そうだ!山で餓死しよう!
そうだ!山で餓死しよう!
中学生の頃かな。こう思っちゃった。なにしろ社会で生きていくのは疲れましてね。とほほ。まぁ社会と言ってもまだ学校すら出ていないんですが。私だって最初は普通に自殺したかったんですけどね、でも怖くて怖くて、なーんもできませんでした!テヘペロ。だがここで終わらないのが僕だ!一気に飛び込むから怖いんだ!だからゆっくり進む。まぁつまりは散歩!お気楽に死ぬぞ!
「ってなわけで山に来たんだけど、やっぱり空気が澄んでて美味しいね!道中のように人が沢山居ないからその分気楽だし、ルールやマナー、人から解き放たれたような開放感が心地いいね!ていうか人が多すぎなんだよなぁ。もう少し減ってくれたっていいのに。まぁそんなことはいいや!だって僕はもう山にいるんだから!」
まず僕が山に入り最初にしたことは全力で山の奥に走ることだった。まだ僕の声が外に聞こえないぐらいの場所にいるからね。車の音がうっせぇのよ。道中は人が居たから走れなかったんだよなぁ。だからその鬱憤を晴らすことも含め存分に走りましたよ。ぜーはーぜーはー、
「...いやなんで虫がおんねん!」
実は私大の虫嫌いでしてね。虫が冬眠する冬に来たのに。てかこれも人類のせいだよな?地球温暖化加速させるから虫さんが眠れないんじゃないのか?とんだ害悪だ。虫さんの目充血するんじゃないのか? 今すぐ人類は僕と虫さんに謝った方がいいのでは?まぁそんな馬鹿げた思考は一旦捨てまして、どうしよっかな〜。 あの後作戦会議(一人で)した結果、気にしないことにしようとなりました!まぁこればかりはしゃーなし。てか泳ぎたくなったから川探すべ!帰宅部の脚力舐めんな!
「さっっっっむ!いや馬鹿かよ!なんで冬に全裸で川泳ぐんだよ!寒い!死ぬ!凍死する!もう川なんて泳ぐもんか!死ね!」
いやはや、完全に冬だと忘れてた。そりゃ虫が当たり前に居て、さっきまで走って体ぽっかぽかだから確実に忘れてた。服を着ようと岸を見るとなんと!熊さんが居ました。
「あぁぁぁぁあ、虫が冬眠してないなら熊も冬眠せんってことか!人類が俺を殺しに来てる!ひどい!」
なんて大声で叫んだから熊さんがこっち向きます。 思わず唾を飲み込んでしまう。
「いやー、デカいですね、...かっこいいよ!...助けて」
おいおいおい!なんで追ってくるんだよ!鬼ごっこしたいのか!?リアル鬼ごっこですか!?
「いやガチでリアルに死ぬんだけどやめて!」
とは言え、このまま逃げ続けたら死ぬな。その時、下半身がビクッとした。それを感じ取った俺は名案を思いつき、熊と相対する。熊が俺目掛けて腕を振り下ろす。見える。伊達に鍛えてきたわけじゃない。いや体鍛えて頭鍛えてないから社会に適応できないんだろうがってのは今じゃないぞ。熊が殺気立っている。それに呼応するように俺の下半身が固くなる。 熊の攻撃を避ける、避ける。避ける。 よし、最大出力でイッちゃうもんね!俺は熊の鼻に目掛けて放尿をした。実はさっきからずっと出したかったんだ///熊が声にならない声を発したあと、どこかに行った。
「どうじゃあ!トイレの的当てシール買って真面目にやってた集大成だ!」
いや寒いよ。服着よ。
暫くの間ガクブル震えてたら日が3/2ほど沈んでいた。山なこともあって暗い。葉が秋が来たかのように思わせる色をしていた。いや今冬なんだけどね!
「綺麗だなー」
んまぁそんなこと言ってる場合じゃなくて寝床探さないと!
「ぜーはー、ぜーはー、どこ寝りゃええねん!」
全速力で駆けても安心して寝れる場所がない。森は虫がいる。川の中は寄生虫がいる。そこら辺に寝れば動物の餌食だからね。
「...もういいや、寝よう」
疲れた疲れた。てか楽に死にに来てんだから寝てる間に死ねたら本望だろうよ。
「ぐーすかぴーぐーすかぴー」
山だからいびきを存分にかける。今の俺はこの山の妖精なんだろうな。
「ん、生きてるー!これ天文学的な確率やろ!」
さぁさぁさぁ、今日は何しようかな!なんもすることねぇや!散歩しよ!
「と言っても木々の中は虫がいっぱいいるから入らないけどねー!死ぬ時くらい好きにさせてくれてもいいのにね!」
むむむ!なんだあれ!ゴリラ?
