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テイク10 【ズバリ言っちゃってもいいですか? 駄目でも言わせて頂きますが 5】

 一方的な駆逐を受け終えた俺は、神奈さんとのタッグを強制解散させられたあと、またいつも通りの背後霊としてのポジションを徹底することになった。とは言え、あのバトルは生放送中のアクシデントであり、それによって、放送時間がかなり押している。取り敢えず、ブチ切れた麻里愛による陰陽発動は見なくても済みそうだ。それさえ回避することが出来れば、充分に俺の責任は果たしていると言えるだろう。

「ええと、麻里愛さん、とにかく一度でもいいですから、ちゃんとお参りしてあげてください」

 どうやら番組サイドも放送の締めに差し掛かっているらしい。アクシデントにより、野球で言えば延長12回裏2アウト、サッカーで言えば、ロスタイムに入っているのだ。妥当な対応であると言える。

「貴方を取り巻く霊的な環境は、決して貴方が思っているほど悪いものではありません。取り憑いている低級霊二体は頼り無いですが、裏切る事はありません」

 【頼り無い】このオバハン、本人の前で頼り無いとか言いやがった……。みあげた根性だ。そこに、一体の女霊が帰って来たのだ。俺と同じく麻里愛の背後霊でありながら、勝手に遊び歩く浮遊癖を持つ佐島七海が。

 俺と共に頼り無いと罵られた、佐島七海が。

《締まんねえな。どうあがいたって、この流れはバトルだろ》

  歯ぎしりによって、地震に見舞われた食器棚のような音を発てる口元、ヤマアラシのように逆毛立つショートカット。鈴なり型の垂れ目だった筈の目は、平行四辺形の吊り目と化している。

 俺のすぐ横では、七海の怒りの咆吼が始まっていた。そんな七海を尻目に寿春はカルタ名人のような早業でお札を作成。そこには、低級霊進入禁止と書かれてあった。

《ちょっ、ちょっ……、ちょっと待てぇぇぇぇ!》

 発動されると少し厄介なことになってしまう。低級霊の侵入を禁じるということは……。

 俺の待てコールも聞かずに寿春はお札の効力を発動してしまった。さすがは本物の霊能者。北の守護神増長天様(岩国神奈)を強制的にあの世ヘと送り還したその力は、俺達を強打者にジャストミートされた打球のごとくいとも容易く撮影スタジオの外に弾き出してしまった。


 雄大な大空をチュンチュンと小煩く舞う雀さん達と共に空中を高速移動(吹っ飛ばされ)しながら、俺と同じくすぐ脇を吹っ飛んでいる七海の様子を見てみる。

「うわー、なんかこれ、絶叫マシンみたいで気分爽快だね!」

 満面の笑みを湛え、至極ご満悦のご様子。

《こいつ、絶叫マシンフリークか……》

 なにはともあれ、これでおそらく七海が寿春に対して余計な恨みを持つこともないだろう。後は番組だが……、吹っ飛ばされている最中に通りがかった時計台の時計を、行きがけの駄賃的にチラ見してみると、時間的には番組は終了しているようだった。

《あぁ、良かった……。ちやんと番組、終わったようですな……》







 追伸

 麻里愛の話によると、あの後赤星拓真(西の守護神広目天様)がスタジオに降臨、すぐにバトルが勃発し、結局麻里愛とシュツルムによるヨタ話に終始したバツの悪いエンディングを迎えていたらしい。

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