地獄に神
赤黒い血のような液体が煮えたぎる川、死人の顔が積み重なってできたような岩石、そして大量の生物の骨が砂になって出来たような白い砂漠。
何時間かはわからない。けれど、どれだけ歩こうがこの景色は変わりそうもなかった。
「一体全体どういうことなんだぜ?ぜ?」
俺は正直意味がわからなかった。いいか、今俺に起こったことをありのままに話すぜってポルナレフとかそんなんどうでもいいくらい困ってもいたんだな。
よし、ちょっと整理してみよう。俺はミヤビとご飯を食べに行った。で、ナカセンドーのあそこの交差点近くの横断歩道を2人で渡っていた。手は繋がない。俺、そういうのは苦手だから。いや、ミヤビがそれで悲しんでるってのは知ってる。女友達に相談してるのも実は知ってる。それ以外にもっと深刻な相談してるのも悲しいけど知ってる。でもさぁ、いや整理を続けよう。並んで歩いてた俺たちに信号無視の白いワゴンみたいな車が猛スピードで……。突っ込んだよ~な??
あれ、ということは俺、もしかして死んでる!?いやいや、それよりミヤビはどうなったんだ?誰かおひえてーー!!ミヤビィィィーーー!!!
俺はこの暑苦しい場所、そう地獄で叫び続けた。人生で初めて俺を受け入れてくれた他人であり異性である人の名を。俺みたいな変わり者で素直じゃなくてプレゼントもしないし手も恥ずかしくて繋げないけど、それでもそんな俺を好きでいてくれた最愛の女性ミヤビの名を精一杯叫び続けた。
……気が付けば喉が潰れて声も出なくなっていたが、そんなのどうでもいい。生きてるんだろ、ミヤビ。早く顔を見せてくれ。あの変顔で俺を愉しませてくれよ、ミヤビ……。
大げさかもしれないが、もう生きてく意味がわからなくなりつつあった俺の前に突然、巨大な黒い何かが現れた。何かって?絶望した人間の前に唐突に現れておまけに救ってくれる存在なんて、大昔から相場は決まってるじゃないか。
そう、そこには神がいたんだ。