大好きなあなたと、これからもずっと一緒に
その翌日。私と陸は、また白い光に包まれ、気が付いたら家の近所の公園にいた。
驚いてキョロキョロと周りを見渡してしまう。
公園のブランコ、花壇に咲くヒマワリ、少し先に見える私と陸の家の屋根。
全てがあの世界に行く前の記憶の中と同じ。
久しぶりに帰ってきた地元に、目の前が滲む。
「陸!帰ってきた!帰ってきたね!」
「ああ、帰ってきたな!」
陸と抱き合って喜びを分かち合う。
あの世界に連れていかれてから、何度も帰りたいと思っていた。
悲しい思いも、怖い思いも沢山した。
けれど、決して辛い思い出ばかりではなくて。
海に入って遊んだり、日本では見ないような屋台でご飯を食べたり、ジュリとお泊りしたり、みんなで海で星空を見たりしたことは、優しくて暖かくて大切な思い出だ。
これから先、忘れることはないだろう。
トウヤさんはああ言っていたけれど、また会うことはきっと難しいだろう。
もう会えない人たちに思いを馳せると胸が軋む。けれど、陸と一緒に、この世界に戻ってこれて本当によかった。
「久しぶりに和食食べたいな!お米食べたい!ずっとパンばっかで発狂するかと思ったよ~」
ルンルンで家への道を歩こうとする私の手を、陸が引っ張った。
そう言えば、儀式の最中から手を繋いだままだった。
あの世界に行ってからすっかり手を繋ぐのが当たり前になってしまったな、なんて考える。
「陸?」
手を引っ張っておきながらも、俯いたまま何も言わない陸の名を呼ぶ。
陸は小さく深呼吸した後、真っすぐ私を見た。
その真剣な黒い瞳に、目が離せなくなる。
陸の頬が赤いのは、きっと夕焼けのせいなんかではないだろう。
「俺、咲季のことが好きだ」
心臓が、大きく跳ねた。
心拍数が一気に上昇し、顔に熱が集まる。
「……本当は、まだ言うつもりはなかった。でも、あの世界に行って……、咲季が隣にいてくれることが当たり前じゃないって気付いた。気持ちを言う前に、咲季が他の誰かに取られたり、……いなくなってしまうなんて嫌だって思った。俺、咲季が好きなんだ。友達としてとか、幼馴染としてじゃなくて、付き合いたいって、意味で」
握った掌が、どちらからともなく汗ばむ。
他の人なら不快に思う汗も、陸のなら嫌じゃない。
今まで、陸のことは大切な幼馴染、それだけだと思っていた。
でも、あの世界に行って、陸がいなくなるなんて嫌だと思った。ずっとずっと、一緒にいたいと思った。
……そっか。陸を思うと胸が暖かくなるこの気持ちは、きっと、恋なんだ。
ようやく気付けた感情に、胸が苦しいような、泣きたいような、上手く言い表せない気持ちになる。
私はそっと、繋いでいた手にもう片方の手を添えた。
「私も、陸のことが好き」
言葉にすると、何だか恥ずかしくて、陸を愛おしく思う気持ちでいっぱいになる。
私の言葉に陸は目を丸くした。
「え……ちゃんと、伝わってる?俺は幼馴染じゃなくて……」
「ふふ、ちゃんと聞いてたよ。私も、同じ気持ちだから。私を陸の彼女にしてください」
そう言うと、陸は数秒固まった後、ぽろりと涙を流した。
ぎゅっと陸の体を抱きしめると、あの時のように優しく優しく抱きしめ返してくれた。
もう、絶対に離さない。
大好きな陸の香りに包まれながら、私たちはお互いを確かめ合うように抱きしめ合った。
これにて本編完結です。
お読み頂きありがとうございました!
この後、数話ケイ視点の話、IFエンド(ケイ、トウヤエンド)と、本編終了後陸と咲季の後日談を掲載します。




