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5 タトゥー

 「綺麗なところですね、ここも先生の別荘ですか?」


蓮水が有情に尋ねた。


「まさか、ここは観光客の泊まるコテージ。一組しか泊まれんからハネムーン客に人気なんや」


六人は荷解きをし、水着に着替えて一旦リビングに集まり、ビールやソフトドリンク、植物などをクーラーボックスや袋に入れ、パラソルの用意されたコテージの前のビーチに降りていった。三木以外はパラソルの下に陣取りビールを飲んだり、大麻を燻らせたりしていた。三木はビーチに着くとすぐにTシャツを脱ぎ、海の方に歩いていった。三木の左の腰にはアエスキュラピウスの杖の上にNの文字が描かれたタトゥーがあったが、それを見つけた蓮水が利太に尋ねた。


「奈央ちゃん、タトゥーがあるね」


「えっ、全員あるで」


有情にタトゥーがあるのは半袖を着た時にすぐわかったが、まさか全員にタトゥーがあるというのは驚きだった。


「なんで?」


「絵柄が違うから大した意味はないと思うけど、全員ある」


 利太はそう言って左腕をまくり大きな鎌の代わりに狙撃銃を持った死に神のタトゥーを見せた。


「あの二人も?」


 そう言って主税と諏訪の方を指した。


「あの二人のが、一番すごい。そのうち暑なって海に入る思うから、そん時見てみ」


 程なくして主税と諏訪が海に向かって歩いていった。主税にはヒンドゥー教のカーリーが、諏訪には女神テミスが背中いっぱいに描かれていた。


 日も高くなり一同はコテージに戻ってきた。三木が蓮水を呼んで言った。


「莉子ちゃん、プールで塩流してきて?」


「なんで?さっき軽くシャワーしたよ」


「いいから入ってきて」


「いいけど」


 そう言われ蓮水は素直にプールに入り体と髪についた塩を洗い流した。


「ちょっとこそばいけど、我慢してね。別に害になることはしないから」


そう言って蓮水の脇腹をアルコール綿で拭いた。


「ちょっと奈央ちゃん、こそばいんだけど」


「もうすぐだからちょっとだけ我慢して。左の肘を軽く上に上げて」


そう言って持っていた紙切れを蓮水の脇腹に押し当てて、上から何度か擦った。

「うん、これでOK」


そう言ってゆっくりと台紙を剥がすと万年筆を弄ぶ黒猫のインスタント・タトゥーが綺麗に転写された。


「莉子ちゃん、色が白いからよく似合うよ。鏡で見てきて」


 そう言われ蓮水はシャワールームに行き鏡を見た。確かに三木が自分で描いたというタトゥーはデザインも秀逸でよく似合っており、白い肌によく映えた。


 六人はコテージのスタッフが用意したカレーをビールと共に食べた。


 食事が終わると三木が言った


「みんなに見せてあげて。タトゥーが消えるまで莉子ちゃんは仲間やで。私らは莉子ちゃんが何を聞いてきても嘘はつかへん。せやから莉子ちゃんも嘘ついたらあかんよ」


そして蓮水のタトゥーに軽くキスをした。有情も蓮水に微笑みかけて指で触れた。


主税も何も言わずに軽く触れ、諏訪は


「莉子ちゃん、綺麗ね、羨ましいわ」


と言って、それを指でなぞった。利太は手のひらでそれを覆うようにして、そのまま腰に腕を回した。


 一同は一旦それぞれの部屋に行き軽く昼寝をして、昼下がりにもう一度ビーチに行った。蓮水は利太をコテージ裏のビーチに誘った。そして聞いてみた。


「利太さん、ここにいる人ら、皆、臓器移植に関わってるん?」


「うん、多分。加奈子ちゃんはほとんど関係してないと思うけど。加奈子ちゃんはお母さんが腎移植を受けたんが縁で主税と付き合ってる。主税が法科大学院の費用を出したはず。俺は警備担当やから医学的なことはほとんどわからへん」


「誰がリーダーなん?」


「強いて言えば主税やろうけど、犯罪組織やないし、そんなんはおらんよ」


「グループの人はここにきてる人だけ?」


「それはない。あんまり面識はないけど、少なくとも倍はおる。主税はすごい慎重やから知らん人任せにするんを嫌う」


「警備って何するん?」


「行く国がたいてい治安が悪いからボディガードと交渉ごとがある時には遠くから周囲を警戒してる」


「治安が悪いってどこの国に行くの?フィリピンとか?」


「いや、フィリピンには行ったことない。日本人が多い地域には行けへん。I国、P国、B国、たまにN国。全部南アジア」


「なんでなん?」


「日本人を含めて外国人の多い地域は発展途上国やいうてもそれなりに都市化してるんとコネの関係やと思うで」


「ところでさぁ、なんで今回、こんな形で取材に応じてくれたん?」


「そら、莉子ちゃんがおとんだけ狙て取材かけたからやがな」


「ええぇ、なんでそんなんわかるん?」


「莉子ちゃんは昼間におとん取材したやろ?ほんで、おとんに振られた奈央ちゃんらに、一応、話しかけた。昼間はそれだけや。夕方の就業時間にはもうおらんかったらしいがな。そんな怪しい取材したらバレバレや」


「ええぇ、ええぇ!私らのことどっかで見てたん?」


「具体的には知らんけど、せや思うで。それで取材対象がおとんだけやったてわかる。そしたら、すぐに主税に照会依頼がいく。主税は簡単に調べて、疑義があったらちゃんとした調査する。二、三日で、遅くとも五日以内に主税がおとんに報告書が届く。莉子ちゃんの報告書は見てへんけど、別の人のは見たことあるで。微に入り細に入り書いたあった」


「微に入り細に入りって?」


「いつどこで何人兄弟の何番目の子供として生まれたとか、どんな幼少時代を過ごしたとか、小学校から大学までの成績、性格、交友関係とか、そら、漏れはあるやろけど詳細に書かれとった」


「なんか怖いな」


「大丈夫や。莉子ちゃんがなんらかの形で気に入られてなかったら照会依頼なんかせぇへん。対処しといていうだけや」


「何が気に入られたんやろか?」


「そこまではわからんわ。短時間の接触しかしてへんから、見た目とか、匂いとかやないかな」


「見た目はともかく、匂いて変態ぽいな」


「おん、あの二人は変態やで」


利太はさらりと言った。



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