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幼馴染と殺人鬼のいる異世界へ転移してしまいました ~能力は予知夢×ループ~  作者: かん


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あなたがいなければ

翌朝。

朝食の席で、トウヤさんが昨夜の報告をしてくれた。


「昨夜、事件は起こらなかった。けど、陸くんの夢では日にちまでは分からないだろう?引き続き重点的に対象地区の警備を強化する」


事件が起こらなかった。その言葉にほっと息をつく。

それはすなわち、まだ犯人が捕まっていないということだけど、被害者が出なかったことが今は嬉しかった。


次の日も、その次の日も事件は起こらなかった。

私たちは相変わらず、ボードゲームをしたり、たまに出かけたりする日々を過ごしていた。

このまま、帰る日まで何も起こらなければいいのに、と思ってしまう。

そしたら私たちがここに来た意味はないけれど。

いや、陸が予知夢を見たおかげで、海沿いで起こるはずだった事件が予防できたかもしれない。警備はあれからずっと強化されているから。

でも、私がここに来た意味は?

陸は予知夢を見た。私は何も成しえていない。

なにか役に立ちたい、とは思う。だけど何をしたらいいのか分からない。

漠然とした不安を感じながらも平和な日々を過ごしていた、元に戻る日まで一週間ほどとなったある朝のこと。



「予知夢を見ました」


陸の言葉に、口に運ぼうとしていたフレンチトーストを落としそうになった。

ここずっと事件の手がかりが掴めていなかったのだろう、トウヤさんとケイが陸の言葉に勢いよく食いつく。


「「どんな?」」


さすがは幼馴染、息ぴったり。なんて考えている私もまた、不安と期待で身を乗り出した。


「場所は、たぶん教会。男性が倒れていました。…といっても、倒れてる姿しか見えなかったからそれが事件なのか病気とかでなのかは分かりませんが…」

「いや、十分だよ。ありがとう。海沿いの警護はそのまま、国の三つの教会の警護を強化する」


トウヤさんの言葉に、陸はほっと息をついた。

陸の最初の夢が現実になって以降、事件は起こっていない。

犯人は狙った場所の警備が強くなったことを警戒しているのだろうか。

とにかく、夢の内容に気を付ければいい。そう、思っていた。

その日もいつもと同じように適当にボードゲームをして、夕食を食べてお風呂に入ってベッドに潜り込む。

どうか、今晩も平和に夜が終わりますに。そう思いながら眠りについた。



翌朝、身支度を整えて護衛の二人が訪ねてくるのを待っていると、扉の前が何やら騒がしいことに気が付いた。

王城の部屋は防音に優れていて、外の音は普段めったに聞こえてこない。

それなのに、今は部屋の中にまで怒号のようなものが聞こえてくる。

恐る恐る扉に耳を近づけると、それはトウヤさんの声だと分かる。

なにか、あったのだろうか。

ただごとではない状況に不安を覚えながらも、私は恐る恐るドアノブを回した。


「……!咲季ちゃん……」


まず目に入ってきたのは、私に背を向けてしゃがんでいるトウヤさんだった。彼は扉が開いた音に驚き、私の姿を確認すると安堵したような気まずそうな顔をした。

しゃがみこんだトウヤさんの前には、ケイがいた。ケイはぐったりと壁に背中を預けていた。

体調不良なのかと一瞬思ったが、彼の頭の位置の白い壁に散らばる赤を見た瞬間、思考が真っ白になった。

血だ。ケイが、頭から血を出して倒れていた。


「ケイ……?」


一歩も足が動かなかった。声も震えてしまい今すぐにでも体の力が抜けて座り込んでしまいそうになる。

そんな私に、トウヤさんが立ち上がりそばに来てくれた。優しく背中を撫でてくれる。


「大丈夫。ケイは無事だ。生きてる。今医師が来る」

「……!よ、かった……」

「……だからごめん、落ち着くまでは部屋にいてくれないか?ちゃんと後から説明するから」


私を落ち着けるために撫でてくれている手が、少し震えている。

それに、トウヤさんは先ほどから泣き出しそうな顔をしていた。

ケイが無事だと聞いて一度は安堵したものの、トウヤさんの様子に言いようのない不安を覚える。


「……あの、一人じゃ不安なので陸の部屋に居てもいいですか?」

「……っ」


私の言葉に、トウヤさんの体が強張る。

そんなに変なことを言っただろうか。

ちらりと陸の部屋を見ると、扉がほんの少し開いていることに気付く。

それなのに、全然陸が出てくる気配がない。

こんなに騒がしくしているのに、静かなままの陸の部屋に、不安がどんどん大きくなっていく。


「陸……?」

「ま、待つんだ咲季ちゃん!」


トウヤさんの制止を無視して陸の部屋の扉を開ける。

その瞬間、初めて嗅ぐ匂いがした。

いつもの、陸の安心する香りではない。


陸の姿を見つけた瞬間、視界がモノクロになった。

呼吸がうまくできなくて。

遠くからトウヤさんの声が聞こえる気がする。

それに反応出来るはずもなく、私の世界は暗転した。

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