まる言葉です」


1:悪者

2:輪島塗り

3:蕨餅

4:藁人形

5:鞋

6:山葵

7:稚内市

8:和寒町

9:補助刀

10:能と


 これが第一問だった。俺としては、10以外全て解るのだが、麻里愛としては7、8当たりが鬼門だろう。なにせ、

『ヨルダンの特産品ってあんまんなんだ』

『ドイツの首都ってアルトバイエルンだよね?』

『マルセイユは……、スペインなんですよ』

 の麻里愛なのである。これらのようなワールドワイドなスケールではないものの、読み零す可能性は、極めて高そうだ。

 一番の席に着いているのは意外にも慶大卒の河山寿春だ。無山がインテリがズラリと並ぶと言っていたが、今日のメンバーは確かに学歴だけなら相当期待できる。そう、学歴だけなら。

 門倉姓は麻里愛以外は全て早大卒(うち慶輔はスポーツ推薦)であるし、岩隈竜也は京大卒だ。

そして、我らが麻里愛さんとその旦那である神林隆行は真に信じ難いことだが……、現役東大生なのである。ほとんどの者が本業とアジディック(全日本ディテクティブカンパニー)登録探偵との二足の草鞋をはいている門倉家中では、麻里愛が二年生になった今でも彼女の入試に於ける地理のカンニングの共犯者を大捜索中だ。そして、その際に用いられたカンニングトリックもムキになって暴こうとしている。

 逆に言えば、それほど明らかに地理が苦手だと家中に知れ渡っているということになる。おそらく街の名前である7、8が残る可能性は、極めて薄いといえるだろう。ホッとしていいのか、歎くべきなのか。俺としてはいつも八つ当たられる憂さを、こいつの失態を笑い飛ばして晴らしたくもあるのだが。

 河山寿春が無難に8番を指定。ディスプレイに【わっさむちょー】と書き込んだ。

 ピンポンピンポーンという使い古された正解音と共に、解答権が二番手に移る。二番手は門倉家のおかーさま、門倉美和だった。年甲斐も無くツインテイルに結わえた髪が恐ろしいほどサマになっている、鈴なり型狐目の54歳だ。前出の通り、早大卒である。

「ん〜、9行ってみよかなー」

 関西訛りで指定した後、ディスプレイに【わきざし?】と書き込んだ。場内に『ファインプレイ』とのコールが響く。

 クイズは、早いペースで進んでいる。制限時間は三分あるため、ペースとしては順調過ぎるほどだろう。解答者は、タッキーこと神林隆行だ。

「4!」

 そう宣言して、余裕の表情で【わらにんぎょー】と書き込む。正解を示すチャイムの音が場内に響く。

 ……、暇だ。いつものツッコミが出せない。別にハワイなど、自分らで何度でも行ける場所なのだから、もう少し俺の芸の肥やしになってほしいものなのだが。この第一問は、10を除けるとそれほど簡単な物だった。つまり、10はそれほどの難問なのである。漢字検定一級を持っている俺が言うのだから間違いない。

 果たして、誰が10を答えることになるのだろうか。たぶん麻里愛だとは思うが。もしそうだとするなら、いつものボケとツッコミは最終問題まで縺れ込むか……。しょうがない、ここはギャグ小説っぽく趣向を変えてみようか……。









 本日のSBSエキサイト『Qさま!!』、実況の佐野勇気です。本日解説をお願いした佐島七海さんは、仕事をバックレて遊び歩いております。予めご了承ください。

 さあ、アンサーボックスに入りました、4番解答者、門倉樹里愛、果たして何番を指定するのか!?

「まーに7答えさすのも面白そうだけど……、あたしが答えとくわ」

 苦笑いが出たぁ! この人の一番魅力的な表情は、間違いなくこの【苦笑い】であります。微妙な角度に両端が吊り上がった、薄くて短いパールピンクに染まったぷりちーマウス! 極限まで下がるセクシーな薄い眉! うーん、セクスィイー!!

 さあ、4番樹里愛、ディスプレイにペンを躍らせます。その姿、正に『Q〇ま!!』のプリンシプルだ!

 プリンシパルによって徐々にその姿をあらわにしてきたその文字は、その姿に似つかわしくない、蚯蚓がのたくったような汚い筆跡だ。時間との戦いとなると誰しもがそうなってしまうのか。

 出された解答は【わっかないし】であります。あっーと、正解のチャイムだ!

 それにしても、あれが地の筆跡であるならば、担当編集者の苦労が偲ばれます。正にご愁傷様であります。

 さて、解答権が5番の岩隈竜也に移ったぞ! 指定番号は1だ。ここで1が来たぁ!

 【わるもの】、ジャストミート! 甘い球は逃しません!

 ここで残るは、2、3、5、6、10の5問だ。六番手慶輔は果たしてどれを選ぶのか? 早大で固まっている門倉姓の中にあって、そのインテリ度が唯一未知数だ。スポーツ推薦での入学であります。

 さあ、ここで10を選ぶスポ根を見せ付けるのか、昨シーズンパ・リーグ最多勝投手、沖縄シュバルツ門倉慶輔30歳!

 悩んでおります、門倉慶輔。チーム内で一番気に食わんと公言して憚らない、玉木知昭捕手とサインの交換をしているが如く、慎重に選んでおります。ちなみに、玉木捕手とのサイン交換は【プロ野球の試合で一番無駄な時間だ】と、他球団からも自球団からも、野球ファンからも審判団からも大変不評であります。

 あまりの長さに三秒ルール(球審は、マウンドにいるピッチャーがボールを持ってから三秒以内にモーションを起こさなかった場合、ボールを宣告する権利を持つ)を適用されたことも、一度や二度ではありません、門倉慶輔。

「……、10」

 でたぁー! 本日最初の【能と】であります! さすが名門球団沖縄シュバルツの大エースだ! 昨年の最多勝は伊達ではありません。根性を見せてくれました!

 さあ、解答だ!

 ディスプレイには、おそらく誰しもが見た瞬間に思い浮かべただろう文字が浮かび上がりました。【のーと】! 果たして合っているのか!?

駄目だ、ハズレだー!

 さあ、選び直しであります、門倉慶輔。勿論もう一度10を選ぶことも出来ますが、一体どうするのか。数多あるプロピッチャーの中にあって、唯一一度も敬遠四球を出したことの無い【逃げない漢】が、再度難敵に挑むのか!?

 

「くっ……、2だ」

 悔しそうだ。これは試合でも見せたことの無いような、悔やみ顔だ。逃げない漢、ついに【能と】から逃げました!

 解説の佐島さん、は居ないん……

「えっなに、ケイさんって逃げない漢だったの!? わたしこの人がいろんなもんから逃げ惑ってるの散々見てるんだけど……」

 漸く佐島さんが帰って来られたようですね。振った瞬間帰ってくるとは都合が良すぎる気もしますが、構わず続けましょう。

「あっ、今回のネタ、面白みに欠けるからって実況中継風にしてるわけね? りょーかい。じゃあわたし、解説でもやってあげるわよ」

 佐島さんご本人からの了承も得まして、実況席がフルメンバー揃ったところで、一旦コマーシャルです。




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