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幼馴染と殺人鬼のいる異世界へ転移してしまいました ~能力は予知夢×ループ~  作者: かん


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また会えますように

次の日の夕方。騎士団の制服を着たトウヤさんが私たちの前に現れた。

昨日煤だらけで火の中から脱出してきた人にしてはピンピンしすぎていて、陸と二人で目を丸くする。


「トウヤさん、もう大丈夫なんですか?」


もっと休んでいたほうがいいんじゃないか、と心配する私たちにトウヤさんは苦笑いをする。


「あはは、優しいね君たちは。心配してくれてありがとう。でも休んでられなくて。……ケイのこと、話に来たんだ」

「……!」


その言葉に、背筋を伸ばす。

ずっと気になっていたケイの行方。

何回もループしてきたから、「今日」を陸と過ごせることがものすごく嬉しかった。

けれど、火の中に消えていったケイのことがずっと気になっていた。


固唾を飲んで続きを待つ私たちに、トウヤさんは辛そうに顔を歪めた。


「昨日、俺は火の中でケイを捕まえることができなかった。一緒に出てきたかったけれど、これ以上火の中にいるのは危険だと思って俺だけ外に出た。そして今日、ケイは死亡した、ということになった」

「そんな……」


呼吸が止まりそうになる。

散々苦しめられてきたけれど、死んで欲しかったわけではない。

怖くて憎かったけれど、いざいなくなったと知ったら胸が苦しくなった。


「……待ってください、死亡したことになった、って本当はそうではないんですか?」


陸の言葉に、目を剝く。

確かにトウヤさんは『死亡したことになった』と言った。

言い方が、変だ。


トウヤさんはこくりと頷いた。


「……教会は全焼してしまったんだけど、その中からケイの遺体が見つからなかったんだ。でも、おかしいんだよ。ケイが向かった先には出入口どころか人が通れそうな窓すらなかった。それに、教会の周りは騎士が囲んでいたけどケイが出てきたという報告もない。なのに、ケイの遺体どころか防火加工のしてある騎士団の制服の切れ端すらなかったんだ。おかしい、よな……?結果としてケイは死亡、連続殺人事件も終息、という扱いになったんだけどなんか納得できなくて……」


「…………」


私たちは何も言葉を発することができなかった。

事件は無事解決したはずなのに、言いようのない気味悪さが肌を粟立たせた。




元の世界に戻る前日の夜、私たちはかつて来た海にいた。

夜に外に出ることを陸は渋っていたけれど、長年この世界を苦しめてきた事件は終結、更に明日には日本に帰るのだからと陸を説得した。

不安の残る結果になってしまい、私自身夜に出歩くことは少し怖かったけれど、トウヤさんとした約束を果たしたかった。

前回の思い出だから、トウヤさんは私とした約束なんて覚えていないだろうけれど。


『みんなで星を見に海に行こう』

ここにいるのは、私と陸、トウヤさん、ジュリ、ハイトさん。

一人足りないけれど、約束を果たせたことが嬉しい。



「咲季、ほんとうに帰っちゃうの……?」

「うん……寂しいよーーーっ」


ぐすぐすと鼻を鳴らすジュリに泣きながら抱きあう。

一緒に過ごした時間は長くはなかったけれど、私にとってジュリは、大切な大切な親友だ。

日本に帰ってしまえば、ジュリとは会えなくなるどころか連絡すら取れなくなってしまう。

二人でわんわんと泣いていると、陸とハイトさんと話していたトウヤさんがこちらに来た。


「……ジュリ、ハイトが呼んでるけど」

「行きません。咲季とずっと一緒にいます」

「気持ちは分かるけど……」


トウヤさんは困ったように眉を下げる。


「また、会えるかもしれないだろ」

「……どういうことですか?」

「咲季ちゃん達を違う世界に送れるのなら、俺たちだって理論上はその世界に行けるはずだ。俺たちは救世主から恩恵だけもらって何も返していない。恩返しに……とか言えば、いつかそちらへ行けるんじゃないかと思っている」

「……」

「だからほら、きっと永遠の別れではないはず!」

「……分かりました」


ジュリはトウヤさんにじっとりとした視線を投げると、名残惜しそうにしながらもハイトさんの元へ向かった。

トウヤさんと二人になると、彼は青いハンカチを差し出してくれた。

有難く受け取って、目尻に浮かぶ涙を拭う。


「私たちのところに来てくれるって、本当ですか?」

「うーん、しばらくは難しいかもしれない。救世主を呼ぶための神聖な儀式だから。でも、さっきも言ったように恩返しをしに、とかでそちらへ行けないか動いてみるつもりだよ。実現できるかは分からないけどね。それに」


トウヤさんは言葉を切ると、真っすぐに私を見た。

春の日差しのような暖かいオレンジの瞳が、優しく細められた。



「俺も、咲季ちゃんとはまた会いたいからさ」



トウヤさんが、太陽みたいに笑う。

その笑顔に、何度救われたか。


「はい、ずっと、待っています」


夏の終わりの生ぬるい潮風と、波の音。

夜空に浮かぶ、丸い月。水面は星を反射してキラキラと輝いている。

この瞬間が宝物に思えて、私はまたハンカチを濡らしてしまった。

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