「なんでゴリラおんねん!ここ動物園なんか!?」
どーしよ、進路にゴリラいたら邪魔なんだけどな。何かないかとアタッシュケースを開く。実は持ってきてたんだよね!その中に入ってた物を見て俺は閃いた。そしてブリッヂをしゴリラの前を堂々と歩く。俺今虹色の服着てんねん。そしてブリッヂをすることで!俺は完全な虹の子となる!
「虹の子供ですよ〜、子供は大切に〜(くっそ小声)」
めっちゃゴリラこっち見てんだけど、虹見たことないのかな?
「あぁぁぁぁぁあぁぁぁ!なんで追いかけて来るの!僕は虹だよ!?ちゃんと理解しろよ!」
あいつ少し通過させて安心させたところをいきなり襲ってきたぞ!なんてズル賢いんだ!このズル猿が!
「これはしゃーない!川に飛び込むしかないか!」
バッシャーン! バァッシャァァンァンンン! なんでお前も飛び込むねん!?帰れよ! どうしよう!おしっこは!?昨日出し尽くした!唾は!?届かない!
「...じゃああれしかないか。」
俺は走りながら尻を少し出した。
「ふぅぅぅぅん!」
ありえんほど腹に力を入れる!その瞬間、勝利のコールが鳴り響いた。ブリリリリリィ!!ベチャァ。それはゴリラの足と熱い抱擁を交わした。ゴリラはクッソ嫌そうな顔をしてふんぞりかえり、暴れ、どこかにいった。
「やれやれ、熊といい、ゴリラといい、何故僕からの贈り物を嫌がるのか、わかりませんねぇ」
とはいえ、少しけつが痛いな、水で洗うか。
「冷てえぇぇぇぇぇぇぇ!」
「寒い。気持ち悪い。喉乾いた。」
でも水は飲まないぞ。俺は貫くんだ!暫くけつを洗っていたら匂いはしなくなった。いやはや酷い目にあったもんだ。うぅ、まだ寒い。濡れたけつを必死に動かしながらアタッシュケースを開く。色々ありすぎて忘れていたけど、いい服があったんだよな。濡れたし着替えるにはちょうどいいかも。
「んー!バッチリ!隙間なし!露出なし!よっし!探検するぞー!」
着替えた服はいわゆる防護服だね。具体的にはヘルメットやインナー、ゴム手袋を何重にも装着して、ガムテープでさらに補強した。
「変な感覚〜」
でもこれで虫を直に触れなくても良い!
直進直進直進ー!木々の中を走り抜ける。虫が馬鹿みたいに出てくるが全て体当たりしている。
「あーはっはっはー!まるでボウリングのようだ!ははははっーはっはは!」
感触は普通に伝わるが直に触ってないとわかっていれば平気平気!もっと奥へ入るぞ!
「いや暑い、普通に暑い」
いくら冬とはいえ厚着だもんな、ありえんくらい着てるもんな、それに加えて走ってたんだからバカ暑いか。
「疲れた〜、ちょい休憩〜」
木や虫に囲まれて大の字に倒れる。てか暗くなってきたな。そうだよな、冬だもんな〜。
「死体ごっこ〜。なんちゃって」
あれ、なんか蠢いてない?てかいくら冬だからっていきなり暗くなることはなくない?
「きっっっっも!?」
咄嗟に手で払う。その虫をよく見てみると馬鹿でかいナガサキアゲハだった。ゴキブリみたいな色しやがって!やっぱ虫は嫌いだな。
少しトボトボ歩いていると鹿の頭蓋骨を発見した。立派なツノを持っていた。これも何かの縁か。持っていくことにした。
辺はすっかり暗くなってきた。何時間歩いただろうか。さっきぶりの暗闇だ。開けた場所だ。人工的だと思わせられるほど、草木はない。
「うっし、やりますか」
パチ、パチ、パチ、
「あったかいわー、お前もそう思う?」
枯れ果てた声でそう話す。俺は今鹿の頭蓋骨と焚き火を囲んでいる。周りに何もないから出来たことだな。下手に火を使ったら山火事になる可能性があるからな。俺はアタッシュケースを尻に敷き、鹿は枝を使いバランスを取っている。3m先からは何も見えない暗闇で、遠くから数多の虫の声が聞こえてくる。
「流石に疲れたな。」
2日ぐらいだろうか、口に何も入れていない時間は。
「人は3日水を飲まなければ死んでしまう」
今はわかる。その言葉が現実味を帯びて来ている。
「お前に肉があればすぐにでも喰らい付いていただろうな。骨だけでよかったよ」
パチパチ、パチ、パチパチパチ
「なぁ、お前はどうやって生きてきたんだ?」
パチ、パチ、パチ、
「なーんて、こんなこと聞いても参考にならんか」
