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8 計算ずく(けいさんずく)
取材旅行から帰ってきた蓮水は考えていた。旅行は楽しかった。また、それを通じて有情たちのファミリーは自分が想像していたものよりもずっと組織的で大きなものであることも知った。
それは即ち国内で普通に行われている移植チームと何ら違いはなく、活動拠点が異なるだけであった。
これについては国内の移植医療が本格化して以来、テレビや雑誌で何度となく「移植医療最前線」などといって特集が組まれ、特に目新しいものではなくなっていた。
三木が語った金を持ち逃げした医師の話も、おそらく嘘ではないのだろうが、全く裏付けがなく、その部分だけが突飛な内容になるだけに却って記事の信憑性を崩しかねないのではないかと思われた。
また、往路の機内で聞かされた主税と諏訪の話から、ドナーは海外で募り、レシピエントはある程度以上の富裕層であることは類推されたが、移植臓器の入所経路やレシピエントの選択方法も謎であった。
それを知るためには一回は実際に移植が行われる、その国まで同行し、ドナーやレシピエントからも話を聞かなければならなくもあった。
何よりも蓮水は記事の完成に向けて尽力するより、むしろ利太との逢瀬を楽しむことに傾倒していた。




