たからもの
あれは、小学校中学年の頃だったと思う。
私と陸は、お互いの誕生日が近いこともあって、家族ぐるみで合同誕生日パーティーを毎年開いていた。
ある年、その合同パーティーで、お互いお守りを手作りして交換しあった。
お守りといっても、上手とは言い難い裁縫で作った入れ物に、中に厚紙を入れたものだったけど。
私はその厚紙に、陸と撮ったプリクラを貼って余ったスペースにキラキラのシールを貼ったのだ。
今の陸は頼んでもプリクラなんて撮ってくれないだろうけど、小学生の時の陸はまだ可愛げがあったので恥ずかしそうにしながらも一緒に撮ってくれたのだ。
陸からもらったお守りの中は、ぷっくりとしたカエルのシールが貼ってあった。彼のお姉さんからもらったのだろうか?なんだかそれが可愛くて、私は度々お守りの中を覗いた。
とある放課後、いつも通り陸と帰ろうと彼の教室に行くと、彼は机の上にランドセルの中身をひっくり返していた。
もう下校だというのに、ランドセルの中身は空っぽだ。
「陸?どうしたの?」
声をかけると、陸はびくりと体を震わせた。
「う、ううん、何でもない。帰ろう」
絶対何でもなくないだろうな。
そう思いながらも、陸が何かを隠そうとしているのが分かったから特に何も言わず肩を並べて歩く。
帰り道、陸はずっときょろきょろと下を見ていた。
家の近くの公園に差し掛かった時、
「あのさ……咲季」
震える声で、陸が俯いたまま言った。
「ごめん……お守り、なくしちゃった」
陸の黒い瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちた。
それを拭おうともせず、陸はきゅっと唇を噛んで泣き声を殺す。
お守り。それが指すのは、私がランドセルにつけているのとお守りと対のものだろう。
そっか、だから必死で探してたんだ。
陸の涙が落ちて濡れてしまった手をぎゅっと握った。
「……咲季?」
「探しに行こう!二人で探したらきっと見つかるよ!」
陸をぐいぐいと引っ張って元来た道を戻る。
絶対に見つけたいと思った。
だって、私もこのお守りをなくしたら、嫌だから。
二人で手をつないで、学校までの道のりを戻る。
草むらの中や自販機の下、道行く人にも聞いたりしたけど見つからない。
だんだんと日が落ちて、私のおなかがぐう、と情けなく鳴った。
それを聞いて陸はしょんぼりと眉毛を下げた。
「咲季は家に帰って。俺、一人で探すから」
「何言ってるの、私も探すよ!そうだ、交番に行ってみない?もしかしたら届いてるかも」
この辺で交番があるのは、家の近くの公園のそば。
再び公園に戻ってくると、ベンチの上に青い何かが置いてあることに気付く。
「ねえ……陸、あれって」
「……あ!」
私が指差すと、陸は私の手を繋いだままベンチに向かって走り出した。
探し物を始めた時とは逆で、今度は私が陸に引っ張られる。
そこにあったのは、予想通り私が陸にあげたお守りだった。
陸は嬉しそうにお守りをぎゅっと抱きしめた。
「よかったね、陸」
そう言うと、陸は満面の笑みで頷いた。
「うん!俺の宝物だから。咲季、ありがとう!」
陸から貰ったお守りは、高校生になった今でも大切に鞄の中に入れて持ち歩いている。
私にとって陸は、誰にも代えがたい大事な大事な幼馴染で。
それはずっとずっと変わらない。