なんで餓死を選んだんだろうか。そう考え直してみる。最初は社会が嫌で、それから逃げようと自殺を試みた。でも出来なくて、それでゆっくりなら死ねるんじゃないかって、そう考えて餓死をしようって思ったんだ。
パチ、パチパチ、パチ、パチ、パチパチ、
「社会は辛いところだよ、ここみたいに自由に放尿出来ないし、ルールを意識して生活するのはもちろん、食事する時もマナーを意識しないといけないんだ。まぁつまり息苦しいんだ。」
パチパチ、パチパチ、パチ、パチ、
「俺は終わってるんだ。成長を社会の道具として扱いやすくなることとしてしか捉えれなくなった時から。逃げ続けているばかりの俺は終わっているんだ。」
パチパチ、パチ、パチパチ
「ここはいいよな。ある程度自由に暮らせる。自分を安心して出せる。ここに来てよかったと思ってるよ。お前は鹿に産まれて、ここに産まれてよかったと思う?」
パチパチパチパチ、
枝を投げ入れる。火を絶やさないようにする。
「どんなふうに死んだんだ?食べられた?もしかして餓死?なら一緒だね」
パチパチ、パチパチ、パチ、パチパチ、
「ま、こんな話しても楽しくねぇか。」
それから山に来た経緯、山に来てからのこと、それをジェスチャーしながら事細かく、誇らしげに話し続けていた。てか、早く熊とゴリラに遭遇して良かったと身震いをした。火がついているのにね。いつのまにか周りが見えるようになった。火は未だに絶えてはいない。
「山に登るか」
唐突にそう思った。もうここまで来たんだし、欲望的に動くのもいいのかもね。あとちゃんと火は消したよ。
「善は急げ!さーいくぞー!」
歩く、歩く、歩く、虫はもう気にならない、防護服の感覚はもう慣れた。今は絶好調だ。
このまま登り切ろう。慎重に、でも少し足早に登る。
「はァー、はァー」
明らかに体力が落ちて来ている。いや、回復していないのか。そりゃあそうか、昨日は寝てないもんな、それに加えて絶食絶水。食欲はまだなんとかなる。だがこの渇きはどうだろうか。自分の唾を溜めて、飲んで欲を満たす。それで紛らわしてきたが、段々と唾が少なくなってきている。加えて視界の左右がぼやける。だが止まることはない。俺は高い所に行きたいんだ。
「もう少しだ」
気づけば上に続いていた足場に終わりが見えた。その事実に歓喜して走る。
「着いた」
座って、歩いてきた景色を見た。
「やっぱ、あそこだけ不自然に開けてんだよな。不思議だな〜。」
一通り満足して振り返るそして視線が止まった。街だ。ちっぽけな街が見えたのだ。それを少しの間見続けた。一瞬、意識がとんだような気がして、体がグラついた。息が荒れる。そして気づいたら下山していた。
「ハッハッハッハッハッ、ハァーハァー」
勢いよく振る腕には沢山の虫が付着している。きっと身体中にいるんだろう。でも気に留めない。少し歩いてまた走る。
「ハッハッハッハッ、ハァーハァー」
すぐに走れなくなってしまう。
「あ」
ドサッ。立ち上がれない。それでも進み続けていると声が聞こえてきた。
「久しぶりに来ましたね」
「そうじゃねぇ、今日は付き合ってくれてありがとうのう」
「いえいえ、この年でも一緒にいたいんですよ」
老夫婦だろうか。助かった。早く知らせないと。幸い近い。声をかければすぐに助けてくれるだろう。
「ところで今日は何をするんですか?」
助けて
「あぁ、今日は山頂にでも行って景色を眺めようと思ってるんじゃ」
「あはは、大変ですね〜」
助けて
「頑張った先に美しい景色が待っているもんじゃよ」
助けて
「そうですね、こりゃ頑張らないと〜」
「でも頑張りすぎるんじゃないぞ」
「はーい」
助けてよ。手を伸ばした。虫が手を這う
「あぁ、」
なんで、なんで声が出ないんだ。なんで出さないんだ。
「そうだ、虫。虫を食べよう」
ヘルメットを脱ごうとした。でもそんな力は残っていなかった。
「嫌だ、行かないでくれ、助けてくれ、お願いだから」
「美しかったですね〜」
「そうじゃろ?頑張った甲斐があったというもんじゃろ?」
「えぇ、また来てみたいと思うほどに」
「そう思ってくれて嬉しいよばあさん」
「いえいえ、あれ、あれはなんでしょう」
「え、どれじゃ?」
「あれですよ、あれ。ちょっと見てきます」
「ちょ、ばあさん!?」
「きゃあぁぁぁぁ!?」
「ばぁさん!?なにが!?う、これは、と、とにかく警察じゃ!」
「は、はい!」




