知らない番号から
短編です
プルルルル・・・プルルルル・・・。
「はい、もしもし」
「あ、婆ちゃん?オレオレ」
「あら、ユキオ、久しぶりじゃない」
「久しぶり~、元気だった?」
「元気よぉ、アンタはちょっと声変わったんじゃない?風邪?」
「あー、そうなんだよ~。風邪ひいて喉痛くてさぁ」
「風邪の時はすぐ葛湯飲んで、あったかくして寝るんだよ。ショウガ入れるのも忘れるんじゃないよ!」
「あーはは、ありがとう。んでさ、ちょっと相談なんだけど」
「なんだい?こないだ小遣いはやっただろ?お年玉だって」
「いや、今回はそう言うんじゃなくてさ、俺いま、車で出かけてたんだけど、事故っちゃってさぁ」
「事故!?怪我は?」
「俺は大したことないんだけど、相手が結構な重傷で、意識不明の重体で即入院でさ」
「そんな大層な事故なら婆ちゃんに電話する前に警察と救急に電話したほうが良いだろう」
「いや、その・・・警察には、もう連絡して、えっと・・・・相手の入院費用と車の修理代を請求されてるんだよ・・・」
「意識不明なのに?」
「あぁ・・・えっと・・・警察から、そう警察から、こういう場合は、俺が入院費と修理代を払うものだって言われてさ~」
「警察がそんなこと言うかねぇ?」
「俺もびっくりだよ。事故なんて初めてでさぁ」
「あんたこないだも電柱に引っ掛けて警察呼んでただろう?」
「えぁっ、う・・・・その、他人を巻き込むやつは初めてじゃん!?」
「・・・まぁそうだねぇ」
「だろ!?んでさ、婆ちゃん、今すぐ500万円振り込まないといけないんだよ」
「そうかい」
「でも俺さ、そんな金持ってないよ!」
「あんた、去年年末宝くじが当たったって、大喜びで教えてくれたじゃないか」
「年末宝くじ・・・はさ~・・・もう使っちゃったよぉ!」
「前後賞含め5億円を!?」
「・・・・いや・・・それは・・・その・・・・」
「あんたいったい何買ったんだい!?家か!?車か!?それでも5億円なんてそう簡単に使いきれるようなもんじゃないだろうに・・・あんたほんとにユキオかい?」
「ゆ、ユキオだよ・・・えっと、とにかく、金を振り込んで欲しいんだ!今から口座番号言うからさ、ATMに行ってくれない?できれば人のいない、ATMだけのところが良いんだけど・・・」
「はぁ、アンタねぇ・・・仕方ないねぇ、口座番号メモするから」
「ありがとう!えっとね、○○銀行、○○支店だから!」
「はいはい、じゃぁ今から振り込むからね」
「うん、サンキュー!!」
プチ・・・ツーッ、ツーッ、ツーッ・・・。
「失格。」
「すいやせん!」
「電話切らしてどうすんの!あんな阿保みたいな設定で誤魔化してうまくいくと思ってんの!?老人を舐めんじゃないよ!あんなわかりやすい詐欺に引っかかるわけがないだろう!?」
「はいっ」
「ったく、最近の若いのは。まず、誤魔化すのはいいけど、誤魔化せないところの線引きは理解しておきな!うまくいかないと思ったらすぐに電話を切って、番号にチェックを付ける。いいかい!?そうやって使える電話番号とそうじゃないのをちゃんと確認してからやるんだよ!」
「はい、ガキどもはちゃんと指導しておきます」
「まったく最近の詐欺はなってないねぇ!これだからあたしがまだ隠居できないんじゃないか!・・・はい、次の奴!」
——オレオレ詐欺最終試験——
育ててるのか、阻んでいるのか・・・。




