3 ビジネスジェット
ビジネスジェットの内装は、当然といえば当然だが、先ほど乗ってきた輸送機とは全く異質な空間だった。テーブル席が二つあり、ソファ席が一つある。さらに後方には、離着陸時や休憩時に使用する横二列の座席が八人分並んでいた。
離陸後、有情と奈央はソファに座り、主税と諏訪は前方のテーブル席についた。利太と蓮水は後方のテーブル席に座った。この時点ではキャビンアテンダントは乗っておらず、奈央が蓮水のところへ来て自己紹介をし、飲み物やスナックが必要かを尋ねた。
「蓮水さん、先日はどうも。看護師の三木奈央です。飲み物とスナックがありますが、何か要りますか?それと、向こうではデング熱など日本にない感染症もありますので、採血をさせてもらえませんか?」
「三木さんとおっしゃるのですね。改めまして、蓮水莉子と申します。今回はお誘いいただきありがとうございます。採血は今しますか?」
「そうですね。お酒が入る前の方がいいかな。私が誘ったわけではないので、それはあちらの主税さんに伝えてください。それと私には気を使わなくていいから」
蓮水は素直に採血に応じた。三木は大事そうに血液検体を前方の小さなコンテナにしまい、すぐに戻ってきた。
「スナックと飲み物は何があるの?」
「うーん、莉子さんこっち来て」
三木は説明するより早いと思ったのか、蓮水を冷蔵庫のところへ連れていった。
「私は白ワインとこのMのお皿をもらおうかな」
「いいよ。ワインとその上のグラスだけ持っていって。あ、それとこれも」
そう言ってハイネケンのボトルを渡した。
「これ、利太さんのね。お皿は持っていくから」
「いつも奈央さんが用意してるの?」
「普段はアテンダントがいるよ。今日は基地からだったから乗れなかったんよ。給油地で乗ってくる。それと夕食も積むから、あんまりたくさん飲んだり食べたりせんといてね」
三木はMとTのポストイットが貼られた皿を蓮水と利太のテーブルに置いた。
「奈央ちゃん、ありがとう」
利太は三木に微笑みかけた。三木はウインクで返した。
怪訝に思った蓮水は利太に尋ねた。
「どしたん?ウインクしてたけど」
「ああ、それおとんのプレート」
「えっ、いいの?」
「大丈夫。何も言わんよ。食うて、食うて」
皿にはスモークサーモンとキャビアとクラッカーが乗っていた。




